エピソード1(脚本)
〇屋上の入口
人気のない廊下の隅
八戸月子(に、逃げ出したいぃぃ!!)
目の前には眉間に皺を寄せたクラスメイト、御堂太陽が立ち塞がる。
八戸月子(な、なんで呼び出されたんだろ)
八戸月子(ううん、こころあたりはある。あるけども!)
八戸月子「そ、そういえば先生に呼ばれていたような」
ドンっ!!
八戸月子(ヒッ!!)
逃げようとする月子。そんな彼女の横の壁が蹴られて退路が塞がれた。
御堂太陽「なに逃げようとしてんだよ」
八戸月子「ににに、逃げるなんて。 な、なにかご用でしょうか!」
御堂太陽「お前昨日あそこいただろ」
八戸月子(やっぱり昨日のことだぁー!! そこは期待を裏切ろうよ神様!)
八戸月子(でも、そりゃそうか)
八戸月子(クラスでも目立たない私が、御堂くんに呼び出されるわけないもの)
八戸月子(だって普段の御堂くんは────)
〇教室の教壇
クラスではいつも不機嫌そうで。
友人1「たーいよう。今日も怖い顔してるね」
御堂太陽「うるせえ。ねみーんだよ」
友人2「ハハハッ! 太陽が眠いのはいつもじゃん」
友人2「それより放課後カラオケいかない?」
御堂太陽「金ないからパス。あとバイト」
友人2「ええー。最近ノリ悪くない?」
友人1「まぁまぁ、バイトならしょうがないって」
友人1「それよりカラオケなら俺と二人でどう?」
友人2「パスで」
友人1「つれー」
陽キャの友達に囲まれていて。
八戸月子(引っ込み思案な私とは正反対の人たち)
きっと一生かかわることはないだろう。
そう思いながら彼らを横目で見ていた。なのに・・・。
〇屋上の入口
御堂太陽「俺のやってたこと見てたよな」
八戸月子(そう、私は偶然見てしまった。御堂くんの裏の顔を)
八戸月子(あれは夜に家族と外食に出かけたときのこと)
〇大衆居酒屋
お父さん「同僚おすすめの店でな」
お父さん「かなり美味いらしいんだ」
お母さん「それはいいわね」
お母さん「早速入りましょう」
ガラガラガラ
扉を開けると、店内から「いらっしゃいませー!」とハキハキした声が響いてきた。
店内に進む両親。
陽キャの空気にあてられる月子。
月子は両親の影に少し隠れて後を追う。
すると、一人の店員さんが近づいてきた。
御堂太陽「いらっしゃいませー! 何名様でしょうか?」
八戸月子(えっ)
御堂太陽「こちらのお席へどうぞ!」
御堂太陽「あっ、足元の段差お気をつけください!」
御堂太陽「ご注文の際は気兼ねなくお呼びくださいね」
八戸月子(ええええーーー!!!)
八戸月子(絶対御堂くんだよね。そうだよね!)
八戸月子(あのスマイルなに!? 丁寧な気遣いなに!? ねみー、の御堂くんはどうした!)
八戸月子(気兼ねなくお呼びくださいって、むしろいつも誰かを呼び出してる側じゃないの!?)
唖然としている間に、テーブルにはぞくぞくと注文した商品が並んでいく。
お父さん「いい接客だな 月子もバイトしてみたらいいんじゃないか?」
八戸月子「あー、そうだねー」
父の言葉を軽く流した月子は、スズメようにちょびちょびと料理を口に運びながら太陽を盗み見た。
太陽はきびきびした動きで店内を動き回る。
大将「太陽、13番さまにビール2つ」
御堂太陽「はいよっ! 生2つお待たせしました!」
ワイルドなお客さま「おっ、お兄さん元気いいね。お兄さんもビール飲む?」
御堂太陽「まじっすか!」
八戸月子(えええー! ダメだよ。私たち高校生だよ!)
八戸月子(でも、御堂くんみたいな人種は普通に飲んでたりするのかも!)
