EP1(脚本)
〇オフィスのフロア
桜田ァ!
係長「クライアントからクレームだ!担当お前だろう?!」
係長「まだ納品していないとはどう言うことだ!早急に確認しろ」
桜田桃子「も、申し訳ございません!今すぐ・・・」
係長「そもそも報・連・相ががなっていないからこうなるんだ」
係長「社会人としての意識が足りていないんじゃないか? 大体前にも──・・・」
「あの──」
???「お話し中に失礼いたします 営業の藤崎です」
藤崎「係長今よろしいですか? 確認したいことがあるのですが」
係長「ああ藤崎くんか 少し待っていてくれ」
係長「いいか、桜田くんこれ以上手を煩わさないでくれ 後は頼むからね」
桜田桃子「大変申し訳ございませんでした」
藤崎「──・・・」
〇広い公園
あれから必死に対応こそしたものの
係長の怒号で始まった朝から気分が晴れることはないままで
会社の近くにある公園へ無意識に足を運んでいた
桜田桃子(係長だって最終チェックしているのだから納期日なんて知っているはずなのに)
桜田桃子(確かに担当は私だけどさ・・・)
帰りを知らせるチャイムは既に鳴っていたようで、昼間とは打って変わって公園は閑散としていた
〇公園のベンチ
子供達の代わりにベンチにいたのは香箱座りでくつろぐ一匹の猫
誰もいなくなった今、このテリトリーは猫ちゃんのものなんだろう
(実家で飼っている猫に似てるかも)
桜田桃子(隣に座ってもいいかな)
桜田桃子「人馴れしてるんだね、逃げないや 少しだけ隣に座らせてね」
先程までこの場にいたであろう子供達の声が遠くから耳に届く
また明日を楽しみにする活気のある声が、より一層深い溜息を誘った
猫「そんなに溜息ついたら幸せ逃げちゃうよ」
猫「俺で良ければ話聞くよ なんでも言ってごらん」
「え?!」
(猫が喋って・・・こんな幻聴ある?)
キョロキョロとあたりを見渡したけど、やはりこの公園にいるのは私と猫だけだ
桜田桃子「というか”俺”ってあなたオスだったのね」
猫「なんだそれ 気にする所そこかよ?」
どうやら私の返答は的外れだったらしい
彼の笑い声が響き渡る
猫「そんで?どうしたの?」
桜田桃子「あぁ──会社で色々ありまして・・・」
桜田桃子「取引先からのクレームに責任取れ!って上司に言われてしまって」
桜田桃子「確かに担当は私なので私の問題なのですが・・・」
猫「そうかな 一概には言えないんじゃない? 本当にそう思う?」
桜田桃子「・・・」
桜田桃子「上司も了承したうえで進めていたし、上手くこなせていた取引なので正直──」
桜田桃子「悔しいです」
彼は優しく相槌を入れながらじっと聞いてくれていた
猫「うん 俺もそう思うよ」
猫「──君は頑張り屋さんなんだね」
猫「遅くまで残っているの知っているし、だからって要領が悪いわけじゃない」
猫「疲れているはずなのに一心に仕事に向き合う君の姿に、また力をもらってる人もいると思うんだよね」
桜田桃子「元気を分けてるだなんて・・・でも本当にそんな方がいると嬉しいですね」
猫「いるよきっと近くに」
桜田桃子「逆に私が元気もらっているんですけどね」
桜田桃子「尊敬している方がいるんです」
桜田桃子「藤崎さんっていうんですけど 仕事が的確で素早くて・・・」
桜田桃子「いつもすれ違うとこんな下っ端な私にまでいつも挨拶してくれるんです」
桜田桃子「先輩として人として尊敬しています 男女問わず人気な方なんですよ」
桜田桃子「挨拶くらいしか関われることはないんですけどね」
猫「藤崎ってのは意気地なしだからな」
桜田桃子「?」
猫「なんでもない こっちの話」
猫「まあとにかくさ──」
猫「桜田さんはそのままでいいと思うよ ありのままの君が好きな人が絶対にいるはずだから」
桜田桃子「え、何で名前知って・・・」
猫「あーえっと 社員証つけたままだよ」
桜田桃子「本当だ!すっかり忘れてました」
猫「俺はさいつも桜田さんのこと見守ってるよ」
猫「応援してる でも無理はしないで」
桜田桃子「ありがとうございます そう言ってもらえてなんだか気が楽になりました」
〜ブオオォーーーッ・・・・♪
猫「え?法螺貝の音?」
桜田桃子「会社から連絡だ」
桜田桃子「わかりやすいようにっていうのと 士気を高めるために法螺貝にしてるんです」
桜田桃子「それでは私はこれで失礼しますね ありがとうございました!」
「はい、桜田でございます──」
──ガサガサ
???「ハハッ 桜田さんってやっぱ面白いね」
猫「ニャーン」
〇オフィスのフロア
数日後──
藤崎「はい、それでは弊社で──」
桜田桃子(藤崎さんだ 取引の電話かな?)
桜田桃子(挨拶したいけど邪魔だよね ここは空気で通り過ぎよう)
「桜田さーん」
桜田桃子「はーい?」
後ろを振り返ると電話を終えたらしい藤崎さんがいた
藤崎「──っと・・・」
桜田桃子(あ、猫のストラップだ)
桜田桃子「フフ、かわいい」
藤崎「えっ?」
桜田桃子「えっと!いや、あの!」
気がついた時にはもう発せられていたようで
先日の体験からより親近感が湧いていた私は、猫グッズについ目が向くようになっていたのだ
桜田桃子「猫ちゃんのストラップかわいいなと思いまして・・・急にすみません」
藤崎「そういうことね」
藤崎「飼ってる猫にそっくりでつい買っちゃったんだよね」
藤崎「たまにこの辺も散歩してるよ」
桜田桃子(藤崎さん猫飼ってるんだ)
桜田桃子(なんだか今日は藤崎さんのこと知れてラッキーかも)
藤崎「そうだ、あのさ」
藤崎「会社ではマナーモードしっかりね 法螺貝鳴っちゃみんなびっくりするからさ」
藤崎「俺は面白いから好きだけど」
桜田桃子「なんで知って──⁈」
藤崎「それと──」
藤崎「いつも挨拶してるのは桜田さんだからだよ」
藤崎「じゃ、お互い頑張ろうね」
藤崎「桃ちゃん」
そう言い残すと先輩はそそくさと歩いて行ってしまった
先輩の後ろ姿を目で追うのに精一杯で
何が起きたのか理解できない頭は足を動かす指令ができない
心音がこれでもかというほど全身に響いていた
藤崎さんの猫ちゃんだったんですね。猫になりすましとは、おちゃめな一面もある藤崎さん、そして話す猫を信じちゃうしさらに不思議な着信音にしている桃さん、ふたりはお似合いだと思いました。最後のサプライズはドキッとキュンが同時にきました。
着信音のチョイスが笑えました。(笑)まさかのチョイスですよね。猫もまた可愛くてよかったです。楽しいストーリーで最後優しい気持ちになりました。
最後の作者様のコメントにこちらが悶えてしまいました!「桃ちゃん」呼びまでしておいて頭抱えてるんかいっ!可愛いがすぎます!(大好きです)
ヒロインの法螺貝着信音に吹きましたがそこに繋がってたのかぁ。猫に代弁させるとか、本っ当に可愛い彼ですね。こんな出会いしてみたーい!と思ってしまいました。
素敵なキュンキュンをありがとうございました!