1.バイトを始めた理由(脚本)
〇名門の学校
わたしには最近、悩みがある。
それは――。
「カズミちゃん!」
カズミ「ど、どうして学校までバレているの!?」
ハク「カズミちゃんはおいしそうな匂いだから、すぐわかるワン!」
カズミ「おいしそうって・・・・・・」
このように、ずっと動物たちにつきまとわれている。しかも、ただの動物ではない。
この子たちは魔術で使われる使い魔で、食べものではなく魔力をエネルギー源としている。
わたしは人より魔力が多いらしく、この子たちにとっては格好のエサだ。
シズカ「そろそろ、バイトする気になったかニャ?」
カズミ「だから、それは嫌なんだってば!」
わたしは走って逃げだした。
〇開けた交差点
カズミ「ここまで来れば、大丈夫かな?」
あの使い魔たちは、動物喫茶もふもふというところで飼われている。
そこのオーナーからバイトにスカウトされたが断ったところ、来る日も来る日も動物たちからつけ狙われている。
セイ「見つけたピ!」
カズミ「わあ!」
〇店の入口
オーナー「あれ? カズミちゃんやないか」
カズミ「オーナー!」
気がついたら、もふもふの前にいた。
ここに来るよう誘導されたようだ。
オーナー「どや、僕の店でバイトする気になった?」
カズミ「なりません! いい加減、使い魔たちをけしかけるのをやめてもらえませんか!」
オーナー「うーん。 せやけど、僕が命じたわけやないからなあ。 注意はしとくけど、あの子らが勝手に店を抜けだしてやっとることやから」
カズミ「くっ・・・・・・」
どうやら、しらばっくれるつもりらしい。
カズミ「こんなことをしても、わたしはいいなりにはなりませんから!」
オーナー「あーあ、かえってヘソを曲げてもうたかな」
〇女の子の一人部屋
カズミ「あー、やっと家に着いた・・・・・・。 そろそろ家がバレるのも時間の問題かな・・・・・・」
ツグモ「キシャー!」
カズミ「ヘ、ヘビ!?」
ツグモ「もふもふはいいところだシャー。 カズミちゃんも来るといいシャー」
カズミ「あ、使い魔か・・・・・・。 もう、勝手に家へ入ってきたらダメでしょ」
〇開けた交差点
連日の使い魔たちのストーキングで、わたしはすっかり疲れきっていた。
セイ「カズミちゃん、これから学校ピー?」
カズミ「そうだけど、ついてきたらダメだからね?」
シズカ「終わったら、もふもふに行くニャ!」
カズミ「だから、行かないってば・・・・・・ん?」
カズミ「クマ!?」
カズミ「もう、こんな使い魔まで用意して──」
クマ「ガォォォ!」
カズミ「これ、ホンモノ!? 何でこんなところにクマが!?」
セイ「カズミちゃん、逃げるピ!」
セイがくちばしで攻撃するが、クマにはまるで効いていない。
セイ「ピッ!」
カズミ「セイちゃん!」
カズミ(どうしよう、血が出ている・・・・・・)
セイ「早く逃げるピ!」
クマ「ガォォォ!」
見ると、クマがこちらに突進してくる。
わたしはセイを抱きしめて、覚悟を決めた。
セイ「ピイィィィ!」
突然の炎に、クマはたまらず逃げだした。
カズミ「セイちゃん、火なんて吐けたの!?」
セイ「ピー・・・・・・、ピー・・・・・・、あとは任せたピー・・・・・・」
シズカ「わかったニャ!」
シズカ「ニャー!」
ハク「ワン!」
シズカと駆けつけてきたハクが鳴くと、地面から木が生えてきてクマを捕らえた。
ツグモ「シャー!」
ツグモがクマの首に噛みつく。
ツグモ「麻酔の代わりシャー。 これで、何時間かは眠るはずシャー」
みごとな連携プレイだった。
カズミ「すごい! 皆んな、助けてくれてありがとう!」
シズカ「いつも魔力を分けてもらっているお礼だニャ」
ツグモ「それにカズミちゃんこそ、セイを助けようとしてくれたシャー!」
カズミ「でも、全然役に立たなかったし・・・・・・。 あ、大変! セイちゃんの手当てしなきゃ!」
〇シックなカフェ
オーナー「しっかし、災難やったなあ。 近くの動物園から逃げだしたクマと出くわすなんて」
カズミ「本当にびっくりしました・・・・・・。 オーナー、セイちゃんの手当てをありがとうございます」
オーナー「大した怪我やないから、大丈夫や」
カズミ「・・・・・・決めました。 わたし、ここでバイトします!」
オーナー「ええの? あんなに嫌がっとったのに」
カズミ「こんなわたしを、皆んなは身体を張って助けてくれました。 だから、その恩返しがしたいんです!」
オーナー「それは願ったり叶ったりや。 ほんなら、これからよろしくね」
シズカ「やったあ、これで魔力を食べ放題ニャ!」
カズミ「いや、食べ放題だと、わたしが死んじゃうからね!? ほどほどにね!?」