ESCALATION(脚本)
〇二階建てアパート
12・24
〇一人部屋
遥「・・・」
遥「あ!」
遥「やばいやばい!今何時だっけ?」
遥「11時30分!よっしゃまだ24日だ!」
望「うん?どうした?」
遥「更新忘れてた!」
望「はあ?」
遥「えーっと服着て!電気つけて!男モノ片付けて!あとどいて!」
望「ぎゃあっ!」
〇一人部屋
遥「壁に向かって・・・ヨシ!」
遥「何も映んないように・・・ヨシ!」
望「おい、更新ってなんだよ」
遥「ぎゃあああ!映りこむな!入ってくんな!」
望「な、なんなんだよもう・・・」
〇SNSの画面
遥「メリークリスマス!今日はモデル友達のみんなと寂しい・・・もとい、とっても楽しい女子会でした!」
遥「みなさんもHAPPYなクリスマスを~♡」
〇一人部屋
遥「ふう、間一髪」
望「大変な商売だなお前も・・・」
遥「誕生日とクリスマスとバレンタインとホワイトデーはちゃんと更新しないと、事務所に怒られちゃうから」
望「アリバイ作りってヤツ?」
遥「モデル友達とも口裏合わせて更新するんだから」
遥「一人の怠慢でみんなのアリバイが崩れちゃうのよ!」
望「そんなにチェック厳しいんだ、事務所って」
遥「まあ、事務所っていうか・・・」
望「ファンっていうか?オタクっていうか?」
望「おーおーすっげーな。こいつなんてシャツにお前の写真プリントしてら」
望「頭おかしーんじゃねーの?」
望「はははっ」
遥「もう!そういうこと言わないで!」
望「ゴメン。口、悪かったな」
望「でも俺、遥のことが心配なんだ。いつでもお前の力になりてーんだよ」
遥「望・・・」
望「遥・・・」
〇二階建てアパート
4・1
〇一人部屋
遥「嫌いになったわけじゃないんだよ。それだけは信じてほしいんだ」
望「ああ。分かってるって」
遥「ダンスとかお芝居とかさ、本気で取り組みたいの」
遥「でもこのままだと私いつまでも望に頼っちゃうと思う。だから・・・」
望「話、おわり?じゃあバイトだから先出るな」
望「鍵、ポストから落としといて」
遥「望!」
望「・・・」
望「困った事あったらいつでも連絡してこいよ。力になるからさ」
望「これからは友達として」
遥「ありがとう・・・」
望「はははっ」
〇コンビニ
園田「はあ?なんすかそれ?」
望「俺、思うんだよ。夢追いかけてる遥が好きだったんだって」
望「だからこれからは彼氏とか彼女とかより、もっと上の関係っつーか?」
園田「何すか、その上の関係って」
望「だからアイツもこれから愛だ恋だって言ってられない訳じゃん。そん時に何でも話せる存在になってやりたいって言うか」
園田「・・・」
望「あー、もういいや。お前に高尚な話した俺がクソだったよ」
園田「先輩」
望「んだよ」
園田「もうさ、次行きましょ。コンパ、セッティングしますんで」
望「お前頭ん中そんだけかよ。ガキっつーか、浅い人生っつーか」
望「仕事戻るぞー」
園田「ヘッ。カッケ~」
〇二階建てアパート
6・20
〇SNSの画面
『アイドルエンパイア定期報告書!今月のグラビアは、期待の新星美山遥が登場!』
「も、もしもし!」
〇一人部屋
望「は、遥?俺・・・」
『あ、こんばんは』
『何か沢山電話くれたみたいだけど・・・どした?』
望「あ、いや。あれから全然やりとりしてないからさ、俺ら・・・」
望「どうよ最近」
『うん。普通に頑張ってるよ』
望「そっか・・・困った事あったら言えよな。何でも相談乗るからさ」
『うん大丈夫。ありがとう』
望「・・・」
『・・・』
望「じゃあ、また」
『うんまた』
望「・・・」
望「くそが・・・」
望「・・・つって。ははは」
〇コンビニ
8・7
〇コンビニのレジ
望「・・・シールでいいですか」
ヤカラ「いいわけねーだろ袋入れろよ」
望「・・・」
ヤカラ「あ?睨んでんの?」
ヤカラ「いいよ外出ようか」
望「・・・すいません」
