好きな人に彼氏ができました

空木切

エピソード1(脚本)

好きな人に彼氏ができました

空木切

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〇おしゃれなレストラン
  昼間。レストラン
宇佐美ユイ「合格おめでとう!」
宇佐美ユイ「同じ大学に進学するなんて、知らなかった」
瀬田ミナト「言ってないし。しばらく会ってなかっただろ」
宇佐美ユイ「本当に久しぶりだよね!今日は私が奢るから、たくさん食べて!」
宇佐美ユイ「入学式まですぐでしょ?困ったことはある?大学まで付き添ったりとか」
瀬田ミナト「やらなくていい!飯代も自分で払う!」
瀬田ミナト「一つしか違わないのに、いつまで姉気取りなんだよ」
宇佐美ユイ「えー。お姉ちゃんでいたいのにー。寂しいじゃん」
瀬田ミナト「俺は弟じゃない!よく見ろ!昔とは全然違うだろ!」
宇佐美ユイ「・・・確かに」
宇佐美ユイ「ちょっと会わないうちに、かっこよくなったよね」
瀬田ミナト「そ・・・そうだろ?」
瀬田ミナト「いつまでも弟扱いしてたら後悔するぞ」
宇佐美ユイ「もう大学生だもんね〜。大きくなった〜」
瀬田ミナト「今度は子供扱いすんな!」
宇佐美ユイ「あはは、ごめん。久々に会えたから嬉しくてつい」
宇佐美ユイ「それにしても、一年くらい会ってなかったよね。受験、そんなに大変だったの?」
瀬田ミナト「普通だ。他にやりたいこともあったし」
瀬田ミナト(・・・そう。一年間、会うのを我慢してた)
瀬田ミナト(しばらく離れていれば、俺を見る目も変わると思ったから)
瀬田ミナト(でも、全然変わってない。相変わらず弟扱いだ)
瀬田ミナト(その上)
瀬田ミナト(離れてる間に)
瀬田ミナト(彼氏が・・・できて・・・)
瀬田ミナト「はあ・・・」
宇佐美ユイ「大丈夫?疲れちゃった?」
宇佐美ユイ「帰るなら家まで送るからね」
瀬田ミナト「別に、なんともない」
瀬田ミナト「それより、彼氏できたんだって?」
瀬田ミナト「どんなやつ?背は高い?年上か?」
宇佐美ユイ「え!何でその話・・・」
宇佐美ユイ「み、ミナトにはあまり関係ないし、もっと他の話を・・・」
瀬田ミナト「何ではぐらかすんだ」
瀬田ミナト「俺より背は高いのか?どんなやつなんだよ。少しくらい教えてくれたっていいだろ」
宇佐美ユイ「うーん・・・」
宇佐美ユイ「背は、ミナトと同じくらいかな?年上で、すごく優しい人だよ」
宇佐美ユイ「はい、この話はおしまい!・・・あのね、大学の──」
瀬田ミナト(あー・・・)
瀬田ミナト「ああ~・・・」
瀬田ミナト(何か喋ってるけど何も頭に入ってこない・・・)
瀬田ミナト(彼氏はいない、勘違いだって、言うかと)
瀬田ミナト(嘘だよって笑い飛ばしてくれるかも、とか)
瀬田ミナト「はは・・・」
宇佐美ユイ「え?今笑うところだった?」

〇大学の広場
  別の日。大学内
瀬田ミナト(気になって来てしまった・・・)
瀬田ミナト(会える保証もないのに)
瀬田ミナト「・・・いた!」
瀬田ミナト(男と歩いてる。あれが彼氏か?)
瀬田ミナト「何やってんだ俺・・・」
瀬田ミナト(でもあの男、どう見ても俺より背低くないか?)
瀬田ミナト(背が高い人が好きって昔言ってたくせに)
瀬田ミナト(・・・成長すれば好みも変わるか。そうだよな)
瀬田ミナト(昔のままだと思ってるのは俺も同じか)
瀬田ミナト(楽しそうに笑ってる・・・。あいつが幸せなら、俺は)

