読切(脚本)
〇小さい会議室
如月蒼「・・・ですからこう解くのが正解です」
如月蒼「今日はここまでです」
生徒1「如月先生さようなら」
如月蒼「はい さようなら」
立花凛(りん)「先生 さようなら」
如月蒼「・・さようなら」
如月蒼「・・・」
羽鳥蓮「よう蒼」
如月蒼「蓮 あなたの教室も終わりましたか」
羽鳥蓮「ああ それより見てたぞ お前もうちょっと女の子に優しくしないとだめだよ」
如月蒼「普通に見えるように話せたと思うのですが」
羽鳥蓮「いやいや・・・」
如月蒼「授業以外の余計な会話はしないように心掛けています」
羽鳥蓮「それ、楽しいか? なんとかしないとな」
〇オフィスビル前の道
松風陽菜(ひな)「如月先生って見た目かっこいいのに何か残念だよね」
立花凛(りん)「もしかして私たち嫌われてる?」
松風陽菜(ひな)「なんだかね それよりさ、新しくできた映画館ね今週末カップルで行くと割引なんだって 行こうよ」
立花凛(りん)「映画はいいけど・・・ カップルってもしかして?」
松風陽菜(ひな)「ふふ この前の学園祭りんの男装かっこよかったのよね」
立花凛(りん)「やっぱり! しょうがない、ひなのためなら! まかせて」
松風陽菜(ひな)「ありがとう、りん 週末楽しみだね」
立花凛(りん)「だね」
〇映画館の入場口
立花凛「ひな こっち」
松風陽菜(ひな)「りん 変装完璧だよ びっくりしちゃった」
立花凛「ふふ そうでしょ!」
松風陽菜(ひな)「りんの面影ないもん」
立花凛「それ褒めてる? あっ、始まっちゃう! 急ごうよ」
松風陽菜(ひな)「りん 待って」
〇渋谷のスクランブル交差点
立花凛「映画 面白かったね」
松風陽菜(ひな)「うん また行こうよ じゃあ、わたしこっちだから」
立花凛「うん またね」
羽鳥蓮「悪いな蒼 付き合わせちゃって」
如月蒼「そんなの気にしないでください 探していた本あってよかったですね」
羽鳥蓮「蒼のおかげだよ 晩飯おごるよ」
羽鳥蓮「あれ?財布がない」
如月蒼「もしかしてさっきぶつかった人が」
羽鳥蓮「あそこだ」
如月蒼「見逃しません!」
スリ「えっ」
如月蒼「待ちなさい」
立花凛(あれ?如月先生 何してるんだろう)
如月蒼「君! そいつはスリです」
立花凛「えっ」
スリ「どけえ」
立花凛「えいっ!」
スリ「うわ!」
如月蒼「捕まえましたよ 財布を返しなさい」
スリ「ちっ」
如月蒼「あっ 待ちなさい」
立花凛「逃げちゃった」
羽鳥蓮「やっと追いついた 蒼足早いよ 財布取り返してくれたんだね」
如月蒼「この方が手伝ってくれました」
羽鳥蓮「ありがとう 助かったよ 何か御礼に」
立花凛「いや 御礼なんて」
羽鳥蓮「じゃあ メシでも奢らせて」
〇ファミリーレストランの店内
羽鳥蓮「かっこよかったよ さっきの飛び蹴り」
立花凛「はあ」
如月蒼「素晴らしい動きでした 指南していただきたいくらいです」
立花凛「はあ・・・」
羽鳥蓮「そんな強そうに見えないのにな どちらかというと女性っぽく見える」
立花凛「えっ?」
如月蒼「蓮 男性に向かってそれは失礼ですよ」
羽鳥蓮「いや そういうつもりでは・・・ でも正直、女性にモテるでしょ」
立花凛(あれ? もしかしてこの二人、私が女だって気づいていない?)
