読切(脚本)
〇空
──憎いほどの晴天
眩い太陽光に目を細める
じりじりと焼け付く肌
まだ数分しか浴びていないのにもう汗ばんでいる
「これだから嫌なんだ外は・・・」
ぶつぶつ言いながら、それでも足を進める
男の家から歩いて数分の場所にあるそこは──
〇墓石
──墓地
男は迷いなくある墓石の前に立った
感情の一切を読み取れない無表情のまま、手を合わせる男
男「・・・千晴(ちはる)」
男は静かに感傷に浸る
それでも表情は崩れない
男はある少女を思い浮かべていた
──十数年前
男の目の前で亡くなった、初恋の少女のことを
〇学校脇の道
千晴「今日はなにして遊ぶ?」
キキーーーーッ!!!!!!
〇学校脇の道
〇墓石
手を合わせたまま、微動だにしない男
男「千晴」
少女の名を呼び、目を開いた
そして──
男「俺はあの日のまま止まってた」
男は独白する
男「環境が変わっても、成長しても。ずっと忘れられなくて」
男「でも、このままじゃいけない」
男「だから俺は前に進むよ」
男「でも、くじけそうになったら・・・また、ここに来ていいか?」
男「そのときは、背中を押してくれないか」
男「そうしたら、俺はまた頑張れるから」
なにか、ふっ切れたような笑みを浮かべた男
千晴「・・・」
千晴「──うん!! がんばれ、ゆーくん!!」
男「──!!!!」
男「千晴・・・?」
男「・・・うん」
男「頑張ってみるよ、ちーちゃん」
〇空
──憎いほどの晴天
眩い太陽光に目を細める
男はその日、一歩踏み出した
応援してくれる声が聞こえたということが、二人の関係の全てだと思いました。一緒にいられた時間は限られていても支え合える存在だったことが伝わってきて、読んでいて勇気づけられました。ありがとうございました。
突然の別れって後を引きずるのとてもよくわかります。悲しんだ分、それは故人への更なる愛情と化すると思うので、彼のように時間をかけて踏み出した一歩はとても尊いですね。
目の前で大好きな人を失ってしまったなんて、長い間立ち直れない気持ちもよくわかります。特に多感な子どもの頃なのでなおさらですね。彼には、これから幸せに前を向いて進んでいってほしいと心から思いました。