異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

アーム・ザ・コニー・ロト男

第一話『これが【ヤ・キュウ】なるモノだ』(脚本)

異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

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〇空
実況コカンダ「さあ、始まりました。世紀の一戦」
実況コカンダ「聖国ハッピーズVS帝国ドラゴンズ」

〇中世の野球場
実況コカンダ「その結末を見ようと、ここ、ウィルピッチ球場には、各国から多くの観客が詰めかけております」

〇球場の観客席
実況コカンダ「実況はワタクシ、鳥人族の良い声でおなじみコカンダ。そして解説は・・・・・・」
解説ヒルダ「メイド長のヒルダです」
実況コカンダ「さて、ヒルダさん。この場には、初めて【ヤ・キュウ】を見る方々もいらっしゃるということで、改めてお聞きしたいのですが」
実況コカンダ「そもそも【ヤ・キュウ】とは、なんでしょう?」
解説ヒルダ「【ヤ・キュウ】とは、この世界とは別次元にある【彼の地】で行われているという、伝統と格式を持った勝負方法」
解説ヒルダ「その勝負によって決まった結果は、絶対にして不可侵。神に定められた世界の理となるとかないとか」
実況コカンダ「・・・・・・なんだか小難しくてピンときませんが、つまり、とても神聖な対決方法ということですね」
解説ヒルダ「そういうことです」
実況コカンダ「改めて、今回の【ヤ・キュウ】勝負ですが、もし聖国ハッピーズが負けるようなことになれば・・・・・・」
解説ヒルダ「ユグド聖国はザッハ帝国に無条件降伏。さらには王女であるユニファ様が皇帝の嫁になります」
実況コカンダ「現在、そのお姿は、観客席に確認できますが・・・・・・なかなかに露出度の高いお姿ですね」
解説ヒルダ「いかがわしい目で見ないように。あれは【ヤ・キュウ】を応援する由緒正しき【チア・ガール】の正装なのですから」
実況コカンダ「し、失礼しました。・・・・・・話は戻りまして、負けると大変なことになるハッピーズですが、逆に勝つことができれば?」
解説ヒルダ「ザッハ帝国は向こう3年間、ユグド聖国への侵略行為を一切しない、という取り決めです」
実況コカンダ「大陸制覇を進める巨大帝国との取り決め。この一戦に、ユグド聖国の命運が掛かっていると言っても過言ではありません」
実況コカンダ「さあ、いよいよ試合開始です」