ヤカラ「すいませんじゃくてさ。出ろよ外」
望「・・・」
ヤカラ「・・・」
望「袋代合わせて506円になります」
ヤカラ「あ?」
望「す、すいません・・・」
ヤカラ「態度気い付けろよコラ」
望「・・・」
望「くそが」
〇二階建てアパート
10・22
〇一人部屋
『おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上・・・』
〇コンビニ
11・16
〇更衣室
園田「う~さぶさぶっ」
園田「あ、お疲れさまでーす」
望「・・・」
園田「・・・」
園田「行きます?合コン」
望「は?」
園田「何でもないっす」
望「ずっと気にかけてといてやんねーと」
園田「そういうの、もう愛情でも友情でもなくないっすか?」
望「大変なんだよ芸能界はよ!」
望「いつか苦しい時くっから。助けてやんねーとさ」
望「お疲れ」
園田「待ってるよあの人」
園田「元カノが苦しむの・・・」
〇二階建てアパート
12・24
〇一人部屋
望「ふふっ・・・」
望「ふふふっ・・・」
〇SNSの画面
『遥っちメリクリ~』
『メリークリスマス~。姫~』
『お仕事忙しくて更新できないんですね~。僕も頑張ります~』
〇一人部屋
望「遥も大変だな。こんな連中に見張られて」
望「あいつが更新しないのは・・・」
望「・・・」
望「・・・11時か」
望「・・・」
〇SNSの画面
『メリークリスマス!今日は大学の友達とパーティーでしたー』
『寂しい女子会で疲れちゃいました。もう寝ますね~』
『みなさんもHAPPYなクリスマスを~♡』
〇一人部屋
望「そうだよな・・・」
望「夢追いかけてる最中だもんな・・・」
望「ひひひっ・・・」
望「大事なオタクだろ・・・大事な金ヅルだろ・・・大事なブタだろ・・・」
〇SNSの画面
『ブタだろ』
『ブタだろ』
『なあ、ブタ・・・』
『おい、ブタ・・・』
『ブタ!ブタ!ブタ!ブタ!ブタ!』
〇手
『ブタ!ブタ!ブタ!ブタ!ブタ!』
〇コンビニ
2・14
〇更衣室
園田「お疲れさまでーす」
園田「・・・」
園田「な、何すかそのシャツ・・・」
ノゾミ「仕方なくだよ・・・アイツのためだ」
ノゾミ「気味悪いブタどもに囲まれて大変なんだから、そろそろ俺が元気づけてやらねーとな」
ノゾミ「いつも俺がついてるからって」
ノゾミ「いつも一緒だからって」
ノゾミ「さてと。参りますか」
ノゾミ「ひひひっ・・・」
園田「・・・」
園田「イカれてるよ」
〇レンタルショップの店内
ハルカ「本日は私のファーストブルーレイ記念イベントに集まってくれて有難うございまーす」
ハルカ「これは私の全部が詰まってるっていうか、全力を出し切った作品です」
ハルカ「私からのバレンタインプレゼントだと思って受け取って下さい」
ハルカ「・・・」
ノゾミ「大変だな~ハルカも~」
ハルカ「・・・」
ノゾミ「ま、俺が来たからにはもう大丈夫だからさ」
ハルカ「ノゾミ・・・」
〇ハート
ノゾミ「本当はこんなダサい恰好したくないけど」
ノゾミ「思い切って、シャツにハルカの写真プリントしてみたよ」
ノゾミ「いつも一緒にいられるようにさ」
ノゾミ「いつも見守ってやれるようにさ」
ノゾミ「ひひひ・・・」
ノゾミ「ひひひひひ・・・」
ノゾミ「いつでも見守っててやるよ」
ノゾミ「全く、しょうがーねーな」
〇ハート
「ひひひひっ・・・」
望君の狂気っぷりが恐ろしいですね。”好き”の熱量を維持し続けると、このように転落(?)が待っているのですね。本人からしたら昇華なのかもしれませんが、、
望君がだんだん可哀そうな存在になってきて、最後のシーンでこちらまで情けなくなってしまいました。人を好きになることって素敵なことだけど、自分を見失ってはだめですね。
アイドルのファンで過剰な人は、こんな人がいそうです。元カレとなると、自分は特別って思ってそうだし…。なによりも、生きてる人が一番怖いですねー。