りっちゃんのピアス

三角錐

読み切り(脚本)

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りっちゃんのピアス
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〇白い校舎
  公立ノベザワ高校

〇散らかった職員室
松岡先生「川島ァ!」
川島ひなた「なぁに? センセー♡」
川島ひなた「怒鳴ると 体に良くないよ? ちゃんと聞くから 落ち着いて話そう?」
松岡先生「・・・お前なァ、そのピアス!」
松岡先生「アクセサリーは禁止だって何度も──」
川島ひなた「センセー俺のことホンット好きだね」
松岡先生「どうしてそうなる!」
川島ひなた「だって パッと見じゃ分かんないもん」
川島ひなた「俺のことよく見てる証拠でしょ」
川島ひなた「スッゴク愛されてるって感じ♡」
松岡先生「・・・川島、お前なぁ」
佐藤リサ「先生、 うちのクラスの課題ノート──」
川島ひなた「じゃ、センセ またホームルームで!」
松岡先生「あ、コラッ!」
松岡先生「・・・ハァ」
松岡先生「すまんな佐藤 一人で重かったろ?」
佐藤リサ「全然! 平気です」
松岡先生「ったく、アイツは本当・・・」
佐藤リサ(・・・)

〇学校の廊下

〇教室
松岡先生「──ってことで、 生徒会選挙が近いワケだが」
松岡先生「出たいやついるか?」
佐藤リサ(ついに来た・・・)
由紀「うちのクラスは 最初から決まってるよね」
茜「一年の頃から 張り切ってたもん」
健太「期待してるぜぇ りっちゃん!」
佐藤リサ「わたし、立候補します」
松岡先生「よし、決まりだな」
松岡先生「他にいないか? あと一枠空きが──」
川島ひなた「ハイッ! 僕も出ます♡」
由紀「本気!?」
健太「いいじゃん! 面白ぇ!」
茜「川島が生徒会? あり得ないって」
川島ひなた「ちょっと君たち! 拍手拍手!」
川島ひなた「よーし、決定!」
松岡先生「待て、川島 お前は他にやることが・・・」
川島ひなた「りっちゃんと共にがんばりますので どーぞヨロシク!」

〇白い校舎

〇開けた交差点
由紀「にしてもビックリしたぁ」
茜「川島でしょ? ふざけすぎだよアレは〜」
由紀「でも意外とイイ線いったりして」
茜「ないない!」
由紀「ないか〜!」
佐藤リサ「あるんじゃない?」
「あるの!?」
佐藤リサ「結局、人気投票みたいなもんだからさ」
佐藤リサ「川島、明るいし顔もいいし しゃべるのも上手いし」
佐藤リサ「演説でみんなの心つかんでさ、 そのまま会長コースじゃない?」
「・・・・・・」
茜「アハハッ! りっちゃんさては焦ってるな?」
佐藤リサ「・・・へへ、バレた?」
由紀「おどかさないでよ〜」
茜「たしかに予想外だったけどさ 川島なんて敵じゃないって」
由紀「そうそう! 会長はりっちゃん以外あり得ない!」
佐藤リサ「も〜やめてよ二人とも〜」

〇綺麗な一戸建て

〇おしゃれなリビングダイニング
佐藤リサ「でね、今日学校で──」
佐藤ユリ「ただいま〜っ」
佐藤リサ「お姉ちゃん」
佐藤恵子「ご飯、すぐ用意できるから」
佐藤ユリ「いらない!」
佐藤典道「もう出るのか」
佐藤ユリ「大事な資料が見つかんなくて」
佐藤恵子「体壊すわよ」
佐藤典道「あんまり無理するな」
佐藤ユリ「わかってるって」
佐藤ユリ「ええと 確かここに・・・」
佐藤ユリ「ん? 何だっけコレ」
佐藤恵子「ああ、生徒会の」
佐藤ユリ「え? うわ、懐かしー!」
佐藤典道「父さんが切り抜いておいたんだ」
佐藤ユリ「アハハ、そうだったの?」
佐藤恵子「生徒会長だった時よね」
佐藤ユリ「この頃も忙しかったなぁ」
佐藤リサ「・・・わたしも!」
佐藤ユリ「ん?」
佐藤リサ「わたしも── 立候補しようと思ってて」
佐藤ユリ「何の話?」
佐藤リサ「生徒会」
佐藤リサ「みんな応援してくれてて・・・ りっちゃんなら会長になれるって」
佐藤ユリ「リサには無理だよ」
佐藤ユリ「人前に立つの苦手でしょ? 向いてないよ」
佐藤恵子「リサはいつもお姉ちゃんの後ろに 隠れてたから」
佐藤典道「人には向き不向きってものがあってな」
佐藤リサ「・・・」

〇女の子の一人部屋
佐藤リサ(無理・・・なのかな)
佐藤リサ(・・・)
佐藤リサ(無理じゃ、ないよね・・・?)