御堂太陽「でも、高校生なんで2年後に奢ってください」
八戸月子(飲まないのかよ! 真面目かよ!)
御堂太陽「でも、高校生に見えないって貫禄あるってことですか? 大人っぽく見られて嬉しいっす!」
八戸月子(ポジティブゥゥ!! 真面目通り越していい子!)
ドンッ
小さなお客さま「お兄ちゃん ぶつかっちゃって、ごめんなさい」
八戸月子(はっ! 女の子が危ない!)
御堂太陽「怪我はない? 元気いいね。でも、店内は走っちゃだめだよ」
八戸月子(そんな優しい顔見たことないよ!)
女の子のお母さん「店員さんごめんなさいね」
御堂太陽「大丈夫っす いつも兄弟たちの面倒を見てるんで」
大将「こいつ妹の誕生日プレゼント買うために、最近ずっと働いてるんですよ」
御堂太陽「ちょっ、大将やめてくださいよ ちなみにぬいぐるみをプレゼントする予定です」
女の子のお母さん「フフフ」
大将「ハハハ」
八戸月子「幸せな世界ぃぃー!!」
大将「太陽、そろそろ休憩だろ まかない食べてこい!」
御堂太陽「まじっすか! 大将の飯美味いから最高っす!」
八戸月子(今日一番の笑顔ごちそうさまです!)
御堂太陽「大将! いつもありがとうございます!」
八戸月子(そして感謝の心も忘れない!!)
八戸月子(もういいよ! 認めるよ! 私が間違ってたよ!)
御堂太陽「デザート俺の好きなチョコミントアイスじゃないっすか!」
八戸月子「もう満足だよ!!」
お父さん「おっ、もう腹いっぱいなのか 今日は少食だな」
八戸月子「あっ、いや。えっと・・・」
女の子のお母さん「なら、そろそろ帰りましょうか」
八戸月子(うわーん 御堂くんのせいだ!)
〇屋上の入口
八戸月子(そう、あんなにかわいい一面を見てしまった私は、きっと消されてしまうんだ・・・)
八戸月子(だってギャップありすぎだもの!)
御堂太陽「昨日の俺の仕事見てただろ なら、もう分かるよな」
八戸月子「ヒッ」
小さな悲鳴をあげた瞬間、月子の胸にA4の紙が押しつけられた
八戸月子(こ、これは・・・・・・ バイトの募集のチラシ?)
御堂太陽「分かったよな。バイト先の雰囲気」
八戸月子「えっ?」
御堂太陽「親父さんと話してただろ? バイトしたいって」
八戸月子「あっ、あー」
八戸月子(軽く流したやつか)
御堂太陽「俺から大将に推薦しといてやるから」
八戸月子(優しさの塊!!)
八戸月子「あ、あの。一つ聞いてもいい? なんかバイトのときと雰囲気違うね」
御堂太陽「ああ、怖い顔してるから? 授業中寝ないように必死に起きてるだけだけど」
八戸月子「寝たらいいんじゃ・・・」
御堂太陽「はっ? せっかく親に通わせてもらってるのに、寝てたらもったいないだろ」
八戸月子(そんな理由反則でしょ! もはや君に興味しかないよ!)
八戸月子「せっかくだしバイトしようかな」
御堂太陽「おお、バイト頑張ろうぜ」
八戸月子(もっと、君の裏の顔を見てみたくなったよ!)
太陽くんめっちゃいい子!
月子ちゃんの「幸せな世界ぃーー」に首を縦に振りまくりました!
見た目だけで人を判断しちゃダメですね。
二人はこれからバイトを通して……なんて妄想広がってしまいました~!
太陽くんいい人すぎ!
なんか彼女と同じツッコミを入れてしまいそうになります!
最初「黙っててくれ」って言われるのかな?」と思ってたんですが、まさかの一緒にバイトをしよう!でキュンしました!
太陽君、いい人過ぎ!!!
面白かったです!!