雄馬町の怪

平家星

#30 エピローグ(脚本)

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〇黒
  退院したミチオがナオキとショウマと共にやって来たのは、チハルの家・・・。

〇一戸建て
金丸ミチオ「・・・チハルさん」
南雲チハル「ミチオ、退院おめでとう」
南雲チハル「・・・ほら、あがってあがって」

〇ファンシーな部屋
  部屋の隅に置かれたカゴに近づいていく。
金丸ミチオ「この中?」
南雲チハル「・・・うん」
「・・・・・・」
  ナオキとショウマが見つめる中、ミチオはカゴの中の毛布に手を伸ばした。
金丸ミチオ「くだん」
  毛布をめくると、中には真っ白なくだんが丸くなっていた。
  その姿は弱弱しく、震えている。
くだん「・・・よぉ、お前か、ミチオ。 相変わらず汚い顔だな・・・」
金丸ミチオ「・・・お前こそ、すっかり老け込んでるじゃんか」

〇ファンシーな部屋
  カゴの中で、くだんはミチオの持ってきた豆乳を飲んだ。
くだん「オイシイ・・・」
金丸ミチオ「・・・いつも通り、おかわりもあるぞ」
くだん「もう、いい・・・。腹いっぱいだ」
金丸ミチオ「えっ・・・」
くだん「・・・最後にはトウニュウが飲みたいと決めていたんだ・・・ありがとうよ」
金丸ミチオ「さ、最後って。 なに弱気なこと言ってんだよ」
くだん「・・・いいや。俺にはわかる。 予言はすべて言い終えた」
くだん「もう、その時は来た・・・」
金丸ミチオ「そ、そんな・・・」
南雲チハル「くだん・・・」
くだん「・・・お前らのその顔・・・ガキのくせに一丁前に神妙ぶりやがって・・・」
金丸ミチオ「・・・・・・」
  皆、沈黙してしまう。
浦上ナオキ「くっ、くだんさん、尊敬しています!」
浦上ナオキ「僕たちを助けてくれました。 最後までカッコよかった!」
くだん「・・・ちゃんと、わかってるじゃねえか」
三上ショウマ「化け物まみれの、とんだ冒険だったけど・・・お前と一緒にいられて楽しかった」
三上ショウマ「その、ありがとうな」
くだん「お前・・・お母ちゃんがいなくても、泣き言、言うんじゃないぞ」
三上ショウマ「なっ!?」
南雲チハル「くだん、私・・・あんたがいないと、寂しくて・・・ああ、ダメだわ、もう」
  こらえきれず涙がこぼれてしまうチハル。
くだん「フッ・・・チハル、お前はいい女だ」
南雲チハル「ホント!?」
くだん「立派な、肝っ玉母ちゃんになる・・・」
南雲チハル「何よそれ! でも、ありがと!」
南雲チハル「・・・ほらミチオ、何黙ってんの。 あんたも何か言いなさいよ!」
金丸ミチオ「えっ・・・ああ・・・」
金丸ミチオ「くだん、俺・・・俺は・・・」
くだん「・・・・・・」
  ミチオは思わず涙をこぼしてしまう。
金丸ミチオ「くだん、行かないで・・・!」
金丸ミチオ「お前ともっと一緒にいたい・・・お前が大好きなんだ!」
金丸ミチオ「また生まれてくるなら、絶対に俺のところに・・・」
くだん「・・・おいミチオ、耳貸せ」
金丸ミチオ「えっ?」
くだん「いいから」
  ミチオはくだんの口元に、耳を近づけた。
くだん「──────」
金丸ミチオ「お前、最後の予言は終えたんだろ?」
くだん「・・・フン」
  ミチオの言葉に、くだんは静かに微笑み返し、覚めない眠りについた。
金丸ミチオ「うっ・・・うっ・・・」

〇黒
  仲間たちはミチオに寄り添い、その肩を抱いた・・・。

〇教室
  そして数日後。
  ミチオは教師の言葉を聞き流しながら、窓の外を眺めた。
  みんな、日常に戻っていった

〇村の広場
  小さいおっさんと、杉沢村の村人たちは、その後協力して、村で暮らすことになったらしい

〇田舎道
  黒岩に捕らえられていた子供たちは、それぞれの家に帰った
  連続失踪の子供たちが戻ったことは、少しだけ話題になって、すぐに忘れられた

〇教室
  窓の外、雲一つない空を見上げる。
  『UFOを見た』という目撃談もあがったが、時代遅れの冗談として、とり合う者はいなかったようだ

〇田園風景
金丸ミチオ「当たり前に毎日が過ぎて・・・まるで、何もなったみたいだな」
北条カナ「ししょう~!」
北条カナ「一緒に帰ろ!」
金丸ミチオ「うん。ちょっとだけ、寄っていきたいところがあるんだ」
北条カナ「?」
金丸ミチオ「俺が、友達と初めて会ったところだよ」
北条カナ「お友達?」
金丸ミチオ「そう。くだん、って言うんだ」

〇洞窟の深部
  カナの手を引きながら、ミチオはライトをつけて防空壕の奥へと進んだ。
北条カナ「ここから、冒険が始まったんだね。すごい」
金丸ミチオ「そう、突然、アイツの声が聞こえた時は、ビビったなぁ・・・」
  防空壕の奥には大きな石がある。
金丸ミチオ「ほら、くだん。カナちゃんも一緒だぞ。 豆乳も持って来た」
北条カナ「くだんさん、お邪魔します」
  ミチオは豆乳を石の前に備えると、手を合わせた。

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