ガラスの靴を君に

サカミキ

エピソード1(脚本)

ガラスの靴を君に

サカミキ

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〇繁華な通り
ハチ(あいつ、また浮気しやがった! 今度こそぜってー別れてやる!)
  繁華街を足速に歩く。
ハチ(なんかモサッとしたヤツが店前にいるな)

〇飲み屋街
ハチ「どうしたの? こんなとこ突っ立って」
ソラ「えっと、あのー」
ハチ「入りたいんだけど、そこ」
  ゲイバーの入り口を指差す。
ソラ「ごっ、ごめんなさい」
  慌てて扉の前から離れる。
ハチ「どうも」
  店に入ろうと扉に手をかける。
ソラ「ま、待って!」
  服の裾を引っ張られ、倒れそうになる。
ハチ「なっ、何!」
ソラ「ぼっ、僕も入りたいんだけど・・・ 初めてで勇気が無くて」
ハチ「君、どう見ても未成年だよね? 酒飲みにきたの?  それとも相手探しに?」
ソラ「友達つくりに」
ハチ「ハハッ・・・ 罰ゲームか何か?」
ハチ(マジか! おもしろいヤツ)
ハチ「店の前で立ち話も何だし、場所かえない?」
ソラ「えっ!?」
ハチ「友達欲しいんでしょ? 俺でよければ話聞くけど」
ソラ「おっ、お願いします」

〇レトロ喫茶
ハチ「俺はハチ 君は?」
ソラ「ソラです」
ハチ「ソラ君さー 誘っといて何だけど簡単に知らない人についてかない方がいいよ」
ソラ「はぁ すいません」
ハチ「腹減ったから何か食べない?」
ソラ「美味しい!!」
ハチ「で、何であの店に行こうと思ったの?」
ソラ「恋がしたいんです!」
ハチ「なんか必死だね」
ソラ「大学進学のためにこっちに来たんですが、僕が住んでだ所は凄く田舎で・・・」
ハチ「うん、何となくわかる」
ソラ「やっぱり田舎くさいですか? コンタクトにしたんだけどなぁ」
ハチ「そこっ?」
ソラ「大学卒業したら実家に戻る約束なんです。 だから、時間がなくて」
ハチ「焦ってんね」
ソラ「田舎でゲイバレしたら大変だし 親も古い人だから・・・ 大学生の間に、一生分の恋をしたいんです」
ソラ「どうしたらいいかわからなくて とりあえずゲイ友を作って、色々教えて貰おうかと・・・」
ハチ「俺が紹介してあげられたらいいんだけど、 そんな人がいたら自分が付き合ってる」
ソラ「ですよね」
ハチ「ソラ、前髪あげてみて」
  『こうですか?』 前髪を上げる。
ハチ「やっぱり、けっこーいい顔してる 俺のタイプじゃないけど」
ソラ「僕だって、ハチさんはタイプじゃないですよ」
ハチ「言うねー」
ソラ「すっ、すいません 軽い人はちょっと」
ハチ「何で俺フラれてんの? 一応彼氏いるし。まあ、浮気された憂さ晴らしにあの店行こうとしてたんだけどね」
ソラ「邪魔しちゃって、すいません」
ハチ「気にしないで ソラの恋愛相談おもしろそうだし で、付き合うならカッコイイ人がいいでしょ」
ソラ「はい」
ハチ「即答!?  なら、ソラ君もかっこよくしないと その方が大学での出会いも広がるかもしれないし」
ソラ「かっこよくって?」
ハチ「まず、そのモサッとした髪型と服をなんとかしないと」
ソラ「子供の頃から行ってる床屋しか知らなくて・・・ 服も何を選んだらいいかわかんない」
ハチ「はぁー 俺が行ってる美容院紹介するよ 大学いま休みだし、服買いに行くのも付き合おっか?」
ソラ「ありがとうございます! じゃ、連絡先交換」
ハチ「意外と図太いね」
ソラ「大学生なんですね?」
ハチ「次4年 他に聞きたいことは?」
ソラ「ハチって本名ですか?」
ハチ「そこ気になる? 名前に漢字の八が入ってるから みんなそう呼ぶ」
ハチ「兄貴が七で俺が八 俺、兄貴に特大のコンプレックス抱えてんの」
ハチ「ま、どうでもいい話」
ソラ「改めて ハチ君よろしくお願いします」
ハチ「おう、入学式までにソラ改造だな」

