イシヒカル

midoriboshi

イシヒカル(脚本)

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〇見晴らしのいい公園
  「いい天気でよかったね」
  そう言った彼の笑顔、春になれば、しばらくは見られなくなる。
  イタリアへ留学するからだ。

〇見晴らしのいい公園
  彼の夢はアクセサリーデザイナー。そのための大事な一歩。
  悲しむところを見せて、邪魔をしたくない。

〇見晴らしのいい公園
みのり「お弁当作ってきたから、楽しみにしてて」
  何とかほほえんでみせる
アキト「やった!なあ、スパゲッティサラダある?」
みのり「あるよ」
アキト「あれ、俺好きなんだよなー」
  とたんに上機嫌になる。わかりやすい。
アキト「ベンチがある!あそこで食べようぜ」
  早く早くと、駆けだして行ってしまった。
  子犬とさんぽしてるみたいだ。思わず苦笑する。

〇見晴らしのいい公園
  街一面が見わたせる、絶好の位置にあるベンチで、
  私たちは少し遅いランチを取ることにした。
アキト「やっぱりみのりのサラスパ最高!」
みのり「ありがと」
アキト「自分でも作ってみるんだけど、どうしても この味にならないんだよなー、なんか隠し味とか あるの?」
みのり「ええ?別にふつうだよ?マヨネーズと塩コショウだけ」
アキト「ほんとに?」
  なんでだろうな、と不思議そうな顔の彼。
  こんなたわいもない会話が、かけがえのないものなんだと、
  今、思う。
みのり「本当においしそうに食べるよね」
  そんな内心を悟られないように、
  作った甲斐があるよ、と笑って見せる。
アキト「けど、もうすぐ食べられなくなるんだよな」
みのり「アキト・・・」
  神妙な顔で、それでもお弁当を食べ終えた彼。
  食後のお茶を手に抱えて、一瞬ためらいを見せた後、
  こちらを見つめてくる。
  真剣な眼差し。
  今年の秋には、イタリアに出発してると思う
  !
  面と向かって、告げられた。
アキト「その前に、伝えたいことがある」

〇見晴らしのいい公園
アキト「お前が好きだ」
アキト「離れてしまうけど、あきらめられない」
アキト「ジュエリーデザイナーになれた、その時には」
アキト「俺と結婚してくれ」
アキト「一生のパートナーはお前しかいない」
みのり「アキト・・・」
アキト「急にごめん、びっくりさせたよね」
みのり「ううん、うれしい」
  涙がひとしずくこぼれる。
アキト「じゃあ、返事は・・・」
みのり「イエス、だよ」
アキト「・・・ありがとう」
  満面の笑顔。この顔を見てるだけで、こっちまで
  幸せになる。
アキト「そうだ、これ」
  ごそごそとポケットから何かを取り出す。
アキト「プレゼント、受け取って」
みのり「何?」
  渡されたのは小さな箱。開けてみると、
みのり「!これって」
  指輪。台座には緑青色の石がはめてある
アキト「ターコイズ。お前の誕生石だろ?」
みのり「覚えててくれたんだ・・・」
アキト「キラキラじゃないけど、深みがある色で、 好きだなって、お前言ってただろ?」
アキト「その言葉で、俺もこの石好きになった」
みのり「ひょっとして、この指輪って」
アキト「うん、俺が作った」
アキト「婚約指輪だよ」
アキト「一人前になったその時は」
アキト「結婚指輪を贈るから」
アキト「それまで待ってて」
みのり「わかった。楽しみにしてるね」
  彼がくれた、思いの指輪。
  透明じゃないけど、私にはまぶしく光る。
  彼の意志が開く世界。そのとなりに、
  いつまでも一緒にいられるように、そう願う。
  私のイシも光っていた。

コメント

  • 読んでいて爽やかな幸せを運んでくれるお話ですね。大好きな彼からの夢の結晶のような贈り物に愛を感じるだけでなく、未来への希望も感じられて素敵な余韻が残りました。

  • しばらくは離ればなれになりますが、きっと彼なら迎えにきてくれますよね。
    素敵な指輪だなぁと思いました。
    好きな石をはめこんだ手作りとか、キュンします。

  • すごくストレートで、まっすぐなストーリーで、読んでいてなんだか気持ちよかったです。こんな青年なら、きっととても素敵なジュエリーを作ってくれると思います。

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