特別授業「キュンの練習」は放課後、屋上にて開講します♡

齊川萌

秘密と屋上とキュンの練習(脚本)

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〇学校の屋上
縞音ユマ(あ~、誰もいない屋上で吸うタバコ最高~)
  昼休み。
  工業高校の屋上で、さも当然のようにタバコを吸いながらBL同人誌に鼻の下を伸ばしているのは縞音ユマ、28歳。
  美人、若い、優秀という三拍子が揃う彼女にはいつも周囲からの嫉妬や憧れといった感情が付きまとう。
  そのすべてを避けるように、ユマは我が物顔で屋上を使っていた。
縞音ユマ(...ま、私も他人と関わるのニガテだし... って何この神展開!? デュフフフ...)
音羽リン「...へえ、ユマせんせーってこういうの好きなんだ...それに、タバコも」
縞音ユマ「え...音羽君!?」
音羽リン「あんなに堂々と屋上のドア開けて...不用心だよ、せんせー?」
縞音ユマ(私としたことが...)
縞音ユマ「ここは立ち入り禁止よ? 早く教室に戻りなさい」
音羽リン「ふーん... じゃあユマせんせーがタバコ吸いながら鼻血我慢してたって学校中に言いふらしても文句はないよね?」
縞音ユマ(は!?)
音羽リン「ん~? どうしたの?」
縞音ユマ(う...完全に弱みを握られた...)
音羽リン「よーし、そろそろ戻ろっかな~」
縞音ユマ「...ないで...」
音羽リン「ん? なあに? もっとはっきり、俺の目見て言ってくれなきゃ分かんないよ?」
縞音ユマ(...超タイプなイケメン相手に目見て懇願しろなんて...拷問じゃない!)
音羽リン「どーしたの? 早くしないと昼休み終わっちゃうよ~?」
縞音ユマ(あ~、もう!)
縞音ユマ「...わ、私の秘密...誰にもバラさないで...お願い!」
音羽リン「ふふっ、よく言えました。 クールビューティー・ユマせんせーからそんなセリフ聞けるなんて役得だな~」
縞音ユマ「じ、じゃあこのことは...」
音羽リン「俺のお願い聞いてくれるなら、考えてあげる」
縞音ユマ「お願い...?」
音羽リン「男をキュンとさせる練習、付き合って♡」
縞音ユマ(はい...!?)

〇学校の屋上
音羽リン「...俺のことだけ考えてよ... ほかのやつなんて見ないで...ね?」
縞音ユマ(だああ~! ごちそうさまですっ!)
音羽リン「...どう?」
縞音ユマ「...全然ダメ」
音羽リン「何で~!」
縞音ユマ「...クサい」
縞音ユマ(独占欲強めなのは私の大好物だけどっ!)
音羽リン「はあ、ユマせんせー、フィクション読みすぎ...」
縞音ユマ「文句言うなら今日でレッスンは終わりにします」
音羽リン「はいはい、分かったから! せんせーだって俺とジンがくっつくの、見たいでしょ?」
縞音ユマ(うぐ...見たい...確かにものすごく本当に見たい...けど...)
縞音ユマ「やっぱり良くないんじゃない? 好きでもない相手をその気にさせて女除けにするなんて...」
音羽リン「好きでもない相手って失礼だなあ...ジンはすげえいい奴だし、付き合ったら絶対楽しいって!」
縞音ユマ(...ったく、これだからモテ男とリアルで関わるのは嫌なのよ...)
  あの日以来、ユマは教え子である音羽リンの「キュンの練習」に付き合わされていた。
  彼は女の子から告白されないために同性と付き合おうと決めた。だが、男相手に何をどうしたらいいか分からない...
  そんなとき、その道に精通しているらしいユマに教えを乞うことにしたのだ。
  今彼が狙っているのは同じクラスの海原ジンだが...正直見込みは薄い。
縞音ユマ「...はい、もう一回」
音羽リン「ひょ~、ユマせんせー厳し~」
  そんなある日のこと...

〇屋上の入口
縞音ユマ「...あれ?」
  屋上へ通じる扉の向こうに、人影が二つ見える。一つはリン...もう一つは...
縞音ユマ(ジン君!? ...まさかあの子、もう告白しようとしてる!? ...ん? でもいつもと様子が違う気が...)
  ユマがそっと見守っている先には、ぎこちなく笑うリンの姿。
縞音ユマ(あれが本当に好きな相手に見せる顔なんだ...あの子、ジン君のこと本気で...)
縞音ユマ「あ...れ?」
  思わず声を上げてしまったユマ。
  その声にこちらを振り向いたリンと目が合ってしまった!
縞音ユマ(...こんなの!)
  恥ずかしさのあまり逃げ出そうとしたその時、後ろから手首を掴まれた。
音羽リン「待って!」
縞音ユマ「あ...」
海原ジン「り、リン! 相談乗ってくれてサンキュな!」
音羽リン「いや、こっちこそありがと!」
海原ジン「お前...大事にしろよ?」
音羽リン「分かってる!」
「はは! じゃあな!」

〇学校の屋上
音羽リン「よしよし...」
縞音ユマ「...何で...涙なんか...」
音羽リン「涙じゃなくて鼻血出すところだよね 俺とジンがくっついたって思ったならさ」
縞音ユマ「え...?」
音羽リン「ねえユマせんせー...俺の話聞いてくれる?」
縞音ユマ「うん...」
音羽リン「俺...昔からモテるのが面倒でさ...一人になりたくてこの学校に来たんだよね」
音羽リン「で、キュンの練習すれば天然人たらしは治るかなって思ったんだけど...やっぱ難しかったみたい!」
縞音ユマ「...そっか...練習、無駄だったかな」
音羽リン「無駄なんかじゃない!」
音羽リン「俺、ユマせんせーと一緒にいるときの自分が好きなんだ。だから...」
音羽リン「俺と付き合ってください!」
縞音ユマ「へっ!?」
音羽リン「...ダメ、ですか...?」
縞音ユマ「...私のこと、今までで一番キュンとさせられたら、考えてあげる」
音羽リン「それなら...」
  リンはそう言うとユマの左手を取り、薬指に軽く口づけをした。
音羽リン「ここ...今予約したから誰にも渡さないでね?」
音羽リン「...って、ユマせんせー!? あ、鼻血! ヤバい! 誰か~!」
  その日、倒れたユマをリンが自宅まで送っていった先で何が起こったのかは、また別のお話。
縞音ユマ「うふふ...縞音ユマ、この人生に悔いはありません...♡」

コメント

  • ユマ先生のキャラクターが最高ですね。冒頭で色々と感情移入してしまいましたw テンポの良さと展開のダイナミズムさで終始楽しませてもらいました。

  • ユマ先生はきっと魅力的な女性なんでしょうねえ。美人で個性が強いって、さすがのりん君も接する度に惹かれていくのがわかるようなきがしました。

  • 面白かったです!ユマ先生のキャラが個人的にお気に入りでした!

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