読切(脚本)
〇テラス席
木田望「・・・・・・」
ワタシ「あああぁぁ!! たった今!!神引きを果たしました!! 全ては貴方様のおかげ!! 神様仏様望様・・・!!」
木田望「いや、俺別に・・・何もしてませんけどね・・・?」
ワタシ「貴方が電車乗り過ごして20分遅刻するって言うから、私はその間にこのアクスタを買ったわけよ!!」
木田望「・・・・・・」
ワタシ「そしたらコレよ!!最推し大本命の尊君ゲット!!見てよコレ!!なんと舌ペロしてんだよ!?あの尊君が!!」
木田望「・・・とりあえず、その尊君の舌ペロはなんか腹立つわ。あざとさしかねーわ」
ワタシ「正解!!尊君はあざと可愛い!!その本質に早くも気付くとは望君さすが!!惚れちゃうっ」
木田望「えっ・・・」
木田望「へへっ」
ワタシ「空は快晴、奇跡の神引き、推しの舌ペロ・・・アクスタごしの太陽の眩しさ・・・我が人生に悔いなし!!」
木田望「・・・は?」
木田望「オレは?今、オレをノケモノにしたよな?」
ワタシ「してないよ?今のは推しに忠誠を誓うためのポエム的な奴だから、望君を登場させてないだけ」
木田望「登場させろ。尊君にもオレを認識させろ」
ワタシ「いやいや・・・2次元の大本命に3次元ぶつけるとか御法度だから」
木田望「ノット御法度。拙者が許可する」
ワタシ「もしも私の推しが私のこと好きだったらさ、その越えられない壁(現実)をわからせるのはあまりにも酷じゃない?」
木田望「・・・・・・」
木田望「意味わからん」
ワタシ「推しの世界線と彼氏との世界線は全くの別物であり、それらは未来永劫決して交わらない」
木田望「やだね」
ワタシ「・・・はい?」
木田望「オレはそろそろコイツと対峙したい。勝負させろ」
ワタシ「なぜ?」
木田望「はぁ・・・あのな・・・」
木田望「オレはな、モテてるんだよ」
ワタシ「はい?」
木田望「オレが「推し」の女子はそこそこいる。なのにお前はなんなんだよ。オレのこと一回も「推し」とか言わないし?」
ワタシ「いや、だって、推しは尊君だし」
木田望「じゃあオレは何?」
ワタシ「彼氏」
木田望「・・・推しとの越えられない壁を埋めるために、気やすめで作った彼氏とは言わないよな・・・?」
ワタシ「そんなわけ。気休めで私にこんなカッコいい彼氏が作れるわけないし」
木田望「・・・ッ・・・」
木田望「お、オレ、2次元じゃねんだわ・・・そんな安っぽいセリフで靡くほどチョロいキャラやってないんだわ・・・」
ワタシ「どうやったらこんなに素敵な人攻略できたのか未だに謎で。正直今も現実味なくて、毎日セーブしたい所存」
木田望「そうでしょうそうでしょう。オレってばお前にとってSSSレア中のレアの神引きオブ神引きでしょうそうでしょう!!」
ワタシ「はい!!爽やか、俺様、ツンデレ、ワンコ、いつもいつも様々な属性付与を自発的に取り入れていただけて感謝御礼!!」
木田望「わけわからんがそういうことだ!!感謝し敬い忠誠を誓いたまえ!!」
ワタシ「ハイ!!」
木田望「・・・・・・ん?」
木田望「お前・・・今、そのアクスタ見ながらハイって言ったよな?」
ワタシ「・・・え?」
木田望「え?じゃねーわ。なんでこの流れで尊君に忠誠を誓おうとする?おかしいだろ。え?エ!?」
ワタシ「目の前に・・・舌ペロがあったから・・・強すぎてつい・・・」
木田望「おい、冷静になってみろ。リアルでむやみに舌ペロやってる男いたら引くだろ?」
ワタシ「うん、ちょっと怖いね。やっぱりそういう意味でも2次元は強い」
木田望「そうじゃない!!強くないわこんな舌ペロ!!オレの舌ペロのほうが強いわ!!めちゃくちゃレアだぞオレの舌ペロ!?」
ワタシ「確かに!!やって!!」
木田望「・・・・・・」
木田望「は・・・?」
ワタシ「見てみたい。3次元が2次元の壁をも越える、その歴史的瞬間を・・・!!」
木田望「・・・えー・・・オレ・・・イケる・・・?」
ワタシ「イケる!!」
木田望「やー・・・でもオレ、タダの成人男性よ?煌びやかなステージに立つわけでもない、昼下がりのカフェテラスに座る一般人よ?」
ワタシ「あの眩い太陽をご覧ください。ここは既に煌びやかなステージです」
木田望「・・・いや、公共の場で急に彼氏が舌ペロなんかさ、事故でしかないよな?それ、ほんとに尊み感じてくれるわけ・・・」
ワタシ「・・・どうしても照れるというのなら、このアクスタで我慢する!!」
木田望「ばーか!!やるわ!! 見ろ!!オレを見ろ!!ハイこっち!!」
ワタシ「ハイ!!」
木田望「・・・・・・・・・・・・」
木田望「・・・ペロ」
ワタシ「ぎゃああぁあぁぁあ!!!!激レア激マブ永久保存版〜〜!!!!!!」
木田望「・・・あ・・・成功したっぽい・・・」
ワタシ「閉じ込めたい閉じ込めたい!!アクリルの中にもう一体閉じ込めて神様!!!! いや今日ほんと神引き過ぎてしんど・・・」
木田望「それじゃオレの写真でアクスタ作れよな!! で、尊君の横に並べてくれ!!勝負はそれからだ!!」
ワタシ「ナイスアイディア!!」
木田望「・・・あ、そうだ」
木田望「・・・これ、やる。 今日通りかかった店で見つけたんだ。お前に似合うと思ってさ」
ワタシ「・・・へ?ありがとう・・・ これ・・・帽子?」
木田望「そ。お前のキラキラした眩しい笑顔を閉じ込められるし、絶対似合うだろうなって思ったら・・・つい、な?」
木田望「だから、今日はちょっと遅刻した・・・ごめんな」
ワタシ「・・・うっ・・・」
木田望「・・・ったく。何泣きそうになってんだか・・・」
ワタシ「怖い・・・リアルあざと彼氏・・・怖い・・・」
木田望「おい・・・なんで怖いんだよいー加減にしろ?」
ワタシ「だってちょっと、怖いよ、なんでそんな2次元越えてくるの?え、待って、ココは現実?怖・・・」
木田望「怖くないわ!!現実と向き合え!!オレを推しにしろ!!今すぐにオレを最推しにしろ!!!!」
すごいヒロインへのわかりみが深かったです。2次元と、決して交わらない3次元の境界線!しかしそれを物ともせず、2次元を超えてきた彼氏強すぎですね(脱帽)
彼氏がヒロインのこと大好きなのがとっても伝わってきました〜☺こんな彼氏いたら毎日キュン死しちゃいそう!
ですが、傍から見てる分にはほのぼのしちゃいました〜!素敵なカップルですね✨
二次元に負けないよう必死な望君はある意味可愛らしいですね。そして、押し活に一定の理解があるのも救いですね。理解がないと”浮気”として諍いが起こりそうですからw
今じゃ推し活なんて言葉もあるくらいですからね…笑
確かに現実とは違った楽しみや嬉しさがあるので、人それぞれでいい気はしますが!