隣のかなちゃんは、私を彼女にしてくれない

椎名つぼみ

読切(脚本)

隣のかなちゃんは、私を彼女にしてくれない

椎名つぼみ

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〇テーブル席
奏「他のヤツに、簡単にベタベタ触らせるなよ」
  幼馴染みのかなちゃんは、そう言うと、ちょっと不機嫌そうにコーヒーを飲んだ。
リコ「ベタベタって、さっき男子に肩を組まれたこと?」
リコ「あれはただのコミュニケーションで」
奏「それでもダメ。 危なっかしいんだよ、リコは」
リコ「また、子供あつかいして~。 私だってそろそろ、彼氏とか欲しいんだよ?」
奏「なっ・・・」
奏「カレシ作って、何がしたいわけ?」
リコ「え? それは・・・ 一緒にご飯食べたり、遊びに行ったり、イベントで盛り上がったりかな」
奏「だったら、オレがいるじゃん」
リコ「・・・じゃあ、かなちゃんの彼女にしてよ」
奏「・・・・・・」
  私の言葉に、彼は困った顔で黙りこむ。
リコ(これを言うと、いつもこう)
リコ(かなちゃんは私を、恋愛対象には見てくれない・・・)
奏「まだ早いよ。今じゃない」
リコ「なによぉ。 1つ下だからって、いつまでも妹扱いしないで」
奏「そんなんじゃないけど。 ただオレ達には、カレカノなんていう関係は必要ないと思って──」
奏「あ~えっと、ほらリコ。 オレの分も食べなよ。好きでしょ?」
リコ「また、そうやって誤魔化すんだから」
リコ(16年間、こっちはずっと好きなのに・・・)
  いつも隣にいるはずのかなちゃんは、私を彼女にしてくれないんだ。

〇線路沿いの道
奏「あのさ、土曜って空いてる? どうしても朝イチで、リコに会いたいんだけど」
  ある日の通学路で。
  彼は珍しく、ちょっとだけ緊張を見せた。
リコ「え? もちろん大丈夫だよ。 だってその日は・・・」
  かなちゃんの18歳の誕生日。
リコ(お祝いしたいって思ってたもん♥️)
奏「良かった。 パークのチケット取ってあるんだ」
奏「昼は遊んで、夜はパレード観て。 好きそうなレストランも予約しておいたから」
リコ「夢みたいな1日だね! でも・・・」
リコ「かなちゃんの誕生日なのに、私ばかり幸せなような」
奏「いいんだよ。 その為にバイトしてたんだし」
奏「リコが楽しいと、オレも楽しいから」
リコ(相変わらず優しい)
リコ(一緒にいられるなら、このままでもいいのかな・・・)

〇ショッピングモールの一階
リコ(プレゼントもばっちり❤️)
  明日は待ちに待ったデート。
  準備の為に、1人で買い物をしていると──
奏「あ、リコ」
  友達と歩いていたかなちゃんに、バッタリと会った。
奏「偶然だな。買い物?」
リコ「ちょっとね!」
奏「ふ~ん。 あ、その袋。 オレの好きなショップのやつ」
奏「フッ。 楽しみにしてる」
リコ(こっちこそ、だよ)
男子「おーい、奏。 そのカワイイ子誰よ?」
女子「・・・」
奏「幼なじみの、リコ。 こっちはバイト仲間」
男子「へぇー、彼女じゃねーの?」
奏「違うって」
女子「可愛いのにね、中学生みたいで」
リコ(・・・何かトゲがあるような)
リコ「じゃあ、私はこれで!」
  立ち去ろうとすると、
男子「え~、待ってよ!」
  男の子が、強引に私の左手をつかむ。
男子「今からメシ行くから、君も来なよ」
リコ「でも・・・」
奏「おい。それ離せ」
男子「へ?」
奏「リコの手。 気安くつかむなよ」
男子「わ、わりぃ・・・」
奏「リコ、早く帰りな。 夜に電話するから」
リコ「うん・・・」
女子「超過保護! まるでお兄ちゃんね」
奏「そんなんじゃねーけど。 リコはまあ、家族みたいなもんだから」
リコ(家族・・・)
リコ「違うよ! 私はかなちゃんの妹じゃない!」
奏「え? リコ?」
リコ「そう思ってるなら、明日は行けないから」
奏「待っ・・・」
  彼の手を振り払い、私は逃げるようにその場を立ち去った。