〇テラス席
  三か月後。カフェにいる二人
宇佐美ユイ「大学生活は慣れた?」
宇佐美ユイ「せっかく同じ大学に通ってるのに、全然会わないよね」
瀬田ミナト「まあ、色々忙しくてさ」
瀬田ミナト(気持ちに整理がつくまで、会わないように避けてるだけなんだけどな)
瀬田ミナト(いつまで経ってもなかなか・・・)
瀬田ミナト(会って顔見ると、やっぱり駄目なんだよなあ)
瀬田ミナト(いっそ好きだって告白して、潔く振られた方がいいかもしれない)
瀬田ミナト「・・・あ、のさ」
宇佐美ユイ「どうしたの?真面目な顔して」
瀬田ミナト「俺、ずっと・・・」
瀬田ミナト「俺・・・」
瀬田ミナト「・・・」
瀬田ミナト「あのさ」
瀬田ミナト「俺のこと、どうしたら好きになってくれる?」
瀬田ミナト「お前にとっては、弟にしか見えないだろうけど・・・」
瀬田ミナト「年下だけど、ちゃんと対等に見て欲しい」
瀬田ミナト「お前に好きな人がいるのも、分かってる」
瀬田ミナト「分かってても、やっぱり諦めきれなくて」
瀬田ミナト「ずっと好きだったから」
瀬田ミナト「どうすれば俺のことも見てくれる?」
瀬田ミナト「俺は、お前の彼氏ほどかっこよくはないと思う・・・でも好きな気持ちは、一番だって自信ある」
瀬田ミナト「だから・・・って」
瀬田ミナト「何でそんなに顔を真っ赤に・・・?」
瀬田ミナト「恥ずかしい?何が」
瀬田ミナト「・・・」
瀬田ミナト「はあ!?嘘ぉ!?」

〇川沿いの公園
  ──三十分後。カフェを出た二人
瀬田ミナト「・・・彼氏がいるってのは嘘だったのか」
瀬田ミナト「最初は両親に見栄を張るために言って、引っ込みがつかなくなって俺にも」
瀬田ミナト「・・・こういうこと、言っていいのか分かんないけど」
瀬田ミナト「よかったあぁぁ~・・・」
宇佐美ユイ「嘘吐いてごめんね。そんな風に想ってくれてたなんて知らなくて」
宇佐美ユイ「一年ぶりに会ったら、ミナトがすごく大人になってたから。焦っちゃって、嘘って言えなくて」
瀬田ミナト「いいよもう。かっこつけたかったんだろ」
瀬田ミナト「お前にとって俺は弟だもんな」
瀬田ミナト「・・・昔、弱虫だった俺の手を引いてくれたのは。近所に住んでる一つ年上の”お姉さん”だった」
瀬田ミナト「それからずっとお前は”お姉さん”で、俺は弱虫な弟だ」
瀬田ミナト「あれから何年も経った。今もまだ、俺は弱虫の弟のままか?違うよな」
宇佐美ユイ「・・・うん」
瀬田ミナト「俺はもう、手を引いてもらわなくても歩ける」
瀬田ミナト「これからは一人で立派に・・・とか言えれば、かっこよかったんだけどな」
瀬田ミナト「俺はその、一つ年上のお姉さんに恋をしたんだ」
瀬田ミナト「一緒にいてホッとする気持ちが、嬉しい気持ちが、形を変えて・・・好きになってた」
瀬田ミナト「いつからかは覚えてないんだ。気付いたら好きになってて、そこからすごく長い」
瀬田ミナト「弱虫だったから、告白もできなくてずるずると」
瀬田ミナト「お姉さんだからって構ってくれるのは嬉しかったけど、ずっと苦しかった」
瀬田ミナト「それなのに、急に彼氏できたとか聞いて」
瀬田ミナト「すげー情けない告白を・・・」
瀬田ミナト「・・・」
瀬田ミナト「と、とにかく!」
瀬田ミナト「俺の好きって気持ちは、誰にも負けない」
瀬田ミナト「誰よりも長くお前を見てきたし、良いところもたくさん知ってる」
瀬田ミナト「・・・可愛いところも」
瀬田ミナト「返事はゆっくりでいいから」
瀬田ミナト「ちょっとずつ、俺のこと意識して」
瀬田ミナト「次は恋人として、手を繋げたら嬉しい」

コメント

  • ミナトの弱虫な心情がそれだけで可愛くて(笑)、切なくて、なんだか胸にジンときました。ミナトが彼らしく告白できて良かったです!本当、すれ違わなくて良かった……
    ラスト、男らしく決めたミナトにキュンとしました!
    素敵なお話をありがとうございました(^^)

  • 幼いときは頼りないというか精神年齢低めの男の子って、あるとき急に男らしく頼もしくなりますよね。突然こんな真剣に告白をされたら、それ以降どんどん意識してしまいそうです。

  • 幼なじみからの恋愛って、簡単なようで実は難しいんじゃないかと思うんです。
    姉弟みたいに思われてると思うと…って彼の気持ちもよくわかります。
    でも、無事ハッピーエンドでよかったです!

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