読切(脚本)
〇山中の川
今日は彼氏の家族と一緒にバーベキュー。
目が痛くなりそうなくらい晴れてて、最高の日和。
〇山中の川
アイ「カイ君、これどこに置くの?」
〇山中の川
ユウ「こっち」
〇山中の川
アイ「あ、ありがとう」
ユウ「兄さんもう飲んでるし」
アイ「最近ずっと仕事頑張ってたし、ご褒美だよ」
ユウ「アイさん、兄さんに甘すぎ」
アイ「そうかな?」
ユウ「いいなー」
この子は彼の弟のユウ君。
無邪気で可愛げのある子だ。
ユウ「兄さんと結婚とか考えてるの?」
アイ「私の弟になりたい?」
ユウ「俺の彼女になるのもアリ」
アイ「ナシ」
ちょっと変な子。
〇山中の川
アイ「カイ君、手伝って」
カイ「もちろん、お姫様」
アイ「火をつけたくて・・・」
カイ「任せて」
カイ君も面白い人。
私の大好きな人。
カイ君の母「アイちゃん、カイたちに任せて今日はゆっくりしてね」
カイ君の父「そうだ、久しぶりにうちに来てくれたんだ、もてなしさせてくれ」
アイ「お気遣いありがとうございます。 私もカイ君にはお世話になってるので、これくらいはさせてください」
彼のお父さんとお母さんも私に良くしてくれる。
私は彼の家族も大好きだ。
〇山中の川
ユウ「今日は飲まないの?」
アイ「うん、私が運転だから」
ユウ「俺も」
遠くで彼とお父さんがお酒を飲みながら楽しそうに会話をしている。
お母さんがグリルでお肉や野菜を焼いてくれて、
カイ君の母「アイちゃん、どんどん食べてね。 まだまだあるから」
アイ「ありがとうございます。 お母さんも食べてくださいね」
カイ「アイ~、食べてるか~??」
アイ「食べてるよ」
アイ「カイ君、もっと食べる? お母さんが焼いてくれたの」
カイ「食べる~」
お酒も入ってすっかり上機嫌な彼。
食べるのが好きな彼はあっという間にお皿に盛ったものをたいらげしてしまった。
アイ「よく噛んで食べてって言ってるでしょ」
カイ「ごめんなさ~い」
最近は彼のお腹の出っ張り具合が気になってきたところ。
ユウ「兄さん最近太ったよね」
カイ「そうか?」
ユウ「そうだよ。アイさん、兄さんのこと心配してたよ」
カイ「んー、でも一緒に食べるの好きだし、アイの作ってくれるご飯美味しいんだよな・・・」
ユウ「えー、俺も食べたいなー、アイさんのご飯」
アイ「機会があったらね」
カイ「ダメでーす。 アイのものは俺のものなんでーす」
彼が褒めてくれるなら・・・!でも太って欲しくない・・・。
それに比べてユウ君は細いなー。結構食べるのにスラッとしてて、でも筋肉はしっかり付いてるし・・・
ユウ「焦げる!」
アイ「あ、ごめん!」
ユウ「俺の服に何かついてた?」
アイ「ううん、なんでもない」
思わず見ちゃってた、危ない危ない。
一通りグリルの上を片付けてのんびりすることに。
ユウ「アイさん、ちょっといいかな」
アイ「ん?」
彼とお父さんがお酒を飲み干してしまったらしい。
お母さんも少し飲んでいたし、あと彼らが酔っ払って変な行動をとらないよう見張ってもらうため私たちが買い出しに行くことに。
〇林道
バーベキュー場から1番近いコンビニまで車で20分。
放置していた車内は暑かった。
〇コンビニの店内
アイ「暑いし、アイス買っていこっか」
ユウ「やった! 兄さんたちには内緒ね」
アイ「バレたとしてもお酒もこれだけあるし、大丈夫だよ」
〇コンビニ
内緒で食べたアイスは格別に美味しかった。
ユウ「戻りは俺が運転ね」
アイ「ありがとう」
〇霧の立ち込める森
アイ「道、間違えてない・・・?」
ユウ「間違えたかも」
アイ「え、カイ君に──」
ユウ「待って、わざとだから」
アイ「??」
ユウ「2人きりになりたくて」
アイ「ど、どういうこと・・・?」
ユウ「俺じゃ、ダメかな。 兄さんじゃなくてさ、俺がアイさんの隣じゃダメかな?」
アイ「えっと・・・戻ろうよ、ね?」
ユウ「答えてよ」
アイ「それは・・・」
ユウ「俺、アイさんを幸せに出来る自信あるし、兄さんよりもっと笑顔にさせてあげられるし、」
ユウ「俺を選んでよ」
アイ「・・・・・・」
「アイのスマホ ブーッブーーッ」
アイ「カイくんからだ・・・」
ユウ「・・・」
アイ「戻ろっか・・・」
ユウ「うん」
ユウ「俺、アイさんのこと好きだから。 付き合いたいって、思ってるから」
アイ「・・・・・・ありがとう」
ユウ「待ってるから」
〇山中の川
カイ「アイ、遅かったね、大丈夫だった?」
アイ「うん、大丈夫だよ」
カイ「ならよかった」
ユウ「アイさん」
アイ「どうしたの?」
ユウ「いつでもいいから」
アイ「あ、えっ、と」
カイ「ん?」
ユウ「なんでもないよ! ね?」
アイ「うん・・・!」
カイ「ふーん」
カイ「そうだ、アイ、またバーベキューしよ。今度は俺の友達と一緒に、みんなアイのこと気に入ってるからさ」
アイ「うん!楽しみ!」
楽しみ・・・
だと、思う・・・
彼氏の弟からの告白、、何とも言えず複雑な気になりますよね。そんなアイの心情がとてもリアルに描かれていて物語に引き込まれました。
うーん、すごく複雑…。
良いような悪いような…素直に喜べませんね。
でもこういった恋の方が逆に燃えたりするものでしょうか…?
複雑な関係ですよね、どう立ち振る舞っていいのかどうかわからなくなる、、、好意を持たれるのは嬉しい反面。会話のテンポがよくて楽しく最後まで読ませて頂きました。