オオゾラパズル

見張マコト

狛と鶴(脚本)

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〇湖畔
  町中のオゾマシサをかき集めたような、
  とにかく最悪な場所だった。
都浦(とうら)(本当にここが神聖な場所? こんな薄汚れた水溜りが?)
嬉島(きしま)「水質が良いから湖が鏡みたいだ」
都浦(とうら)(・・・)
「トウラくーん、歩くの早いよ~」
女の子「ここが鏡池?」
都浦(とうら)「多分ね」
女の子「なんか、おばあさんが言ってたみたいな シンセイさ? はあんまり感じないね」
女の子「普通の池だなぁって感じ」
都浦(とうら)「・・・そっか」
都浦(とうら)「僕はね、こんな場所の水になんか 何も宿っていないと思うんだ」
女の子「で、でも、おばあさんは言ってたよ? 鏡池には神様が宿ってるって・・・」
都浦(とうら)「そうだね・・・」

〇教室
  タラエが教室から飛び降りた数舜後、
  トウラの頭は既に、前日に投げ捨てられた
  猫のことでいっぱいだった。
  今はまだ、猫が生きていなければならない
  という強い強迫観念が自身を責めていた。
  猫が死んでしまっているのなら、
  殴られた際に感じてしまった恐怖が
  劣等感として一生ついて回りそうだった。

〇学校脇の道
  他の生徒が帰宅する中、
  トウラは必死に前日の猫を探した。
  猫は前足を骨折していたが生きていた。
  僅かに残っていた一連の恐怖が
  今にも抜け出しそうで、少しよろめいた。
  あとは自らの手で猫を殺めることにより、
  初めて全てを克服できるはずだったが、
  少女の闖入がそれを阻んだ。
  少女の慟哭は裂帛に純情が入り乱れ、
  ひたすらに不快だった。
  意図せず連鎖的について回る不快さは、
  どうしようもなく彼の運命なのだった。
  見るからに宗教臭が拭えない初老の婦人が
  彼らを捉えたことも運命であった。

〇湖畔
女の子「ど、どうするの・・・? ネコさん、元気がないよ」
都浦(とうら)「水を沢山飲んでるから大丈夫だよ」
都浦(とうら)(今はこんなネコのことよりも・・・)

〇学校脇の道
おばあさん「鏡池でも救われないなら、 ジンライ様の所に行きなさい」
おばあさん「ジンライ様はあらゆる排斥を嫌い、 全ての人々を救済なさる御方だからね」

〇湖畔
都浦(とうら)(おばあさんの手提げバッグに付いていた ワッペンは、タラエ先生のリュックに 付いていたものと同じだった)
都浦(とうら)「ジンライ様、だっけ? その人の所に行こっか」
都浦(とうら)「嫌かな?」
女の子「い、嫌じゃないよっ!! トウラ君と一緒なら、 きっとネコさんも助かるはずだもん」

〇古びた神社
  目的地に着いたトウラは
  殴られた時以上の衝撃を受けた。
  森閑として瀟洒な建物が、
  嫌味だけで形成される
  圧倒的な慈しみを想起させたのだ。
  生きる気力が萎れるほどの惰弱さで
  この巨大な厳めしさに
  縋り付きたくなり、それが悲しかった。
女の子「はぁ、はぁ・・・」
女の子「わぁ・・・!! すごいね、トウラ君!! とってもシンセイだよ」
都浦(とうら)「・・・ッ!!」
  年齢に相応しい依存的な少女の態度が、
  トウラは大嫌いだった。
???「誰かいるのかい?」
  そんな涼しげな一言によって
  粘ついた炎のような怒りは
  呆気なく消え去った。
  男のあまりの生気の無さと、
  しかし、羨ましいほどの冷たい気炎が
  トウラの激情を宥めたのだ。
神籟(じんらい)「おや? 珍しいお客さんだね」
神籟(じんらい)「あぁ、カネコさんが言ってた子かな・・・」
神籟(じんらい)「へぇ・・・」
神籟(じんらい)「ボーヤ、お名前は?」
都浦(とうら)「トウラ、です・・・」
神籟(じんらい)「おっ、カッコいいね。 トーラ君は何年生?」
都浦(とうら)「3年生・・・」
神籟(じんらい)「あらあら・・・!!」
神籟(じんらい)「トーラ君はさ、何しにここに来たの?」
都浦(とうら)「ネコが、怪我してて。 おばあさんがジンライ様を頼れって・・・」
神籟(じんらい)「お嬢ちゃんも一緒に?」
女の子「ネ、ネコさんが可哀そうで・・・ トウラ君は頼りになるから・・・」
神籟(じんらい)「そうかい・・・」
神籟(じんらい)「ちょっと待っててくれるかな?」
神籟(じんらい)「これを猫に飲ませるといいよ」
神籟(じんらい)「あぁ、そんなに怪しまなくてもいいよ。 うちの幹部にお薬屋さんがいるんだ」
神籟(じんらい)「「ビタメンCC」みたいな名前だったかな? 医療用なんだって」
神籟(じんらい)「これを鏡池の水と一緒に飲ませれば きっとトーラ君の望みは叶うと思うから」
神籟(じんらい)「お嬢ちゃん、飲ませに行ってくれるかな?」
女の子「えっ!? ど、どうしたらいいかな? トウラ君・・・?」
都浦(とうら)「えっ・・・?」
神籟(じんらい)「ウチから人を寄越すから安心していいよ」
女の子「ト、トウラ君?」
都浦(とうら)「・・・」

〇古びた神社
神籟(じんらい)「二人きりになれたね」
神籟(じんらい)「改めて聞くけどね、 トーラ君は何をしにここに来たのかな?」
都浦(とうら)「ネコを助ける、ため」
神籟(じんらい)「それにしては随分さ、」
神籟(じんらい)「狩人みたいな目をしていたよ?」
都浦(とうら)「──ッ」
都浦(とうら)「・・・ッ!!」
  殴られる寸前、トウラに根付いた既視感が
  反射的に上体を反らせた。
神籟(じんらい)「・・・トーラ君ってさ、 殴られるの初めてじゃないでしょ?」
  おかげで右頬を掠る程度で済んだが、
  低俗な反射を、それもたった1回の経験で
  刷り込まれていたことが悔しかった。
神籟(じんらい)「いいね。 だけどまだ中途半端」
神籟(じんらい)「こっちにおいで。 覚悟が決まるかもしれないよ」

〇古い畳部屋
神籟(じんらい)「ここには僕を崇拝する 頭の悪い連中がゴロゴロいるんだ」
神籟(じんらい)「この町の色々な情報を簡単に教えてくれる メモ帳みたいな人もいれば──」
信者「ジンライ様!! 聞いてくださいっ!!」

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コメント

  • 狂人のセリフがいいですね〜
    トウラくん続投嬉しい!同級生の女の子の普通の反応にいやそ〜な顔してるところ、ニヤニヤしながら読んじゃいました。
    この挫折は彼にとってどんな糧になるのか、あるいはならないのか?続きが楽しみです😊

  • 地味に表紙が
    「少女の人形」→「脳みそ」→「木の柵」
    とアップデート(上書き?)されてるのも気になりますね…さあどうなる…?

  • サイコパスという一言では片付けられない生々しさが良きです😆地獄だ…(褒め言葉)

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