買った森からダンジョンへ

ちぇのあ

第20話 見識を深めたら突然に姿を現して(脚本)

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〇古いアパートの一室
  ・・・何やら良い匂いがする。
  目を覚ますと僕しか眠っていない。
  キッチンから和気あいあいとした声が聞こえてくる。

〇おしゃれなキッチン
想里愛「あ!真樹さんおはようございます♪」
咲桜里「お兄ちゃんだ♪ さおり達で鍋の料理作ったんだよ♪」
  土鍋には切り刻んだ野菜を中心とした美味しそうな鍋が湯気を立てている。
  塩モツ鍋・・・といった所だろうか?
  スープを味見させてもらうとあっさりとした味わいだが具の旨味はしっかり染み出ていて美味しく体に良い。
翠「僕の包丁さばきも捨てたものじゃないねっ。」
里乃愛「薄めに切ってあるからよく味が染み込んでそう♪」
  エプロン姿の天使達が可愛らしい。
  小さな飲食店を皆で開業するのも楽しい日々になるのだろうか・・・。
  いや、そんな簡単に経営はできないだろう。
  金策は他で考えることにしよう。

〇おしゃれなキッチン
真樹「僕もフライパンで何か焼いて作っておくよ♪」
  さて何が良いかな・・・冷蔵庫を確認し考える。
  まず目玉焼き作っておくか。
  焼き終えたのでお皿に移す。
  次にハンバーグを少し焼いてからオーブントースターでパンの耳を切った後にチーズとハンバーグを温める。
  温めている間にフライパンで玉葱をみりんや、林檎のすりおろしや焼き肉のたれで焼いて味付けしたものを、
  少し指でへこませた食パンにかけて出来上がりだ。
  目玉焼きにも同じ玉葱のソースをかける。
想里愛「わあ、チーズがとろけて良い匂いがして美味しそう♪」
翠「一気に朝食が豪勢になったね♪」
里乃愛「豪勢と言うのはこういう事を言うのだよっ!」
  1つ400円超えの超高級各種果実付きデザートがテーブルに姿を現す。
咲桜里「あたしこの桃の杏仁豆腐のデザートもらうね♪」
  食後のデザートも楽しみだ。僕はどのデザートを食べようかな。

〇おしゃれなキッチン
  昼食用に魚焼き機のサーモントラウトを焼いておいたので少しだけ塩を振りごはんに乗せていく。
  海で育てたもののようで脂の乗りが良く焼いても硬くならないので美味しく食べられる。
  刺身としてもいくつか用意しておいた。
  長ネギや海苔をかけて先ほどのソースをかけたものをおにぎりにしてみた。
  サーモントラウトのおにぎりも少なめだが作った。
  牛タンのおにぎりも作り塩コショウを少し振っておいた。
  あとは飲み物を用意したのでお出掛けの準備はこれで良いだろう。
  想里愛達の世界でも釣りのできる場所があったら楽しそうだ・・・
  探しに行ってみたいところだ。
咲桜里「いただきま~す♪」
  魚の骨はしっかり取り除いてあるし安心して食べる。
  彼女達の作ってくれた鍋が美味しい。
  適度な塩分が体内に補給される。
  他の料理を薄めの味付けにしておいて正解だったようだ。

〇ダイニング
想里愛「昨日は疲れてすぐ眠ってしまいました~。」
真樹「みんなお疲れだったみたいだね、僕もだよ~」
  すると想里愛が耳に口を寄せ・・・。
想里愛「朝のキスは一番早く起きてしっかりしておきましたよ・・・♪」
  ガッツポーズをキメる僕。
  まったく朝からのご褒美は最高だぜぇ!
  冷蔵庫に冷やしておいたトマトの切り身を食べる。
  野菜で喉を潤す・・・とても健康的だ。
  珍味として庭で取ってきた桑の身を冷蔵庫に冷やしておいた。
  少し苦みもあるが熟れたものは甘味もしっかりあり病み付きになる味だ。
  防虫剤は使っていないので虫が食べているものはそのまま虫にあげた。

