LOVE in CONVENIENCE

淵野辺学

読切(脚本)

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淵野辺学

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〇銀行
  2022年、現代
  大野(24歳・会社員)
  来月、友人の結婚式がある。
  ご祝儀用のピン札を準備するため銀行に訪れた。
銀行員「20番の番号札をお持ちのお客様~」
  銀行の女性に一目惚れをした。
銀行員「ご用件は何でしょうか?」
大野「ピン札がほしくて・・・」
銀行員「新幣交換ですね。こちらの用紙に金額とお名前ご住所電話番号を記入ください」
  ピン札を受け取ると、その1枚に
  『今度お茶でもしませんか?090********』
  と電話番号を書いて渡していた。

〇明るいリビング
  2042年、今から20年後
  娘(10歳・小学校4年生)
娘「ねぇねぇ、ママ、早くお小遣いちょうだいよ」
ママ「はいはい、スマホにチャージするわね」
  お金が完全に電子化した世界になって早10年。
  世間ではスマホやカードでお金のやりとりをするようになっていた。
娘「そうだ!ママはどうやってパパと出会ったの?」
  両親の出会いを聞いて、それを作文にする宿題が出されているみたい。
  娘のため出会いのきっかけとなったものを見せてあげました。
娘「何これ?」
  おじさんの顔が描かれた長方形の紙切れに興味津々であり、それもそのはず
  娘が生まれた年に紙幣が廃止されていた。
娘「あっ!何か番号が書いてある!」
ママ「あとはパパに聞いてみて」

〇西洋風の受付
  2022年、現代
  大野(24歳・会社員)と中山(25歳・フリーター)
新郎の友人「結婚おめでとうございます」
大野「ありがとうございます。ご祝儀、お預かりいたします」
大野「こちらにご記入をお願いします」
大野「これで全員受付したね」
中山「おう、俺たちのも出すか」
大野「忘れてた。はい、俺のご祝儀」
中山「ありがとうございます。お預かりいたします」
大野「慣れたもんだな!受付を本職にすれば?」
中山「いやいや、今の仕事にやりがいを感じているからね」
大野「そいや、俺のご祝儀2万円だわ」
中山「は?なんでだよ」
大野「川崎の結婚式だし、いいっしょ! 受付の謝礼分マイナスってことで!」
大野「実はこの前、銀行でさ・・・」

〇研究開発室
  2032年、今から10年後
  川崎(35歳・研究者)
  川崎は精密機器メーカーで研究者として勤務していたときにid波を検知するセンサーを発明した。
  id波というのは人が目覚めているときだけ常に発している電磁波であり、
  誰ひとり同じ周波数はなく、人それぞれ固有で持っているためアイデンテティ波と呼ばれている。
  一目惚れはこのid波の干渉によるものだと解明されるのはまだまだ先の話である。
  この大発明に対して会社が川崎に払ったお金はわずか3万円だった。
川崎「これじゃあご祝儀と同じだよ。 大野のより多いけど」
  そんな不満をこぼして、会社を相手に訴訟を起こす。
  結果、会社から8億4千万円を受け取り、和解した。
  そして、この発明により、お金の完全電子化が始まり、紙幣と硬貨が廃止された。
  お金の電子化にはセキュリティの課題があった。
  アカウントは国民のマイナンバーを利用するとして、パスワードはどうするのか日々議論されていた。
  指紋や静脈認証を利用する案があったが、睡眠中の不正行為や複製といった懸念がある。
  他に良い案はないのか・・・そう、それがid波の活用である。
  マイナンバーとid波を関連付けることでこの課題を解決した。
  高齢者にとってもパスワードを暗記する必要がないという利便性も普及が進んだ要因の一つだ。
  これによりお金の管理費が従来の10分の1に削減できたという。
「紙幣が残っていたら俺の顔になってたのでは?」

〇コンビニのレジ
  2022年、現代
  藤沢(25歳・会社員)
藤沢「私は女子をこじらせている」
  月曜のレディースデー、そして、出勤前にコンビニで買い物することが日課のOLです。
  そんな私は店員に恋をしている。
  毎朝、
中山「イラッシャーセー!」
  と言ってくれる店員も私に気があるのでは?と思うけど、いつも一歩が踏み出せない。
  そして今日、その時が来た。
  渡されたお釣りのお札に
  『今度お茶でもしませんか?090********』
  と書かれていた。

〇明るいリビング
  2042年、今から20年後
  中山(コンビニ店長・45歳)
  仕事を終えて帰宅すると、娘が寝ずに私を待っていた。
娘「パパはどうやってママと出会ったの?」
  どうやら妻にも聞いたらしい。
  今となっては恥ずかしい思い出である。
中山「昔、コンビニで働いていた時、お釣りのお札に自分の連絡先を書いてママに渡したんだよ」
娘「ママが見せてくれたのはそれか!」
  これは大野から教えてもらった方法だが、本人は失敗したらしい。
  電話番号が書かれたお札はそのまま使われ、いたずら電話が絶えなかったが
  川崎の発明のおかげによる紙幣廃止でそれはなくなったという。
中山「不便な世の中だったからこそ、ママと結婚できたんだよ」
娘「そうなんだ!教えてくれてありがとう」

〇特別教室
先生「みんな、おはよう! 宿題の作文はできているかな?」
先生「じゃぁ、最初の発表は中山さん!」
娘「はい!発表します!」
娘「タイトルは『不便な恋愛』」

コメント

  • 最後の娘さんの作文のタイトルで思わず笑い声が出ました。子どもって純粋で素直に受け取りますよね~。確かに今と過去を比べても、スマホやメールのない時代ははじめての人と会うのも苦労しました。でもそれはそれでロマンチックでよきだったなぁ。

  • 実際2042年にどのようなマネー社会になっているんでしょうね。便利さの裏にはいつもその代償がつきまとうものですが、電子マネーでは出会いは生まれないのは確実ですね。そう遠くない未来を予想したお話、とても興味深かったです。

  • 色々な方のストーリーがあってイメージが膨らむことが出来ました。時代が進んでいくにしたがって色々変化していく世の中に対応していくのは大変ですがそれもまた時代ですよね。

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