天空の二人(脚本)
〇屋上の隅
飛鳥「お父さん」
飛鳥「お母さん」
飛鳥「先立つ不孝をお許し下さい」
飛鳥「あとアイツ」
飛鳥「先立った後に絶対戻って来てやるから覚悟しとけ」
飛鳥「24時間365日、1秒たりとて休憩挟まず纏わりついてやる」
飛鳥「メシ休もトイレ休憩もいりません」
飛鳥「なにせこちとら幽霊になるんだから」
飛鳥「ブラック上等、趣味と実益を兼ねて生活の一部として働き続けることが出来るんだからね」
飛鳥「死ぬっていうか、むしろ生き甲斐見つけちゃったって感じ?」
飛鳥「と、いうわけで世界のみなさんさようなら」
飛鳥「そしてアイツとワタシ二人だけの世界よ!コンチニワーッ!」
一文字翔「待ちなさーい!」
飛鳥「な、何ですか?」
飛鳥「そして誰ですか?」
一文字翔「僕はね。視力5.0なんですよ」
一文字翔「むしろね。見たくないものばかり目に入って来るんですよ」
飛鳥「?」
一文字翔「ASKA&HIDEYUKI」
飛鳥「な、なぜそれを」
一文字翔「君のね。薬指にね。輝いてるんだよ」
一文字翔「これが5.0!」
飛鳥「凄い5.0!」
一文字翔「フッ、だいたい察しはついたさ」
一文字翔「僕はね。心の視力も5.0なんだ」
一文字翔「飛び降りるのなんておよしなさい。色恋沙汰の悩みなど誰にでもある一過性のものだ」
一文字翔「男なんて星の数ほどいるんだよ」
飛鳥「・・・え?新手のナンパ?」
一文字翔「すまない残念ながら僕には妻がいる!」
一文字翔「しかも初恋の人と結ばれたんだ!」
一文字翔「つまり僕は君と違って星の数なんて必要なかったというわけさ!」
飛鳥「ああそう良かったわね幸せな人生で!」
一文字翔「そうさ。こんな幸せな僕だからこそ目の前の不幸な女子を救いたいんだ」
飛鳥「むしろアンタにだけは救われたくなくなってきたわよ!」
一文字翔「そう言われてもこの事態を見過ごすわけにはいかないんだよ。職業上ね」
飛鳥「職業?まさか警察とかですか?」
飛鳥「なわけないか・・・」
一文字翔「さあ早く思いとどまってくれたまえ!でないと冷めてしまうじゃないか!」
一文字翔「10分でお届けのピザーレなんだぞ!」
飛鳥「知るかアンタの都合なんか!」
一文字翔「だがピザーレ配達員とは世を忍ぶ仮の姿」
一文字翔「あるいは妻と子を養うための仮の仕事」
飛鳥「とっとと正規で働きなさいよ」
一文字翔「しかしてその正体は・・・」
〇雲の上
一文字翔「天空戦士イカロス!」
一文字翔「天空戦士イカロス!」
一文字翔「天空戦士イカロス!」
一文字翔「天空戦士イカ」
飛鳥「うるさいな!分かったわよ!」
〇屋上の隅
飛鳥「話きいてほしいなら、駅前にいいメンタルクリニックがあるからそこで」
天空戦士イカロス。それは花小金井博士の改造手術を受けた愛と正義の戦士
飛鳥「しょうもない説明にテキストビューを使うな!自分で喋れ!」
一文字翔「天空戦士イカロス!ピザーレの配達員として世を忍びつつ日夜このメガロポリスの平和を守っているが」
一文字翔「東京はわりと治安もしっかりしてるしそもそも怪人なんて一匹も見かけないしこれといった活躍もないのが実情!」
飛鳥「ねえその話長引く?」
一文字翔「そして僕の正体は誰にも言わないでほしい」
飛鳥「言わないわよ。頭オカシイって思われるもん」
飛鳥「てかもう誰とも会うこともないし」
飛鳥「あ~あ。何で人なんか好きになっちゃったかな~」
飛鳥「休みの日はさ。マンガ読んだりDVD借りたりゲームしたり。そんなんで充分だったんだよ」
飛鳥「なんでそういう日々に戻れなくなっちゃったかな・・・」
飛鳥「似合わないオシャレとかしちゃってさ。メイクも丁寧になっちゃってさ。朝も昼も夜も同じことばっか考えてて」
飛鳥「同じ人のことばっか考えてて。アイツの代わりなんていなくて。なのに・・・なのに・・・」
一文字翔「何の音だーっ!」
飛鳥「聞きなさいよ!」
一文字翔「しかしこのサイレンは一体!東京の危機なのか!僕を戦いへと誘っているのか!」
『只今光化学スモッグ注意報が発令されました。住民の皆さんは外出を控え・・・』
一文字翔「・・・」
飛鳥「あんたスモッグと戦うの?」
一文字翔「フッ、僕の手を煩わせるまでもなかったか」
飛鳥「フッ、じゃないわよ」
飛鳥「いいよ。だったらお仕事させてあげる」
一文字翔「え?」
飛鳥「正義の味方なら私のこと助けてよ」
一文字翔「・・・!」
〇空
飛鳥「私を助けて・・・」
〇モヤモヤ
飛鳥「え?」
〇手
飛鳥「・・・いやだ」
飛鳥「・・・助けて」
〇流れる血
飛鳥「助けて!」
〇黒
「助け・・・」
〇白
〇雲の上
飛鳥「・・・?」
飛鳥「なに・・・」
飛鳥「てか・・・誰?」
〇オフィスビル前の道
女の子「あ!」
女の子「おかーさーん!これひろったー!」
おかーさん「ダメでしょ。そんなものポイしなさい」
女の子「ぽーい。あはははは」
〇屋上の隅
運命の人?「あ、あの!大丈夫ですか?」
飛鳥「・・・」
飛鳥「・・・?」
運命の人?「良かった。気がついた・・・」
運命の人?「貧血ですか?大丈夫ですか?」
飛鳥「星・・・」
運命の人?「え?」
〇屋根の上
「ピザーレでーす」
「ちょっと!10分って言ったわよね!いつまでかかってるのよ!」
「いや~遅れて申し訳ない。実を言いますと人を助けていたものでね」
「僕はね。こう見えてもね。天空・・・」
「さっきお店にクレーム入れたから!」
「・・・」
「フッ、次から飛んで配達するとしよう」
すごいおもしろかったです!
イカロスすごいですね。ちゃんと彼女を救ってなお、運命の人とまで出会わせるって!
ピザが冷めても怒らないであげて!笑
イカロス最高です。ピザの配達員は仮の姿として、日々日夜人々の為に働いているんですね。でも、今度はどんな職業だろう?次回が楽しみです。
無事彼女を救えたようでよかったです。思い詰めているときにあんな情熱的で不思議なひと?!に偶然出会ったら、いい意味でバカバカしくなって前向きに生きられそう。