〇ダイニング
咲桜里「まだまだ寒いから朝の鍋はあたたまっていいね♪」
翠「体の芯に染み渡るこの感じ・・・いい♪」
里乃愛「真樹くんお昼はどこかお出掛けするの~?」
想里愛「そうだ、真樹さんお昼はこの近くの場所を案内したいと思っていたんです。」
真樹「いいね、知らないと何かと不便だったりするからね。」
  近隣には春の森以外の四季を織りなす森が存在するという。
  かつてはそれぞれの季節を司る精霊がいたそうだが今残っているのは春の森を担当していた里乃愛だけだ。
  残りの精霊達の行き先は誰も知らない。
咲桜里「開拓した道をたどれば安全に歩けるから装備は用意しなくても大丈夫だよ♪」
  おおそれは有難い。
  重量を抑えるのは大事だからね。
  みんなの素敵な私服もしっかり見れるだろう。
  僕の洋梨の切り身を想里愛に口を開けて食べてもらう。
  お返しに想里愛からも食べさせてもらえて良い朝食になった。
里乃愛「おなかが落ち着くまで愛理守ちゃん達の家に転移して遊びに行かない?♪」
翠「それなら移動も楽で良いね! 精霊祭ももう一度見れるし♪」
  そうと決まれば食器を片付けてさっそく行こう。
  すぐに洗い終えて里乃愛ちゃんの転移魔法で愛理守ちゃん達の家へ転移する。
  想里愛との想い出の品だが、もう精霊の人形は使う用途での必要はないのかもしれない。

〇西洋の街並み
  玄関の名前の表札が可愛らしい。
  玄関が開くと愛凛ちゃんと愛理守ちゃんと玄関に置かれた木彫りの栗鼠が僕達を迎えてくれる。

〇綺麗な一人部屋
  テーブルに座ると香りの良いホットティーを出してくれて美味しくすすりつつ話をする。
  姉妹は精霊祭を巡って過ごすようだ。
  僕達も出掛ける前に少し巡ろうかな?
愛理守「みんなは今日は森の四季を巡りに行くの?見渡しは良いけど動物や魔物に気を付けてね!」
愛凛「君達なら何か出てきても対処できるだろうが・・・油断はしないようにして。」
  精霊祭でわかったがこの街の人達は護身術に精通している・・・。
  それだけ危険が近くに身を潜ませておりいつそれが姿を現すかわからない事を暗示しているのだ。
  決して油断をしてはならない。
愛理守「あっ!それは飲んじゃダメ!」
  話を聞くとこの家の生きている栗鼠は愛理守ちゃんが飼っているものであり立派な魔物使いとしての冒険者でもあるそうだ。
  但し現段階では魔物は使役できなく植物や動物限定であるらしい。
  採集に出掛ける時は植物に聞けるので時間を短縮できて助かっているらしい。
  僕達も虹色の花のおかげで同じことができるはずなので次回の採取や採集の際活用してみようと思った。
  それにしても植物も使役できる時点で凄い気がするのだが・・・。
  声を聴くだけと使役する違いは大きそうだ。
  キーっと鳴き声がしてそちらを向くとコーヒーを飲んだ栗鼠が顔にしわを寄せて苦々しそうにしていて和む。
翠「それにしても愛理守ちゃんすっかり元気になってよかったよ♪」
愛凛「ありがとう、また遊びに来てくれ♪」
里乃愛「さっ! だいぶ休めて楽しくお話もできたし、そろそろ出発しよっか♪」

〇桜並木
  家を発ち精霊祭を見つつ春の森へ向かう。山頂を超えてしばらく道を下ると夏の森へ辿り着くのだと言う。
  歩き続け家を超えて湧き水を少し飲み喉を潤すと満開の桜並木を通っていく。
  この万年樹の先の開拓された道を進んでいく。
咲桜里「この満開の桜とも少しの間お別れかぁ~。」
翠「夏の道はどんな感じなのかなぁ?」
里乃愛「あたし達を信仰してくれている人達に感動と感謝を与える事を理念に作られたはずだから、きっと楽しめるはずだよ~♪」
真樹「おお、それは楽しみだなあ!」
想里愛「心無しか少しずつ森が暖かくなってきた気がします♪」

