ひねくれ先生と居残り勉する話。

読切(脚本)

ひねくれ先生と居残り勉する話。

今すぐ読む

ひねくれ先生と居残り勉する話。
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇学校の廊下
  夏休み明けの九月。私は、先生に廊下で呼び止められた。
先生「あさぎりーっ!」
日向「あっ、先生! 何の用ですか~?」
先生「何が『何の用ですか』だ! 二週間後のテスト、覚えてるだろうな!?」
日向(げっ、忘れてた・・・)
先生「おかげで前のテスト、うちのクラスが五教科平均最下位だったんだぞ!!」
日向(前のテスト・・・ 確か五教科の点数全部足しても百点いかなかったやつ・・・)
日向「ぶ、部活が忙しかったんですって!!」
  私は運動部に所属していることもあり、あまり勉強時間が取れないことが多かった。
先生「部活、ね・・・」
先生「ちょうどいいじゃないか! 部活は明日からオフだろ? テストまでの二週間、しっかり勉強すること!!」
日向「せっかくのオフがぁ・・・」
先生「多分お前だけじゃさぼるだろうから、先生が放課後マンツーマン授業してやるよ」
先生「みっちりやるつもりだから覚悟しとけよ?」
日向(か、勘弁してください・・・!)
先生「部活といえば、朝霧の部活テスト終わって割とすぐに大会あるよな?」
日向「ありますけど・・・ それがどうかしました?」
先生「えーっと補習の日は・・・ あった、ここだ!!」
日向「補習の日の次の日が試合・・・」
先生「最後の練習日だけど、当然部活より補習優先になるからなぁ・・・」
日向(これは・・・思った以上にやばい!?)

〇教室の教壇
  数日後──
先生「朝霧、『いい国つくろう』?」
日向「『鎌倉幕府』!!」
先生「おぉ、正解だ! 初日のひどさから少しは脱却したか?」
日向「うるさいですよ! それより次の問題、はやく!!」
先生「『鳴くよウグイス』?」
日向「『ホーホケキョ』!!」
先生「ぷっ・・・ 基礎はもう少しやる必要がありそうだな」
日向(絶対見返してやる~っ!!)
先生「あ、そうそう。朝霧に渡しとくものあったんだった」
日向(先生から・・・? 何だろう?)
先生「ほら、よっと!!」
日向「わわっ、投げないでくださいよ!! ってこれ、単語帳・・・?」
先生「朝霧のためにわざわざ作ってやったんだぞ? ありがたく受け取れよっ!」
先生「あと、お前の誕生日だろ?今日」
日向(先生、覚えてたんだ・・・)
日向「意外と先生にも律儀なとこあるんですね~」
  先生に渡された小さな単語帳は、先生の風貌からはあまり想像できないような可愛いピンク色をしていた。
先生「と、とにかく続きやるぞ!」

〇本棚のある部屋
  日向の部屋──
日向(うう・・・難しい・・・)
日向「そうだ、今日先生にもらった単語帳・・・」
日向(先生ああ見えて可愛い趣味してるんだなぁ・・・)
日向「何とか赤点は回避しなきゃ・・・ あんな嫌味ったらしいのと補習なんて──」
  単語帳を渡してきた時の、頬が薄ら染まった先生の顔が頭に浮かんできた。
日向「あーもう、何考えてんのよ!! 集中集中っ!」

〇教室
  ──テスト当日──
日向「き、緊張する・・・」
先生「お、朝霧!!」
先生「まぁ頑張れよ!! よっぽどバカなミスしない限り、赤点は回避できると思うけどな」
先生「名前書き忘れるとか、な」
日向「失礼ですね!! いくら何でもその間違いはしませんよ!」
先生「昨日やった模擬テストで二つも名前を書き忘れた上に書いた名前の漢字も間違ってたのは誰だっけ?」
日向「うっ・・・ いいですよ!回避すればいいんでしょ!」
先生「赤点とって補習なんてこっちもごめんだからな」
日向(部活のためにも、赤点は回避しなきゃ!)

〇教室
  大会前日──
日向(一つだけ落としちゃった・・・ しかもめっちゃバカなミスで・・・)
先生「おやおや赤点かい?補習者の名簿は白紙だと思っていたのに──」
先生「しかもあんなしょーもないミスで!!」
日向「うるさいです・・・ 私落ち込んでるんですよ!?」
先生「まあまあ、午前中の練習には参加できたんだからいいだろ?」
  補習は一つだけだったおかげで、午後にある補修の時間までは練習ができた。
日向「そんなこと言ったって、いくら練習したって足りないくらいですよ!!」
先生「補習になったならもう仕方ない。 さっさと終わらせるぞ」
  しばらく、補習は続いた。
先生「はい、補習終わりー!! すぐ帰れよー」
日向「私自主練してから帰るんで、教室のカギお願いします!!」
日向「では!!」
先生「・・・よ」
日向「はい?まだ嫌味言い足りないんですか──」
先生「頑張れよ、明日の試合」
先生「お前ならきっと勝てるよ」
先生「・・・応援してる」
先生「──さあ、先生ももう帰るから、朝霧も早めに帰れよ!!」
  ぺしっと教科書で私の頭をはたいてそう言い捨てると、先生は速足で歩きだした。
  背中を向けて歩いていく先生の耳が真っ赤になっていることに気づき、私は少しの間立ち尽くしたままになっていた。
日向「先生!!」
日向「私、頑張ります!!」
  遠ざかるその背中に叫んだ。
  先生はそれには答えず、ひょいと片手をあげただけだった。

コメント

  • 放課後にマンツーマンで先生に勉強見てもらえるなんて、VIP待遇ですね。こんな先生がいたら、勉強も部活も恋も頑張れると思います!

  • 先生、口は悪いですが、彼女のことをサポートしたいっていう気持ちがふしぶしにあらわれていて、素直じゃない感じも可愛かったです。

  • かっこよくて生徒思いで素敵な先生ですね!
    こんな先生がいたら、みんな学校も楽しくなりそうです。
    なんだか青春してるなぁと思いました。

コメントをもっと見る(5件)

ページTOPへ