精一杯ボーイフレンド

Akiyu

エピソード1(脚本)

精一杯ボーイフレンド

Akiyu

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〇男の子の一人部屋
  俺には付き合っている彼女がいる。
  ・・・というか付き合わされている。
  彼女はとてもわがままだ。彼氏が欲しいけどいないから彼氏ができるまで彼氏役をやれというのだ。
  そんな事になったのも俺が彼女の幼馴染なせいだ。だからそんな俺は、精一杯ボーイフレンドを演じているのである。
あっくん「今日はどこ行こうか」
彼女「たまには自分から決めてきてよ」
あっくん「ええー、でも君の行きたいところに行かないと怒るじゃないか」
彼女「私が怒らないようなところに連れて行ってくれたらいいんじゃないの」
あっくん「そんな事を言っても・・・」
あっくん「じゃあ買い物なんてどう?服とか見ようよ」
彼女「買ってくれるの?」
あっくん「え、いや。そんなにお金ないよ」
彼女「何よ。見るだけなんてイヤよ」
あっくん「ほら。やっぱり・・・」
彼女「もっと私をキュンッとさせてみなさいよ」
あっくん「・・・・・・」
  本当に彼女には困らされる。そもそも俺は、今まで誰かと付き合った事がないのだから、女の子の扱い方なんて分からない。
  キュンとなんてさせられるか。
  今まで色んな女の子から告白されてきた。
  でもよく知らない女の子ばかりだった。隣のクラスとか年下の女の子とか。
  好きでも嫌いでもないよく分からない女の子と付き合うなんて器用な真似、俺にはできるはずもなかった。
  だから唯一話せる女の子である幼馴染の彼女が彼氏役をやって欲しいと頼んできた時は、軽く了承したのだ。

  翌週の休日。

〇男の子の一人部屋
あっくん「今日はどうしようか?」
彼女「カフェでお茶したい」
あっくん「わかったよ」

〇テーブル席
彼女「んー、美味しい!!」
彼女「やっぱりここのケーキは絶品ね!!」
あっくん「そんなに急いで食べたら太るぞ」
彼女「イヤなこと言わないでよ。女の子に言う台詞じゃないわよ」
彼女「ねえ。そのモンブランも一口頂戴」
あっくん「スルーかよ」
あっくん「まあいいよ。ほら。どうぞ」
彼女「違うわよ」
彼女「あーんってしてよ」
彼女「その方が恋人っぽいでしょ?」
あっくん「いや・・・さすがに恥ずかしいな」
彼女「早くしてよ。口開けっ放しだから顎が疲れるじゃない」
あっくん「わ、わかったよ・・・。全く・・・」
あっくん「あーん」
彼女「あーん」
彼女「えへへ。美味しい」
  ドキッとはしない。幼馴染で昔から一緒にいる仲だから。
  このシチュエーションが他の女の子ならドキッとするんだろうけど・・・。

  翌週の休日。

〇男の子の一人部屋
あっくん「今日はどうする?」
彼女「海に行きたい。それでいいでしょ?」
あっくん「はいはい・・・」

〇海辺
彼女「んー、潮風が気持ちいい。来て良かったわ。あっくんもそう思うでしょ?」
あっくん「ん、まあな。気持ちいいな」
彼女「波音を聴いてると落ち着く」
あっくん「綺麗だな」
彼女「ねえ。なんかロマンチックな事言ってよ」
あっくん「ええ。そんなの分からないよ」
彼女「何よ。私をキュンッとさせてみなさいよ」
あっくん「んんー・・・ダメだ。やっぱり良い台詞が出てこない」
彼女「ほんとダメね。海よりも君が綺麗だよとかあるでしょ」
あっくん「そんなキザな台詞、漫画でも最近言わないぞ」
彼女「多少はキザなくらいの台詞の方がキュンッと来るのよ」
あっくん「そんなもんなのか」
彼女「勉強になったでしょ?感謝しなさいよ」
あっくん「はいはい。ありがとうございますよっと」

  翌週の休日。

〇男の子の一人部屋
あっくん「今日は何したい?」
彼女「教室で二人っきりのデートがしたい」
あっくん「は?何それ。今日学校休みだろ」
彼女「だからいいのよ。誰もいない教室に忍び込むのよ」
あっくん「部活やってる人はいるよな?」
彼女「皆外に出てるから誰もいないわよ」
あっくん「そういうものなのか?」
彼女「夕方の教室で二人っきり。そういうのに憧れてるの」
あっくん「分からないな。教室で二人っきりなだけで何がいいのか」
彼女「ほんと女心が分からないのね」
あっくん「分かってたら俺にも彼女の一人くらいできるって」
彼女「だよね。あっくんに同意を求めようとした私が馬鹿だったわ」
あっくん「何なんだよ・・・」

〇教室
  誰もいない夕方の教室。
  グラウンドでは練習する野球部員達の声が聞こえる。
  静かな教室。
あっくん「それで?二人っきりの教室で何するの」
彼女「他愛もない話をするの」
あっくん「他愛もない話・・・ね」
彼女「それから良い雰囲気になって、恋人らしくキスするの」
あっくん「えっ?キス?しないぞ」
彼女「キスする振りでいいのよ。私だって初めては好きな人がいいもの」
あっくん「キスする振りって・・・。さすがに恥ずかしい・・・」
彼女「やりなさいよ」
あっくん「あー、もう。・・・ったく。わかったよ」
  俺は彼女に顔を近づけた。
あっくん「どう?これでいい?」
彼女「全然ドキドキしないわ」
あっくん「ほら見ろ」
彼女「相手が悪いのかな」
あっくん「今更?」
彼女「もっと私をキュンッとさせてみなさいよ」
  俺はついに我慢の限界を迎えて不満が一気に爆発した。
あっくん「いい加減にしろ!!いつもいつもわがままばっかり!!俺以外の男、どうせ誰も君の事なんて見てくれない!!」
あっくん「だから俺がずっとそばにいてやるしかないんだ!!」
彼女「今のキュンとしたかも」
あっくん「えっ!?なんでそんなっ・・・んぐっ・・・」
  そう言うと彼女は、俺の唇にキスをした。
彼女「責任取ってよね」
あっくん「・・・せ、精一杯頑張るよ」
  その日、俺達は誰もいない二人っきりの教室で本物の恋人になった。

コメント

  • 素敵です!思わずキュンキュンしてしまいました!

  • ワガママな幼馴染みに振り回されながらも、なぜか頑張っちゃう彼が可愛かったです(^^)
    素直な気持ちが一番相手をキュンとさせるのかもしれないですね。

  • なんだかとってもお似合いの2人ですね!
    確かに言われてキュンとさせてよ!ってのは中々難しそうではありますが…。シチュエーションや雰囲気によっては慣れた2人でもキュンとすることも多そうです!

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