第十九話 好感度(脚本)
〇劇場の座席
リングアナ「ついに、今大会初の死者が出てしまいました」
リングアナ「慎んで大ダコ選手の御冥福を祈り、追悼の10カウントゴングを実施しております」
だが観客は誰も聞いていない。
さらには臨時の屋台まで出て、大ダコ選手の切り身を使用したタコ焼きが無料でふるまわれている。
「おいしい~!!」
青馬文彦「大味かと思ったけど、まあまあ旨いな」
リングアナ「これより二回戦最後の試合をはじめます!」
〇闘技場
メタルバンとザ・ワンが闘技場の中央で対峙している。
リングアナ「両選手とも、表舞台の有名選手を倒しての勝ちあがりとなりました!」
ミスター小林「両者とも、全力で闘うように」
リングアナ「静かな立ち上がり」
リングアナ「両者とも、距離をとってまずは相手の出方をうかがっています」
リングアナ「おっと! ザ・ワン選手が仕掛けたーっ!!」
ヴォーーンッ!!!!
リングアナ「ザ・ワン選手のウルトラ剛腕パンチがうなりを上げるーーっ!!」
〇劇場の座席
そのすさまじさに観客も圧倒されている。
青馬文彦「やっぱりヘタだな、根岸先輩」
青馬文彦「パンチが大振りすぎるし、フットワークもなってない」
青馬文彦「老練な動きのメタルバンのほうが、技術的にはずっと上だ」
観客「メタルバン!!」
男の子「メタルバーン!! ガンバレー!!」
「メタルバン!! メタルバン!!」
〇闘技場
ブオーーンッ!!
声援に鼓舞されたのか、メタルバンはザ・ワンのフックをかわすと、跳び蹴りを放つ。
リングアナ「出たぞ! 伝家の宝刀メタルバンキッークッ!!」
リングアナ「なんと!! 胸板に命中するも、軽く跳ね返されてしまったーっ!!」
リングアナ「おっと! ザ・ワン選手、倒れているメタルバン選手の仮面に手をかけたーーっ!!」
リングアナ「これは禁じ手です! 卑劣な攻撃だ―っ!」
ザ・ワンは一気に剥ぎ取る。
〇劇場の座席
リングアナ「おっと、この男性はもしや、健心道会館の枡田信弘さんではないでしょうか?」
観客の多くも、うなずいている。
リングアナ「枡田選手といえば空手家としてだけでなく、熱心な特撮ヒーローオタクとして知られ──」
リングアナ「またテレビのコメンテーターや歌手、俳優としても活躍、さらには政界にも挑戦したことのあるマルチな人物としておなじみです」
リングアナ「しかし最近は巨額の脱税疑惑と三股不倫騒動で炎上し、テレビのレギュラーも干されて謹慎中のはずです」
〇闘技場
ザ・ワンは、桝田の左足首を片手で握ると──
そのまま振りまわして、地面に叩きつける。
カン!カン!カン!カン!カーン!!
〇劇場の座席
リングアナ「ヒーロー破れる! これは非情な結果となってしまいましたー!」
「・・・・・・」
だが観客たちはメタルバンの正体に失望して、とっくにシラケきっている。
男の子「ソフトクリームうめ~!!」
青馬文彦「根岸先輩、なんとか勝てたな。だけど破邪神拳の前では──」
青馬文彦「て、次は俺の試合だった!」
リングアナ「さて、いよいよ準決勝が始まります」
リングアナ「次は、ウォン・シャオティエン選手対青馬文彦選手の一戦です」
〇黒
つづく
次回予告
第二十話 秘武器
乞うご期待!!