〇白い校舎

〇体育館裏
川島ひなた「りっちゃんみっけ!」
佐藤リサ「川島・・・」
川島ひなた「アレレ? いつものりっちゃんスマイルは?」
佐藤リサ「売り切れ中」
川島ひなた「アッハハ、レアじゃん ラッキー♡」
佐藤リサ「用がないなら行くけど」
川島ひなた「立候補者は体育館に集合だってさ」
佐藤リサ「そっか、 演説の予行・・・」
川島ひなた「うん! 一緒に行こ♡」
佐藤リサ「ねぇ川島」
川島ひなた「ん?」
佐藤リサ「川島はどうして立候補したの?」
川島ひなた「俺も聞きたかったんだ」
川島ひなた「りっちゃんはなんで生徒会に入りたいの?」
佐藤リサ「・・・質問に答えて」
川島ひなた「いいよ 立候補した理由はね・・・」
川島ひなた「・・・教えなーい!」
佐藤リサ「あぁそう」
川島ひなた「あれ、りっちゃん?」
川島ひなた「怒ったの? ウソウソ冗談、待って──」

〇学校の体育館
生徒会役員「そろいましたね」
生徒会役員「それでは 1組からお願いします」

〇体育館の舞台
川島ひなた「僕がめざすのは──」
佐藤リサ(すごい)
佐藤リサ(思ってた通りだ)
佐藤リサ(上手い、だけじゃない)
川島ひなた「ここにいるみんなが 自分らしくいられるような場所を──」
佐藤リサ(心の奥に触れるみたいな・・・)
佐藤リサ(ダメ、 勝てない・・・)

〇黒背景
佐藤リサ(手が・・・震える)
佐藤リサ(足も・・・)
佐藤リサ(やっぱり、無理なんだ)
佐藤リサ(わたしには出来ない・・・)

〇生徒会室
川島ひなた「りっちゃん?」
川島ひなた「大丈夫? 体調悪い時はすぐ言いな?」
佐藤リサ「私・・・出るのやめようかな」
川島ひなた「何言ってんの!」
川島ひなた「今日のはたまたまでしょ? りっちゃんなら心配ないって」
佐藤リサ「・・・ずるいよ」
佐藤リサ「どんな気持ちで立候補したか知らないけど」
佐藤リサ「川島には必要ないでしょ?」
川島ひなた「どういう意味?」
佐藤リサ「川島はありのままでみんなから愛されてる」
佐藤リサ「私は・・・」
佐藤リサ「“テストで一位”とか」
佐藤リサ「“生徒会長”とか」
佐藤リサ「そういう“アクセサリー”がないとダメなの」
佐藤リサ「不安なの」
佐藤リサ「バカみたいでしょ・・・」
川島ひなた「──」
佐藤リサ「え?」
川島ひなた「俺のピアス りっちゃんにあげる」
佐藤リサ「アクセサリーって そういう意味じゃ・・・」
川島ひなた「俺 りっちゃんを追いつめるために 立候補したんじゃないよ」
川島ひなた「りっちゃんに近づきたかった」
川島ひなた「生徒会に入れば もっと一緒にいられるのかなって」
佐藤リサ「・・・」
川島ひなた「いつだったかな」
川島ひなた「りっちゃんが教壇に立ってる時 手が震えてんのが見えて」
川島ひなた「ああ、この人 闘ってたんだ」
川島ひなた「カッコいいなって」
佐藤リサ「──」
川島ひなた「俺、りっちゃんについてる アクセサリーが 好きな訳じゃないよ」
川島ひなた「弱くてカッコいいりっちゃんが好き」
佐藤リサ「・・・」
佐藤リサ「・・・っ」
  川島の
  バカみたいに明るい笑顔を見た途端
  涙が止まらなくなった
  日が暮れるまで
  私はピアスをにぎりしめて泣いた

〇空

〇散らかった職員室
松岡先生「川島ァ!」
松岡先生「・・・って、アレ?」
川島ひなた「残念でした♡」
  あれ以来、
  川島はピアスをつけなくなって
松岡先生「やっぱり生徒会に選ばれると違うな」
川島ひなた「・・・へへ」

〇体育館の舞台袖
  川島のピアスは
  私のお守りに変わった
アナウンス「生徒会長挨拶」
佐藤リサ「はい!」
川島ひなた「りっちゃん!」
  ピアスをポケットにしのばせて
  
  今日も私は
  ここに立っている
  『りっちゃんのピアス』
  終わり

コメント

  • 心に響くとても良い話でした!!( ;;)
    言葉の使い方がとても上手で感動です!!( ;;)

  • あれ?ピアスをつけてるのは川島君の方なのに?という疑問からの、ラストのタイトル回収――とても素敵でキュンとするお話でした^^
    主人公の葛藤もとても共感でき、もし自分にも一票あれば、リサちゃんに投じたくなりました!笑

  • 分相応で良いよ、って慰めも時には辛いモノなのでしょうね。
    それでも足掻いたからこそ彼の目に留まり、そのおかげで目標を越える成長ができたのかも。
    彼とか、彼女とかではなく、成長の物語にキュンとしました。

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