羽鳥蓮「実はさ 蒼、女性恐怖症なんだよね」
如月蒼「蓮 余計なことは言わなくていいです」
立花凛「えっ そうなんですか?」
羽鳥蓮「そうなんだよ もったいないよね」
如月蒼「特に日常の生活に不自由はしていないので問題ないです」
羽鳥蓮「大ありだよ」
如月蒼「でも、あなたは・・・ええと 何とお呼びすれは?」
立花凛「あ りんです」
如月蒼「りんくんは中性的なので少し緊張しますね」
立花凛「えっ」
羽鳥蓮「へ~じゃあ りんくんで練習すればいいじゃない?」
立花凛「練習?」
如月蒼「特に克服の必要性は感じませんが」
羽鳥蓮「いいじゃん いざという時のためだよ りんくんごめん、少し付き合ってもらってもいい?」
立花凛「別に構いませんが」
如月蒼「コホン では」
如月蒼「こんにちは 蒼と言います僕の趣味は読書です」
羽鳥蓮「何だよそれ 面接かよ」
立花凛「はあ」
立花凛(でも なんだかちょっと可愛い)
立花凛「あの 例えば服装や髪形を褒めるとか」
如月蒼「肌が透き通っていて綺麗ですね」
立花凛「えっ」
羽鳥蓮「やればできるじゃん」
如月蒼「女性じゃないですからね」
立花凛(女性なんですけど)
ウエイトレス「お待たせしました」
立花凛「あっ これ大好物なんだ」
如月蒼「ふふっ」
立花凛「な、何ですか?」
如月蒼「いや 素敵な笑顔だなって」
立花凛「えっ」
如月蒼「男性にしておくの勿体ない」
立花凛「そう? じゃあ一層、究極の生命体にでもなろうか?」
羽鳥蓮「何だよそれ?」
如月蒼「ふふっ」
立花凛「蒼さんはどんな人が理想なのですか?」
如月蒼「そうだね 例えばねみんな桜が好きじゃないですか」
立花凛「ええ」
如月蒼「桜って実は種類が沢山あるんですよ 花見をするのは大方ソメイヨシノという品種なんです」
立花凛「そうなんですか」
如月蒼「でね その後に八重桜って割と花が大きめの桜が咲くんですよ」
立花凛「何か見たことあるかも」
如月蒼「よく見ると花びらが20枚以上も重なってとても綺麗なんです」
立花凛「そうなんだ」
如月蒼「凄いピンク色でね 1カ月くらい咲いてるんですよ 誰も見ていないのにね」
立花凛「へえ」
如月蒼「そういう人がいいですね」
立花凛「えっ」
如月蒼「強くて、人に左右されずに自分を持ってる人 よく見たらその良さが分かるような人」
立花凛「なんだか素敵な例えです」
羽鳥蓮「まわりくどいよ」
立花凛「見かけより中身なんですね」
如月蒼「ふふ そうそう、花より団子ですね」
立花凛「それじゃあ ただ食い意地はってるだけ!」
如月蒼「ふふっ 冗談ですよ りんくんと話していると楽しいです」
立花凛「えっ」
如月蒼「ずっと話していたいって気持ちになります」
如月蒼「何だかこのまま分かれるのは寂しい気持ちになります」
羽鳥蓮「おいおい」
如月蒼「もしよろしければ またこうして練習に付き合ってもらえますか?」
立花凛(でも、こうして私と普通に話してるってことはもしかして克服・・・)
ウエイトレス「食後のコーヒーです」
如月蒼「わっ! あ、あ、ありが」
立花凛(克服できてなかった)
立花凛「わかりました 私は別にかまいませんよ」
如月蒼「本当ですか ありがとうございます」
その笑顔はとても素敵でまっすぐ彼の顔を見れなかった
このまま彼を好きになってしまってしまいそうな気がして・・・
立花凛(もしかしたら 私は彼を好きになりかかっているのかな)
〇花模様
ふと窓の外を見ると、1本の八重桜が満開でした。
蒼の本当の姿を知った私は、彼の八重桜になりたいと本気で思い始めていました
桜、とっても綺麗ですよね。特に季節を感じる代名詞と言っても過言ではありません。
自分の好きなものを共感されるのは、とっても嬉しいことですよね!
普段の先生と違って、男性相手だとこんなふうにすぐ打ち解けられるんですね。
なんだかギャップ萌えします!
女性のままの彼女とも、いい関係になれるといいなぁって思いました。
男の子に成りすました自分に好意を持たれることは凛ちゃんにとって少し複雑だっただろうけど、こんな形で先生の本質に触れ、そこから好きという気持ちが生まれたことはとても素敵ですね。