お狐様の恩返し

しるてん

星空と油揚げ(脚本)

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しるてん

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お狐様の恩返し
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〇田舎駅のロータリー
  ──春休み。
  私たち天文サークルは、
  他大学との合同合宿を行うことになった。

〇温泉旅館
  宿泊先は、私の叔父が経営する旅館。
  親戚のよしみで宿泊費も少しまけてもらえた。
他大学のサークル長「いやぁ、星見さんがいてくれて良かったよ」
星見照子「いえいえ、私もここで皆さんと活動出来て嬉しいです!」
他大学のサークル長「星見さんはこの辺詳しいの?」
星見照子「はい! 小さい頃からよく遊びに来てたので!」
星見照子「良かったら明るいうちに案内しましょうか?」
他大学のサークル長「そうだね。観測する場所までの道も知っておきたいし」
他大学のサークル長「皆、荷物を部屋に置いたら一度外を回ってみよう」

〇寂れたドライブイン

〇田舎町の通り

〇スーパーマーケット

〇神社の石段
先輩「階段の上にあるのは・・・・・・神社?」
星見照子「はい、稲荷神社です」
赤木常雄「お稲荷様って、やっぱり油揚げを供えるんですか?」
他大学のサークル長「赤木、お前どんな食いつき方だよ」
星見照子「確かに、狐って油揚げ好きなイメージありますよね」
星見照子「そういえば、お母さんの目を盗んで持ち出したこともあったなあ・・・・・・」
赤木常雄「へえ、そうだったんですか」
星見照子「お母さんには全部バレてたみたいで、もうすっごく怒られました!」
赤木常雄「それは大変でしたね」
赤木常雄「──でも、助かったよ」
星見照子「え?」
赤木常雄「いえ、何でもありません」
他大学のサークル長「日も暮れてきたし、一旦帰って夕食にしよう」
他大学のサークル長「そしてその後は・・・・・・」
他大学のサークル長「待ちに待った天体観測だ!」

〇温泉旅館
肝井「あ、」
他大学のサークル長「どうした肝井?」
肝井「すみません俺、部屋に双眼鏡忘れてきちゃって・・・・・・」
他大学のサークル長「大丈夫だ、俺のを貸すぞ!」
肝井「そしたら部長が見れなくなっちゃいますよ。俺、取ってきます」
他大学のサークル長「む、そうか・・・・・・俺らゆっくり歩いてるから、焦らずに行ってこいよ」
肝井「星見さん、悪いんだけど一緒に着いてきてくれる? 旅館の中結構複雑だったから、迷っちゃうかもだしさ」
星見照子「は、はい。分かりました」
赤木常雄「・・・・・・」

〇旅館の受付
星見照子「確かお部屋梅の間でしたよね。この先の階段を使うと近道ですよ」
肝井「・・・・・・」
星見照子「?」
肝井「へへ・・・・・・やっと二人きり・・・・・・だね」
星見照子「!?」
肝井「・・・・・・・・・・・・」
星見照子「ちょっと・・・・・・!」
赤木常雄「──おい、何してるんだ」
肝井「な、なんだ赤木か。驚かすなよ」
赤木常雄「この子に何しようとしてたか聞いてるんだよ」
赤木常雄「怪しいと思って着いてきたら・・・・・・まったく」
肝井「なんだよ、何もしてないだろ!」
赤木常雄「いいから離れろ。この子はお前のような人間が触れていい存在じゃない」
肝井「はあ?」
赤木常雄「部長には俺から報告しておく」
肝井「・・・・・・ちっ!」
肝井「俺帰るわ。サークルも辞めるから。天サーとかどうでもいいし」
星見照子「・・・・・・」
赤木常雄「そうか・・・・・・」
赤木常雄「だとさ、お前ら」
口裂け女「はーい、一名様ごあんなーい」
河童「相撲しようぜ!」
小豆洗い「小豆洗おうぜ!」
肝井「な、なんだ!?」
肝井「やめろ! うわー!」
星見照子「え、今のって・・・・・・妖怪?」
赤木常雄「ふふ・・・・・・、かもね?」
星見照子「・・・・・・」
星見照子「あの、助けてくださって、ありがとうございました」
赤木常雄「いいんだ、無事で良かったよ」
星見照子「・・・・・・」
赤木常雄「油揚げ一枚分の恩返しには、なったかな?」
星見照子「・・・・・・!」
星見照子「あの、もしかしてあなたって・・・・・・」
赤木常雄「さ! 皆が待ってるよ」
赤木常雄「どうする? 少し休憩してから行くかい?」
星見照子「・・・・・・、」
星見照子「・・・・・・」
星見照子「いえ、早く行きましょう」
星見照子「星を見に!」