〇中世の野球場
実況コカンダ「帝国ドラゴンズの先頭バッターは、オークキングのトシマサ選手。その巨漢に似つかわしい棍棒を担いでの登場だ」
オークキングのトシマサ「ブッフォフォフォフォ~ 訳(おらおら、一発ぶちかましてやんよ~)」
実況コカンダ「そしてマウンドに立つのは、聖国ハッピーズのエースピッチャー・エルフのドロシー選手」
ドロシー「よろしくー」
オークキングのトシマサ「ブッフォッフォ。 訳(おいおい、随分と胸だけは立派な耳長が出てきな。軽く可愛がってやるよ)」
ドロシー「それじゃあ、投げまーす」
オークキングのトシマサ「ブッフォッフォ 訳(楽勝だぜ)」
実況コカンダ「第一球投げた! その細腕から想像できない、ど真ん中への剛速球だ!」
解説ヒルダ「ですが豚の棍棒がこれを見事に捉えます」
ドロシー「(ニヤリ)」
ドロシー「灰になれ」
オークキングのトシマサ「ブフォ? 訳(えっ?)」
  ちゅどーん!
実況コカンダ「ば、爆発した! トシマサ選手の棍棒が球を捕らえた瞬間! 大爆発が起こった!」
解説ヒルダ「炎属性の球でしたからね。棍棒どころか、豚も燃えていますね」
実況コカンダ「打ち上がった球は、マウンドに立つドロシー選手の頭上。そしてそのままキャッチ」
ドロシー「はい。これでワンナウト」
  七属性を極めし天才エルフ。
  変幻自在の変化球を持つエースピッチャー。破滅の大魔女ドロシー。
実況コカンダ「なんとか鎮火した豚の丸焼きもとい、トシマサ選手が退場する中、続いてのバッターはジェネラルオークのクニキダ選手」
解説ヒルダ「無駄に振り回している金属製の巨大鎚は、どうやら炎魔法対策のようですね」
実況コカンダ「そのバッターに向かってピッチャー投げた! 再び真っ直ぐなストレート! クニキダ選手の巨大鎚がこれを捕らえる!」
  ビリビリビリ
解説ヒルダ「今度は電撃魔法だったようですね。感電した豚その2が泡を吹いて倒れました」
実況コカンダ「転がった球は、内野を守るレヴィリック選手の正面。そのまま拾ったボールは一塁へ。これでツーアウト」
実況コカンダ「鮮やかな送球を見せたレヴィリック選手ですが、何を隠そう、聖国ハッピーズの選手兼監督」
実況コカンダ「そして何よりこのユグド聖国の若き宰相でもあります」
実況コカンダ「あらゆる才覚を生かし、この国をリードする宰相レヴィリック。同じ国の人間として、ヒルダさんはどう見られていますか?」
解説ヒルダ「クソですね。今のキャッチであの極悪宰相が感電し、心臓麻痺で亡くなってくれなかったことを残念に思います」
  ギロリ
レヴィリック「おい、聞こえているぞ、クソメイド! お前は解説くらいしか役割がないんだから、それくらいきっちりやれ!」
解説ヒルダ「誰に向かってほざいているんですかね、この盗賊上がりの宰相は?」
レヴィリック「テメェに言ってんだよ、元暗殺者風情が」
  成功率99.8%の元暗殺者。
  毒舌解説者として試合を彩る美女。
  ユニファ王女の筆頭メイド長・ヒルダ。
  悪徳にして悪逆。監督兼選手の頭脳派。
  二塁辺りを守るポジションA。
  盗賊上がりの謀略宰相レヴィリック。
実況コカンダ「あの、ヒルダさん」
解説ヒルダ「黙っていなさい、鳥。今、取込み中です」
実況コカンダ「応援席のユニファ王女がぷんぷん怒ってらっしゃいますが・・・・・・」
ユニファ王女「二人とも、喧嘩はメッですよ」
解説ヒルダ「・・・・・・。 さあ、ここからの試合展開が実に楽しみですね、実況のコカンダさん」
レヴィリック「ツーアウト! しまっていこうぜー!」
実況コカンダ「冷徹メイド長と悪徳宰相の対立様相とユニファ王女に逆らえない図が見え隠れする中、試合は続きます」
実況コカンダ「ピッチャーのドロシー選手。続く、帝国ドラゴンズ三番、聖戦士ギルバード選手に投げた!」
実況コカンダ「高速で投げられた高めの球が、ギルバード選手の目の前で急激に落ちた!」
解説ヒルダ「顔辺りから一気に足元ギリギリまで、ほぼ直角に落ちる、とても良い球ですね」
実況コカンダ「しかし帝国四天王の槍はこれを捕らえる!」
  カキン
実況コカンダ「痛烈な打球が、三塁線を飛んで行く! ・・・・・・おっと、これはマズイ!」
実況コカンダ「なんと三塁を守るヤマクモ選手! よそ見をしていて飛んでくるボールをまったく見ていない!」
実況コカンダ「勢いある打球は、そのまま仁王立ちのヤマクモ選手の横を通過・・・・・・」
  バシッ
実況コカンダ「い、いや! キャッチだ! 飛んできた球が真横を通過しようとした瞬間、見向きもせずにこれをキャッチ!」
実況コカンダ「ヤマクモ選手、素晴らしいファインプレーです!」
解説ヒルダ「当然の働きです。あそこしか守らないと断言したのですから、それくらいしてもらわなければ困ります」
実況コカンダ「そうなんですか? 三塁を守ることに対して、ヤマクモ選手なりに何かこだわりがあると?」
解説ヒルダ「あそこがピッチャーマウンドに立つドロシー選手の胸元を、真正面から見れるポジションだからです」
実況コカンダ「・・・・・・なるほど。そうですか」
ヤマクモ「ふっ、絶景かな」
  恥ずべきことを知らぬ男。
  投手の胸元が真正面に見えるからサード。
  一太刀千人斬りのモノノフ・ヤマクモ。
実況コカンダ「なんにしても、これでスリーアウトチェンジ」
実況コカンダ「しかし聖国ハッピーズには、相変わらず個性的な面々が揃っていますね」
実況コカンダ「その聖国ハッピーズですが、特に注目すべき選手は誰になりますかね、解説のヒルダさん?」
解説ヒルダ「やはり、なんと言ってもマコ選手でしょうね」
実況コカンダ「噂の【神の御使い】様ですね」
解説ヒルダ「はい、外野の隅っこに立っていますね」
解説ヒルダ「彼女こそが、この世界に【ヤ・キュウ】をもたらした伝道者にして【ヤ・キュウ】の全てを知り尽くす者」
解説ヒルダ「まさにハッピーズの秘密兵器と言っても過言ではありません」
実況コカンダ「さあ、そのマコ選手がこの試合をどう引っ掻き回すのか? 今後の動向に注目です」
  【彼の地】より舞い降りた、神の御使い。
  外野の右端っこ辺りを守る人。
  聖国ハッピーズの超究極最終兵器・マコ。

〇球場のベンチ
マコ「・・・・・・」
マコ「いや、過言だって」
マコ「私をあんな規格外の連中と一緒にしないでほしいんですけど。というか勝手に最終兵器にしないでよ」
マコ「それにさ。確かに野球ってスポーツがあるとは教えはしたけどさ」
マコ「そもそも私、野球の詳しいルールなんて全然知らないんだけど」

〇中世の野球場
  今日も今日とて、かつて私が映像でチラッとだけ見た野球とは、ちょっと異なる奇妙な【ヤ・キュウ】が行われている
  こんなおかしなゲームを作り、この状況を企てたのは、あそこにいる悪徳宰相である
  本当にあの盗賊上がりの男は、碌なことを考えない
  だけど私はその悪だくみに乗っている
  私だけじゃない。ドロシー、ユニファ、ヒルダさん、他の皆も
  全ては、大好きなこのユグド聖国を守る為』
  そして、この世界から戦争をなくす為
  目指すは、皆が笑顔になれるハッピーエンド
マコ「・・・・・・それにしても、初めてこの異世界にやってきた時は、まさかこんなことになるなんて思いもしなかったな」

〇黒
  ──すべては半年前
  私がこの異世界ジングレスにやってきた時から始まった
  To be continued

次のエピソード:第二話『空飛ぶ魔女が言うには、私は【神の御使い】であるらしい』

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