〇新緑
  山頂に辿り着きしばらく道を下る。
  降り切ったところで視界が新緑に変わり立派な木の葉が空を隠し生い茂る。
  夏の道というだけあり暑さが堪えてくるはずなので日陰が多いのは有難い。

〇山中の坂道
  道は上り坂になり暫し登ると開けた並木があり休憩する場所もある。

〇ボロい山小屋
  ご丁寧に樹のテーブルや椅子にハンモックまで設置してある。

〇木の上
真樹「樹に何か実が成っているね、これは・・・栗?」
咲桜里「そうだよお兄ちゃん♪ お兄ちゃんの世界では秋に収穫するそうだけど、こっちだと夏でも美味しく食べられる種類があるんだよ♪」
想里愛「これはモモグルミですね、匂いを嗅いでみてください♪」
  翠と僕が匂いを嗅いでみると・・・桃の匂いがする。
  こんなクルミもあるんだなと驚く。
想里愛「脂分が多くて、熟成して落ちている実ならそのまま生で食べても平気ですよ♪」
  そう言うと器用に中の実を取り出し口に放る想里愛。
  皆も真似して食べると新鮮な香りの良い風味に舌鼓を打つ。
  作った精霊と森の恵みに感謝する。
  少し道を外れて上向きになる実はユズノミと言い蜜柑に近い味と香りを持ちお酒に漬けて果実酒として飲んだり、
  そのままお酒の共にして生で食べるのも美味しいのだという。
  モモグルミに続き少し持ち帰る事にしてリュックに入れるとまた道に戻り進んでいく。

〇森の中の小屋
真樹「おっと!何か道に出てきたよ。」
  パッと見ると僕の世界で言う狸と言ったところだろうか。
  すぐに前の道を横切り森の中へ消えていく。
咲桜里「あれはヒイロダヌキだよ、優しい性格でこの森の実しか食べなくて人に害は無いから安心だよ♪」
想里愛「ちなみに名前の由来は、伝承で焔を操った事から着いた説と、陽だまりで休んでる事が多いからと言う説があるんですよ♪」
  ふむふむ勉強になるな、こうして知らない未知を探求するのは冒険心をくすぐられて楽しい。
  博識な彼女達に尊敬の念を向ける僕。
  少しハンモックで小休憩を挟む。
  家にもこのハンモックが欲しい、自作するなり買うなりしたい。
  そして所々に見える動物達と頭上の鳥の囀りを聞いて道を歩き・・・次の秋の道を迎える。

〇銀杏並木道
翠「次は秋の道かぁ、紅葉が綺麗だね♪」
里乃愛「見上げても見降ろしてもすごく良い景色だね♪」
  どうやらそれぞれの道をある程度登った地点や山頂が休憩のポイントとなっているらしく、
  近くには必ず森の恵みであったり休憩用の道具が置かれていたりするようだ。
  秋の道にも美味しそうな栗やアケビに近い形状の果実や葡萄のような粒の果実も見つかる。
  これらも少し持ち帰り今後の調理の楽しみとした。
  採取巡りとしても充分に楽しめる。
  紅葉の並木を眺めつつ綺麗な樹の椅子に皆で腰掛ける。
  一気に進んでしまっては旅の醍醐味は薄れるし危険かもしれない。
  こうやって休んで心も体も癒すのは大切だ。
  冬の道では寒くてゆっくり昼食をとれないかもしれない。
  少し早いがここで昼食を摂る事にしよう。
真樹「冬の道は寒いだろうし長居しにくいから、ここでお昼ご飯にしない?」
想里愛「そうしましょう!いっぱい歩いてお腹も空いてきました♪」
  素敵な景色と可愛らしい彼女達に囲まれて食材を広げる。
  秋の道で採れた栗の実もテーブルに置く。
  さてと何から食べようかな。