〇美しい草原

〇温泉旅館
他大学のサークル長「いやぁ、昨日の星空凄かったな!」
先輩「そうね、また来たいわ」
星見照子「肝井さん、結局帰ってきませんでしたね・・・・・・」
他大学のサークル長「肝井? 誰のこと言ってるんだ?」
星見照子「え・・・・・・? でも昨日、忘れ物を取りに・・・・・・」
星見照子「それで、あの、赤木さんは・・・・・・?」
先輩「照子ちゃん、何言ってるの」
先輩「今回のメンバーの中に肝井なんて人も、赤木っていう人もいないでしょう?」
先輩「ほら、名簿」
星見照子「ほ、本当だ・・・・・・」
星見照子(え、ど、どういうこと?)
他大学のサークル長「はは、まだ寝ぼけてるのかい?」
他大学のサークル長「とにかく、次のバスに乗り遅れないようにしないと」
先輩「一時間に一本しかないからねー。 ま、春休み中だし時間は腐るほどあるからいいけど」
星見照子「あ、あの・・・・・・それなら少し待っててもらってもいいですか?」

〇古びた神社
星見照子「お狐様、いつもありがとうございます」
星見照子「・・・・・・赤木さんは、お狐様だったんですか・・・・・・?」
星見照子「なんて、そんな夢みたいなこと、ありませんよね」
星見照子「油揚げ、本当に好きかは分からないけど・・・・・・お供えします」
星見照子「・・・・・・あ、今回はちゃんと、自分で買いましたから!」

〇祈祷場
???「・・・・・・」

〇祈祷場
???(この辺も、大分人が減ったよなあ・・・・・・)
???(お陰で信仰力も薄まって、今にも消えちまいそうだ)
「おきつねさま、こんにちは!」
???(星見のとこの孫娘・・・・・・今日は一人か?)
てる子「あのね、あぶらげ・・・・・・ママにないしょでもってきた!」
てる子「いつものお礼だけど、ひみつね!」
???「!」
???(・・・・・・くく、なんとも愛らしい)
???(しかし盗みはいかんな・・・・・・ん?)
「コラ照子!」
てる子「わ〜ん! ごめんなさいぃ」
???(それみろ!)

〇祈祷場
???「あの幼子が立派になって・・・・・・時の流れは早いな」
???「──しかし、困ったな」
???「これではまた、恩返しをしなくては」

コメント

  • そっか、彼女は過去にも彼に助けられたことが
    あったのか。素敵な恩返しストーリーですね!
    こうやって未来に縁は繋がっていくのかなと思わせられました。
    本編の流れには関係ないですが、妖怪たちの台詞がツボでした!「小豆、洗わない?」に思わず笑ってしまいました~( *´艸`)

  • なるほど、過去と繋がっているわけですね!
    子供ながらに神様にお供物、いいですねぇ。
    お地蔵さんに売れ残った傘をあげた話、あれを少しだけ思い出しました!

  • 不思議なお話で、まさか狐さまが出てくるとは彼女も思わなかったでしょうね。
    妖怪さんたちもかわいかったです!
    油揚げのお礼はしに行くんでしょうか?

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