〇試着室
ソラ「どお?」
ハチ「いいんじゃない」
ソラ「じゃ、こっちは?」
ハチ「うーん、まぁまぁかな 他も見てみる?」
ソラ「うん ありがと」
ハチ「いいよ 俺も自分の見てるし」
ソラ「僕、高校の頃は勉強ばかりで・・・ 誰かと買い物とか、本当に楽しい」
ハチ「そりゃ良かった」

〇美容院
ソラ「どうかなぁ?」
ハチ「いいねぇ」
ソラ「ありがと こんなに変われて・・・ ハチ君に魔法をかけられたみたいだよ」
ハチ「俺じゃなくて、美容師さんな」
ソラ「でも、色々アドバイスくれたから ハチ君のおかげだよ」
ハチ(ほんと、参るね)

〇桜並木
あいつ「何、黙ってんの?」
ハチ「別れよっか」
あいつ「それ困るな」
ハチ「浮気するヤツ嫌なんだよね」
あいつ「もう、しないし」
ハチ「おまえ、俺のこと見てないじゃん 兄貴の代わりだろ」
ハチ「顔だけは兄貴に似てるからな 兄貴はノンケだから、無理だもんね」
あいつ「今まで、それでやってきたじゃん」
ハチ「もう、誤魔化すのやめようぜ」
ハチ「さいなら」
  振り返り
  
  あいつを残し
  
  歩き出す
ハチ(ほら、追ってこないだろ)
  ♪〜
ハチ(おっ、ソラ 大学始まってるよな 頑張ってっかなぁ?)

〇テーブル席
ソラ「ハチ君、聞いて! 運命の人見つけちゃったかも」
ハチ「興奮してんねー」
ソラ「大学の友達と同じ高校出身の人でね 挨拶だけしたんだけど凄くカッコよくて 一目惚れ! ねぇ、どうしたらいい?」
ハチ「まずはこっち側か確認しないと 違ったらいくら頑張っても無理だから」
ソラ「それがね、友達によると”男も大丈夫”って噂があったらしいんだ」
ハチ「それは真偽確認の上、そっこー押すしかないね」
ソラ「どうやって?」
ハチ「挨拶してんだろ? 思い切って話しかけるしかないよ で、仲良くなって好みとか探るんだよ」
ソラ「できるかなぁ?」
ハチ「今のソラなら大丈夫 一生分の恋を手に入れるんだろ?」
ソラ「うん、頑張る!」
ハチ「自信持って 上手くいったら紹介しろよ」

〇大学の広場
ハチ「よっ、ソラ! 悪いな、大学まで来てもらって」
ソラ「紹介するね 前に話したけど、付き合うことになったんだ」
ナギ「どうもナギです」
ハチ「めっちゃイケメンじゃねーか」
ハチ「ハチです。よろしくね」
「よろしくです」
ハチ(イチャつくんじゃねー)
ハチ(良かったなソラ 一生分じゃなくて 一生の恋しろよ)
  本物の恋なら
  
  魔法がとけても
  
  きっと迎えにきてくれるよ
ハチ(って・・・ 俺も恋してー)

コメント

  • 在学中に彼氏も友だちも作れるなんて理想的な青春で、素敵でした
    主人公とその友人がどんどん惹かれあっていく展開は定番でそれもまた面白いですが、友だちのまま相手の幸せを見守るという展開もまた違った良さが良いですね

    ゲイ同士とは言っても誰も彼もが対象になるわけじゃないし、彼らのいうとおりタイプじゃないこともありますよね…笑
    そう言ったところも何だか現実味があってとても好きな作品です

  • 勝手にハチくんとソラくんのボーイズラブを期待してしまいましたが、ソラくんがイケメンくんと両想いになれたのも嬉しかったです。堂々と付き合ってしあわせになってほしいですね。

  • なんかピュアな子が騙されるんじゃないかって、親心のようなものが生まれてしましました笑
    真剣に考えて、勇気を出して、頑張ったなぁと褒めてあげたいです。

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