読切(脚本)
〇バスの中
花凛(すっかり遅くなっちゃった)
日はすっかり暮れていた
バスの窓は車内を反射するばかりで
外の景色は楽しめない
花凛(明日も朝はやいのに・・・ まったくもう・・・)
アナウンス「次は〜もみじ通り〜もみじ通り〜」
花凛(いけない! 降りなきゃ)
〇住宅地の坂道
花凛「あっ」
ツカサ「よお」
花凛「なんでいるの?」
ツカサ「なんでって 近所に住んでんだから会うこともあるだろ」
花凛「それは・・・確かに」
花凛(そうだった。 隣のアパートに住んでるんだった)
幼なじみであるツカサ
大学も同じ
一人暮らしするアパートまで近いのだから
正真正銘の腐れ縁である
ツカサ「不満か?」
花凛「そうじゃないけど」
花凛「同じバスに乗ってるなら 声かけてくれたら良かったのに」
ツカサ「いつもと格好が違ったからな」
花凛「あー・・・」
Tシャツにジーパンが
私の定番スタイルである
ツカサ「ついに彼氏できたのか?」
花凛「違うよ 合コンの人数合わせに付き合わされたの!」
ツカサ「合コンね・・・」
ツカサの表情に少しの翳りが
花凛(なんでそんな不満そうな顔するのよ・・・)
ツカサ「こんな夜遅くに帰るのはどうかと思うぞ」
花凛「・・・大丈夫だよ」
ツカサ「そんな格好で?」
花凛「夏なんだから これくらいはフツーでしょ」
ツカサ「どうだか」
花凛「もー!! そんなに口うるさいと サークルの女の子に嫌われるよ!!」
ツカサ「こんなに言うの お前にだけだから平気だよ」
花凛「へ? なんか言った?」
ツカサ「なんでも」
花凛「そっちだってこんな時間まで──」
ツカサ「俺はサークルだよ」
花凛「あいかわらずバスケバカだね」
ツカサ「バカは余計だよ」
ツカサは
幼い頃からのバスケ好きである
すり傷なんて
しょっちゅうだ
花凛「ツカサすぐ怪我するんだから 気をつけ──」
花凛「え!? どうしたの、その肘!?」
ツカサ「あー・・・」
ツカサ「サークルでぶつけた」
花凛「この絆創膏じゃ全然覆えてないよ!」
応急処置として
貼ったであろう絆創膏は
大きさが全く合っていなかった
花凛「・・・ちゃんと手当てしなきゃ」
ツカサの手を掴む
ツカサ「花凛?」
花凛「・・・こっちきて!」
〇女性の部屋
花凛「テキトーに座って」
ツカサ「お、おう」
花凛「救急セットはここらへんに・・・」
花凛「あーあったあった!」
ツカサ「手当てくらい自分で・・・」
花凛「どうせ 家に救急セットも置いてないんでしょ」
ツカサ「うっ、それは・・・」
花凛「ケガしても放置するの 昔から全っ然変わんないんだから」
花凛「ほら ちゃんと手当てするから腕みせて」
ツカサ「・・・」
〇女性の部屋
花凛「よしっ終わり!」
花凛「どう? 痛くない?」
ツカサ「ああ・・・」
花凛「・・・どうしたの? さっきから浮かない顔して」
ツカサ「・・・」
ツカサ「花凛は」
ツカサ「ケガしてる男がいたら ・・・こうやって家にあげるのか?」
花凛「え?」
ツカサ「警戒心が──無さすぎないか」
花凛「だってツカサは幼──」
言葉を遮るように視界が回転する
──ドサッ
気づけばベッドに押し倒されていた
ツカサ「幼なじみでも」
ツカサ「俺も男なんだけど」
突然のことに
言葉が出てこない
間近で見る彼は
いつもの幼なじみのはずなのに
知らない雰囲気をまとっていた
ツカサ「なんてな」
真剣な表情をゆるめたツカサ
手を引っ張られ
もとの体勢にもどる
ツカサ「手当て、ありがとな」
花凛「う、うん・・・」
立ち上がった彼は
私の頭に
そっと手をのせた
ツカサ「言っとくけど俺」
ツカサ「本気だから」
そう言い残してツカサは去っていく
花凛「・・・もう、なんなの」
煙が出そうなほど熱い頬をおさえて
つぶやいた一人言は
静かな部屋に吸い込まれていった
全く意識してない相手に、意識させられる言動。恋の始まる予感に、ドキっとしつつもめっちゃトキメキました!見えない相手に嫉妬する彼の可愛さも相まってキュンキュンしました~(^^)
私も部屋に救急箱常備しなくては!と思わず花凛の女子力を見習ってしまいました(笑)
二人が結ばれますように✨
あとがきでも書かれていたように、胸キュンって人それぞれですし難しいですよね。
でもこの作品のように、頭ポンポンは私の中では胸キュンですね笑
彼がベッドに押し倒したところで効果音がかってになりました。短くまとめた、とてもシンプルなストーリーなのに、アクセント一つで余韻が倍増です。