特別な存在(脚本)
〇非常階段
配信用アカウントを薗さんに見られてしまった私は、とっさに彼の腕をつかみ、階段まで連れてきてしまった・・・・・・
薗「い、いきなりどうしたんですか?」
薗「私何か・・・・・・ 見てはいけないものでも見ました・・・・・・?」
状況を飲み込めずにいる薗さんに
私は全力で頭を下げた
私「お願いします! 今見たアカウントのことは 社内では秘密にしていただきたいんです!」
薗「アカウントって・・・・・・ 配信をやっていらっしゃる?」
私「は、はい」
私「副業NGなのは重々承知しています・・・・・・ でも・・・・・・」
薗「5年も続けている配信を辞めることはできない、と」
私「はい・・・・・・」
私「って──」
私「えぇ!?」
親にすら話したことのない配信の話を
何故薗さんが知っているのだろうか
私「五年も続けてるって・・・・・・ なんで知ってるんですか」
薗「えっ、と・・・・・・ その・・・・・・」
私の疑問に、薗さんは申し訳なさそうに視線を泳がせる
薗「実は私、貴女が配信活動をしていらっしゃることは、入社してすぐ気づいていたんですよ・・・・・・」
私「な──どうしてですか!?」
薗「お恥ずかしながら・・・・・・ 貴女の配信は随分前から聞いていまして」
薗「入社式でお声を聴いたときに、似ているなと」
薗「入社式のお話しや仕事の話もされていたので すぐに同じ方だと分かりました」
私「嘘・・・・・・あんな本性さらけ出した配信を まさか会社の人に聞かれてたなんて・・・・・・」
薗「す、すみません・・・・・・!」
薗「わざと黙っていたわけではないのですが 私が聞いていると打ち明けるようなタイミングも無く・・・・・・」
薗「むしろ コメントをよく残していたので 気付かれているかなと思っていたのですが・・・・・・」
私「コメント・・・・・・」
私「もしかして・・・・・・ エンさん・・・・・・?」
薗「はい・・・・・・! 覚えてくださっていたのですね・・・・・・!」
嬉しそうに笑顔を見せる薗さんとは裏腹に
私は冷や汗を流した
私「わ、私・・・・・・」
私「思いっきり年下の人だと思ってため口でチャットお返ししたり、人生相談しまくってすみません!」
私「薗さんだったなんて全然気付かなくて!」
改めて思いっきり頭を下げる
薗「そんな・・・・・・気にしないでください・・・・・・!」
薗「むしろ色々なお話を聞かせていただけて 私だけ少し特別な存在になれたようで」
薗「個人にチャットを送ってくださるの 本当に嬉しかったんです」
私「え──?」
薗「ですから、今後も遠慮なく 人生相談でもなんでも送ってください」
薗「私以外の方に相談されたら むしろ嫉妬しちゃいます」
私「い、いいんですか・・・・・・? あんな、馴れ馴れしい文章を・・・・・・」
薗「もちろんです」
薗「会社では上司という立場になってしまいましたが・・・・・・ 私は貴女が入社してくる前から、貴女のファンですから」
薗「いつも貴女のお話しに癒されていました」
薗「これからも、好きでいさせてください」
私「薗さん・・・・・・」
薗「あ・・・・・・! 会社に知られたくないというお話でしたよね!」
薗「安心してください」
薗「もちろん誰にも言いませんし 何かあればいつでも協力します」
そう言って薗さんは
私の手をそっと握りしめてくれた
薗「これからはもっと 特別な存在になっちゃいましたね」
そう言って微笑む薗さんに
私も笑顔を返した
短いお話ながらも、「特別な私」を知っている薗さんとのやり取りに、ドキドキしながら拝読させていただきました。
これからは配信を通さずとも薗さんと色々お話しできるのかな、なんて未来を想像してニマニマしてしまいました。
二人の未来に幸あれ✨
今の時代、身近にそういう人がいてもおかしくないですよね。
特にVtuberとか、声だけしかわからない人とか…近くにいても気づかないと思います…。
終わりよければすべてよし!彼女はバレてしまって焦ったと思いますが、思わぬ展開でふたり近づくことになって、なんだか今後の展開を想像して期待しちゃいました。現代は配信を隠してやってる方も多いでしょうし、まわりの人が実は知ってた、ってのも案外ありそうですよね。