〇可愛い部屋
リコ(ケンカしちゃった。 あとちょっとで、かなちゃんの誕生日なのに・・・)
  力なく机に突っ伏していると──
  日付が変わる前に、かなちゃんから電話がかかってきた。
奏「遅くにゴメン。もう寝てた?」
リコ「・・・ううん。 まだ起きてたよ」
奏「どうしても今、話したいことがある。 少し出てこれないか?」

〇田舎の公園
奏「今日のこと── 傷つけたなら、ゴメン」
  かなちゃんはそう言って、小さく唇を噛んだ。
リコ「もう、いいよ。 だって、私が彼女じゃイヤなんでしょ?」
奏「違う。逆なんだ」
奏「俺はそんなんじゃ足りない。 リコともっと、強い絆が欲しくて」
リコ「え?」
奏「カレカノじゃ、くっついたり離れたり。 そういうの簡単だろ?」
奏「気まずくて会えなくなったりしたら、それこそ耐えられないから」
リコ「どういう意味?」
  そう問いかけてすぐ、彼の腕時計からアラーム音が響く。
リコ「あ、0時!? えっと、かなちゃん。 とにかく、18歳のお誕生日おめでとう!」
奏「うん、サンキュー。 これでやっと言える・・・」
  かなちゃんは穏やかに笑むと、ポケットから小さな箱を取りだした。
奏「ねー、リコ。 俺の気持ち、受け取って」
リコ「指輪? コレって・・・」
奏「本当は明日、夜景でも見ながら渡すつもりだったんだけど・・・」
奏「結婚しよう。 オレはリコとずっと一緒にいたい」
奏「彼女をすっとばして、家族になってよ」
リコ(かなちゃん・・・)
リコ「うん! 喜んで」
  大きく返事をすると、彼は嬉しそうに笑って私をギュッと抱きしめてくれた。
奏「ヨッシ!」
リコ「ふふっ」
奏「じゃあ早速。 挨拶に行って、婚姻届を出して──」
リコ「待って! すぐには結婚できないよ? 私、まだ16歳だから」
奏「え?」
リコ「だって今年から、女の子の結婚年齢も18歳以上に変わったよね?」
奏「えぇー!?」
リコ「でももう、キャンセルはきかないからね! とりあえず、彼女にしてくれる?」
奏「うーん。 それじゃ、ちょっと弱いから・・・」
奏「婚約者ってことでOK?」
リコ(・・・幸せだけど)
  かなちゃんはけっきょく最後まで、
  私を彼女にはしてくれないみたい。
  ~ Fin ~

コメント

  • かなちゃん18歳を待って満を持してのリコちゃんへのプロポーズ。成功してやった!と思ったら、まさかの女性は結婚年齢は16歳から18歳への引き上げで結婚できない……。
    確りしているようで少しおっちょこちょいな、かなちゃんのギャップにキュンとしてしまいました。

  • かなちゃんの想い、優しさ、嫉妬、サプライズ。
    たくさんの胸キュン要素が詰まっていて、彼の想いが伝わってくる度に切なくもキュンキュンさせていただきました!
    18歳だと将来を考えるには少し早い気もしますが、かなちゃんのヒロインを思う気持ちに夢のある展開が可愛らしかったです😊
    2年後、二人が幸せな結婚を迎えられますように!

  • 自分には幼馴染がいたことはないのですが、中々恋への発展は難しいのですかね…。
    確かに一緒にいる時間が長ければ長いほど、相手の気持ちとかもわかるようになってしまいますが…。
    嫉妬からの恋、いや、元々好きだったんだろうなぁ。不器用なんですね!

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