罰を与える神様です

やぐう四季

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〇神社の石段
  はぁ、どうしよう・・・
  財布と携帯盗まれちゃった。
  バッグに穴が開いてるし、
  これって、スリだよね
  この間は買ったお弁当に虫が入っていたし
  最近ツイてないな・・・
「どうされました?」
ミナト「こんな雨のなか座り込んで。 風邪をひいてしまいますよ?」
  あっ、いえ、なんでもないです
  (かっこいい人だな)
ミナト「嘘はおやめなさい。 若い女性がこんなところで ずぶ濡れになって何もない わけがないでしょう」
ミナト「力になれるかもしれませんから、 何があったのか話してみてください」
  実は・・・
  私は財布と携帯をすられたことを話した。
ミナト「なるほどなるほど。 それはちょうどいい」
  (ちょうどいい・・・?)
ミナト「その盗人に、 私が罰を与えて差し上げましょう」
ミナト「あ、私、神様だって言ったら信じます?」
  ??
  信じないです
ミナト「ですよね。 ま、いいでしょう。 とりあえず私のことはミナトと 呼んでください」
ミナト「大丈夫、財布と携帯は必ず 取り返しますから。 さあ、立って」
  私は促されるまま、
  彼の手を取り立ち上がった。
  ふと彼を見上げたとき──
ミナト「ちゅ──・・・」
  ??
  なんだろう、とても柔らかくて
  切ない何かが
  ゆっくりと離れて行った
  いいいいいいい今、キスしました?!
ミナト「さ、行きましょう。 駅の方ですよ」
  この人何なの?!
  気づくとミナトさんは
  何事もなかったように背を向けて
  歩き出していた。
  (本当について行っていいのかな・・・)
  でも、他にできることないし、
  行くあてもない。
  彼は駅に行くと言っていた。
  人通りの多い場所であれば、
  何かされることもないだろう。
  私は戸惑いながら、
  彼の背中を追いかけた。

〇駅前広場
  (この人、絶対おかしい・・・!)
  ミナトさんはゆったりとした足取りで、
  駅前の方に歩いていく。
  私は彼を後ろからじっくり観察した。
  言動はおかしいし、
  いきなりキスしてくるし、
  それに何より──
  (こんなに雨が降っているのに、
  服が濡れてない)
ミナト「どうかしましたか?」
  い、いえ!
  なんでもないです!
ミナト「そうですか」
  微笑むミナトさん。
  どうしてこんな嬉しそうなんだろう
ミナト「あ、いましたよ。 あいつがあなたの財布を持っています」
  えっ、なんで分かるんですか?
  ミナトさんが指差した男は手ぶらだ。
  もし何か見えたとしても、
  私、財布の特徴教えてないよね?
ミナト「ほほいのほい、と」
  ミナトさんが手にした扇子を
  軽く一振りした。
  キラっと光って見えたのは
  気のせいだろうか。
スリ「あっ・・・!?」
  歩いていた男が、何かに躓いて
  盛大に転んだ。
  (痛そう・・・)
  ミナトさんが倒れた男に近寄って
  尻ポケットから財布と携帯を取り出す。
  それ私の・・・!
  本当にこの男が盗んだんだ。
  どうして分かったんだろう。
  それに、男を転ばせたのって、
  多分ミナトさんだよね・・・
ミナト「さ、ここから離れましょうか」
  しばらくして立ち上がった男が
  恐い顔で辺りを見回している。
  財布と携帯を取り返したことには
  まだ気がついていないようだ。
  私はいちもにもなく頷いた。

〇旅館の和室
  ミナトさんって、本当に
  神様なんですか・・・?
  私たちは話をするため、
  近くにある旅館に来ていた。
  私は雨でびしょ濡れなのに、
  ミナトさんは少しも濡れていない。
  私は好奇心を抑えられず、
  きいてみることにした。
ミナト「はい」
ミナト「私は、悪いことをした者に罰を与える 神様なんです」
  じゃあ、どうして神様が私なんかを
  助けてくれたんですか?
ミナト「それは・・・」
ミナト「以前、何も悪いことをしていない あなたに、間違って罰を与えて しまいまして・・・」
ミナト「ほら、1週間ほど前、あなたが購入した お弁当に虫が入っていたでしょう。 あれです」
  あ! あれ、ミナトさんの
  仕業だったの?!
ミナト「はい、申し訳ありません・・・」
ミナト「それで、次にあなたが悪いことをした時に 罰を与えないことで、 帳消しにしようと思ったのです」
ミナト「私は罰を与えることしかできない 神様なので・・・」
ミナト「ですが、あなたがまったく悪いことを しない『いい子』だったものですから、 なかなか機会がなくて」
ミナト「こうして姿を現すことにしたのです」
  そうだったの・・・
  信じられないことは多いけど、
  つじつまは合う。
  だけど・・・
  あれ?
  ひとまず、あなたの言うことは信じます
  でも、さっきキスしたのは
  どうしてですか?
ミナト「それは・・・」
ミナト「あなたの心の美しさに惹かれ、 やっと会えた嬉しさで・・・ ・・・・・・つい」
  『つい』って・・・
  なんだか変な感じ。
  神様だって言うのにしゅんとして、
  邪気がまったく感じられなかった。
  ふふっ
  どうしても悪い人に見えない。
  本当なら警戒しなきゃいけないのに、
  私はいつのまにか笑い声を漏らしていた。
ミナト「どうかしましたか?」
  ふふ、ごめんなさい。
  神様って、意外と自由なんだなって
ミナト「・・・・・・」
  どうしました?
ミナト「キス、したくなりました」
  だ、駄目ですっ!
  近付いてくるミナトさんを
  なんとか押しとどめる。
ミナト「かわいい」
  なっ・・・!
ミナト「次は隙をついて襲うことにします」
  駄目ですって!
  この日以来、私はこの自由な神様に
  なにかと困らされることになるのだが、
  それはまた別の話。

コメント

  • 突然に目の前に現れて「神様です。」と言われてみたり「手にキスされてみたり」なんてびっくりしますよね、でもいい神様でよかった。

  • 罰を与える神様がいるなら、幸福を与える神様もいるのかなぁなんて思いを巡らせながら読みました。突然すぎる自由奔放な神様からのキス、神様も恋に落ちるんですね♪

  • 神様って漠然ともっと厳かなイメージだったのですが、こんな自由気ままな神様も良いですね!しかもヒロインに恋しちゃうなんて(笑)
    冒頭のキスはヒロインの記憶を探るためかと思いきやまさかの衝動だったとか……可愛いですね❤
    こんな神様に私も出会いたいので、ずっと「いい子」でいられるよう努めますね(笑)

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