伝説のノート

Akiyu

エピソード1(脚本)

伝説のノート

Akiyu

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〇教室
俺「その話本当か?」
  俺がその話を聞いたのは、友人からだった。
  歴代の受験生の先輩を東大合格に導いてきたという伝説のノート。
  晴れて東大に合格した先輩が持っていて10万円で譲ってくれるのだそうだ。
  先輩も受験生の当時、先輩の先輩から10万円でその伝説のノートを買ったらしい。
俺「コピーじゃだめなの?」
友達「コピーした人は軒並み不合格だったらしい」
俺「つまり正規のルートで買った奴じゃないとダメなのか」
友達「そこでお前に相談だ。10万円なんて大金。俺一人では出せない」
友達「俺とお前で半分の5万円ずつ出して買って一緒に勉強して東大目指そう」
友達「もし合格したら、後輩に10万円で伝説のノートを売って手元に10万円が戻ってくるって話だ」
俺「なるほど。よし、乗った」
  高校生に5万円は厳しかった。なけなしのお年玉とおこづかいを必死にかき集めて、なんとか5万円を用意した。
  こうして俺達は、先輩から伝説のノートを正規の値段で手に入れた。

〇図書館
俺「しかし、この伝説のノートすげえな」
友達「ああ、要点がとてもよくまとめられていて分かりやすい」
俺「先生がやる授業の何倍も分かりやすいぜ。こりゃ塾も通わず合格できそうだな」
友達「おいおい、気が早いぞ。あの東大だぞ。相当な難易度だぞ」
俺「分かってるよ。でもこのノートがあればやれる気がする。全教科、すげえ分かりやすいから」
友達「ああ。それにこれは、東大の受験用に特化したノートだからな。傾向と対策もバッチリだ」
俺「よーし、やるぞー!!東大に合格するぞ!!」
友達「おー!!」
  俺達は毎日、図書館で勉強した。雨の日も雪の日も。
  そして──
  受験が終わり、合否発表があった。

〇合否発表の掲示板
俺「やった!!やったぞ!!合格だ!!」
友達「俺もだ!!やった!!合格だ!!」
  二人で抱き合った。この一年間、親友と共に必死に努力した成果が報われたのだ
俺「そうだ!!母ちゃんに報告しないと!!」
友達「ああ、俺も!!」
  二人で親に報告した。二人共両親は大喜びした。
俺「今日はご馳走だってさ。はは、母ちゃん。すげえ喜んで泣いてたよ」
友達「俺のところもだ。やったな、おめでとう」
俺「お前もな。おめでとう」
友達「大学入ってもよろしくな」
俺「おう」
  こうして俺達は東大に合格した。
  それが30年前の話である。

〇おしゃれなリビングダイニング
俺「ただいま」
  俺は東大を卒業し、それなりに有名な企業に就職できた。今では結婚し、娘は今年、受験生だ。
娘「おかえりー」
娘「ねえ。ちょっと相談があるんだけど」
俺「ん?どうしたんだ?」
娘「10万円貸してくれない?」
俺「ええ?何に使うんだ」
娘「ノート買うの」
俺「はあ?ノートだと?何のノートだ」
娘「伝説のノート。東大に合格した先輩が使ってて、皆がそれで東大に合格してきたんだって」
俺「コピーじゃダメなのか?」
娘「コピーした人は、軒並み不合格だったらしいよ」
俺(あれ・・・? なんかこの台詞、どこかで・・・)
俺(・・・ああ。まさか30年経った今でもまだ続いていたのか)
  俺は頭を抱えた。娘が俺と同じ東大に行ってくれたら親としては嬉しいが・・・。
  しかし今考えればあの伝説のノート。あれは、アイツと俺が努力したからこそ合格したわけで・・・
  伝説のノートだから合格できたとは限らない。いや、まあ・・・しかし・・・
  確かにあのノートは、とても分かりやすくて助けられたがな・・・。
俺「はぁ・・・。わかったよ、買ってこい」
俺「ほら、10万円だ」
娘「えっ?いいの?」
俺「俺が東大に合格できたのも、あの伝説のノートのおかげだからな」
娘「なーんだ。お父さんもノート買ってたんじゃん」
俺「でもノートを買えば合格するってもんじゃないぞ。東大を甘く見るな。死ぬ気で勉強しろよ」
俺「父さんも受験生の時、死ぬ気で勉強したんだからな」
娘「はーい」
  それから娘は、伝説のノートを手に入れて、毎日必死に勉強していた。
  そして合格発表の時。
娘「やった!!合格したよ!!」
俺「本当か!?やったな!」
娘「うん。明日、伝説のノート、後輩に売りつけてくる!」
俺(それも変わらないのな・・・)
  今思えば10万円という大金で自らを追い込む背水の陣にする事、それで必死に勉強するのかもしれない。
  そんな事を考えた。
  さて伝説のノートは、次は誰の手に渡るかな。

〇豪華なリビングダイニング
友達の子供「頼むよ、親父。10万貸してくれよ。東大に合格して返すからさ」
友達「ダメだ。伝説のノートは自分の力で10万円用意しなきゃ合格しない」
友達の子供「先輩は親に出してもらったんだよ」
友達「どこの親だ。10万も出してノート買うだなんて」
友達(やっぱり自分で出させないと意味がないだろう)
友達の子供「だからー!!」
  話を聞くと、かつての俺と一緒に合格した友達の娘の事だった。
友達「ぷっ・・・。はははははは」
友達の子供「な、なんだよ。何がおかしいんだよ」
友達「わかった。出してやるよ。その代わり死ぬ気で勉強しろよ。東大は甘くないんだからな」
友達の子供「ああ。頑張るよ」
  時代は巡る。いつまでも。
  伝説のノートは、これから先もずっと受け継がれていくのである。
  次は君の番かもしれない。

コメント

  • 伝説って色々ありますが、そのノートは不思議ですごいですね。
    でも、たしかにそれだけお金をかけたんだから…ってがんばったおかげなのかもしれませんね。

  • 面白い伝説の継承ですね!10万円という大金だからこそ、より受験するものへいいプレッシャーをかけてくれるように思います。ノートに丸々頼ることなく、必死に勉強したと自覚があることでより自信にもつながりますね。

  • 歴史は繰り返す?!
    でもその伝説のノートのおかげで受かったのかなぁ?
    本人の頑張った結果のような気もしてならない!
    プラシーボ効果的な…?

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