〇養護施設の庭
想里愛「このお魚脂が乗っていて美味しいですね!」
翠「あまり噛まなくても口の中で溶けていくこの食感・・・ますます舌が肥えていく事待ったなし!」
  高評価を頂けて何よりだ。
  良い食材はどんどん取り入れていかないといけないな。
咲桜里「味覚でも視覚でも美味しく過ごせるのは良い事だね♪」
里乃愛「出来立てのおにぎりも美味しいね♪」
  何かスープも欲しいところだが、簡単なインスタントの味噌汁で済ませる事にした。貝の出汁が利いていて美味しくてあたたかい。
真樹「ごちそうさま! お腹が落ち着いたら出発しよう。」
  しばらく涼しいそよ風を浴びながら皆で日向ぼっこする。
  舞い散る紅葉もまた美しく辺りを彩る。
真樹「真樹さん、近くに食材の匂いがします! これは探索するしかありません♪」

〇林道
  お腹を休めてる彼女達に見送られつつ、
  すぐ近くの森の中を入ると地面に何か生えている。
  見た感じ筍に・・・蔓をひっぱると芋も出てきた。
  芋はジャガバターにして夕食に添えようかな。
  蔓での縄引きだが想里愛との共同作業も楽しめた。
  こんな簡単に食材を集められるのは助かる。
  外食だとお金が嵩むからなあ。
想里愛「真樹さん、大好き♪」
真樹「僕もだよ、想里愛大好き♪」
  朝のキスの続きをここで叶える事に成功する。
  いつも彼女からでは悪いので、たまには僕からも積極的に行かなければならないなと考える。
  充分に想里愛の温もりが僕に伝わり満足したので皆の待つ山頂へ戻る。

〇養護施設の庭
咲桜里「あ、お兄ちゃんとお姉ちゃんお帰り♪」
翠「さっ・・・冬の道へ冒険だっ!」
里乃愛「寒かったら魔法で保護するから安心してね♪」
  良い具合にお腹も落ち着いてきた。
  さっそく出発するとしよう。
  荷物の中身も軽くなったし少しは楽に移動できそうだ。

〇雪山の森の中
  道を下り麓を見ると荘厳な雪景色が僕達を待ち構えている。
  僕の腰ぐらいの高さはある。
  これは準備無しで通るのは厳しい。
里乃愛「ボクの魔法の出番だね。」
  前方の空間が少し歪んだと思うと・・・熱源で雪が溶けてゆく。
  少し強力で近すぎると危ない為熱源から距離を置いて進む。
  進む方角に合わせて作用させているようで、これは有難い。
  里乃愛ちゃんのおかげで寒さも無いし冬の道も無事に散策できそうだ。
  ・・・所々に足跡があるが彼女達の誰も知っている動物の足跡では無いという。
  形は妙に歪で大きい。
  ・・・魔物がいるのではないだろうか?
  しかも足跡は新しい・・・。
真樹「この山だけ春の山よりも標高が高いね。」
翠「それに全体的に山が大きくて分岐も初めてだね。」
  この山は普通の山とは違う・・・何かあると思考が巡る。
  分岐には溶けかけた氷塊がそびえてたり定期的に落とし穴のような空洞が穴を開けているなど、
  熱源で溶けていなかったら気付かない悪意が潜んでいる。

〇雪山
咲桜里「はぁ~~・・・やっと頂上が見えてきたね。」
想里愛「さおり、急に走ったりしたら危ないからちゃんとあたしの後を歩くんだよっ。」
  ふと脇を見ると薄い雪が円形に幕を張っている。
  何かが隠れているようで熱源で溶かすと・・・。

〇雪洞
翠「ここはダンジョン化してるね・・・足跡もいっぱい残っているよ。」
  視野を広める意味で探検していたら本当に探検の入口を見つけてしまう。
  翠と里乃愛もいる事だし探検しても被害を被る可能性は低いだろうが・・・
  暗くなる前までと言う条件で中へ足を踏み入れる事にしたのだった。

次のエピソード:第21話 危機を脱したらこの限りある命に感謝して

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