秘密の執事はクラスメイト

石塚環

秘密の執事はクラスメイト(脚本)

秘密の執事はクラスメイト

石塚環

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〇ジャズバー
城田 晴香「ついに来た・・・!」
城田 晴香「憧れの執事喫茶に!」
城田 晴香「これがリアル執事!顔面偏差値が高い!さすがローズプリンス!」
城田 晴香(ネット予約、大変だったなあ。願掛けで半年くらい、卵焼きを抜いてたっけ)
城田 晴香「今日は楽しむぞ!」
城田 晴香「うしろから、誰かが近づいてくる・・・」
城田 晴香「私の担当執事だ・・・!」
城田 晴香(細マッチョ?ロマンスグレー?まさかの俺様系?)
「晴香お嬢様。本日お勤めする執事はお任せということなので、私が担当いたします」
城田 晴香(あれ、どこかで聞いたことがある声だなあ)
城田 晴香「蓮!?」
竹内 蓮「晴香!?同じ名前だと思ったら、おまえだったか!?」
竹内 蓮「チェンジ!チェンジ!」
城田 晴香「ちょっと!執事なのに、客をチェンジする気!?」
竹内 蓮「そ、そうだな・・・」
竹内 蓮「は、晴香、お、じょうさま・・・」
竹内 蓮「笑うな!・・・じゃなかった、笑わないでください、私は真剣なんですよ・・・」
竹内 蓮「本日はお越しくださり、まことにありがとうございます・・・」
  プルプル震えながら、挨拶する青年執事。名前は竹内蓮。
竹内 蓮「晴香。クラスのみんなには、いうなよ。頼むから・・・」
  彼は、私の幼なじみでクラスメイトだ。

〇教室
  翌日
竹内 蓮「はーるーかー!!」
城田 晴香「ちょっと、執事の次は壁ドン!?今日も乙女向けコンテンツみたいに行動するの!?」
竹内 蓮「偶然だ、偶然!それより、その言葉!学校では禁止!」
城田 晴香「なにが?壁ドン?」
竹内 蓮「ちがう、その前!」
城田 晴香「ヒツジ?」
竹内 蓮「ちがう!執事だ、俺が執事だってことを・・・!」
竹内 蓮「ゴ、ゴホン!」
竹内 蓮「屋上で話そう」

〇学校の屋上
城田 晴香「どうして、みんなには秘密なの?執事喫茶で働いてること」
竹内 蓮「俺のガラじゃないだろ、執事なんて・・・」
城田 晴香「そんなことない!!」
竹内 蓮「え?」
城田 晴香「執事の蓮、キラキラしていたよ!」
竹内 蓮「晴香・・・」
城田 晴香「オーダーを受けたら、一瞬イヤな顔をしても笑顔で応対するところとか!」
竹内 蓮「・・・おい」
城田 晴香「長い上着の裾からチラチラ見える、筋肉質なお尻とか!」
竹内 蓮「おい」
城田 晴香「まさに私の理想の執事!」
竹内 蓮「晴香が考えている執事のイメージって変だぞ」
城田 晴香「そっくりなのよ、大森執事に!」
竹内 蓮「誰だ?大森執事って」
城田 晴香「私の推しキャラよ!『執事大森てんこもり!』のメイン攻略キャラ!」
竹内 蓮「学校にゲーム持ってきてんのかよ・・・」
城田 晴香「まーまー、細かいことはいいから!ほら、この赤い髪の執事!」
竹内 蓮「うわ、えらそうな顔だなあ。こんな目つきで応対したら、店長に怒られるだろうな・・・」
城田 晴香「ちょ、店長っていわないで!?執事喫茶なのに!」
竹内 蓮「晴香。執事喫茶っていうのは、少し接客サービスがある普通の飲食店だぞ?」
城田 晴香「こらこらこら!全国の執事萌えの夢をぶち壊すことをくちにしないで!!」
竹内 蓮「俺、まかない目当てで、執事喫茶でバイトしてるんだ」
城田 晴香「まかない!?バイト!?」
城田 晴香「あ〜、私の理想の執事が、食べ物につられた雇われ執事だなんてショック・・・」
竹内 蓮「晴香?おーい、晴香?」
竹内 蓮「・・・まあ、そろそろ執事は辞めるかもしれないんだけどさ」
城田 晴香「え、どうして!?」
竹内 蓮「三ヶ月に一回、ローズプリンスで執事人気投票があるんだよ。俺、四回連続で一票ももらえなくてさ・・・」
城田 晴香「そりゃあ、無愛想な執事なら一般ウケはしないよね・・・」
竹内 蓮「次、誰からも投票されなかったら、辞めなくちゃいけないんだ。そういう決まりになってんの」
竹内 蓮「あーあ。あそこ、まかないうまいから、いいバイトなんだけどなあ・・・」
城田 晴香「決めた!」
竹内 蓮「え?」
城田 晴香「私が、蓮をステキな執事にしてみせる!目指すはリアル大森執事・・・いえ!」
城田 晴香「生きながらにして伝説と呼ばれるような、全国の女性の夢と希望をつめ込んだ最高の執事にする!」
竹内 蓮「マ、マジかよ・・・」
城田 晴香「その言葉!」
城田 晴香「言い直して?」
竹内 蓮「ほ、本気でございますか・・・」
城田 晴香「よくできました」

〇学校の廊下
竹内 蓮「はあ、学校でも執事になるのか。俺は・・・」
城田 晴香「そうよ! トイレ、お風呂、就寝。いつだって執事マインドを忘れずに!」
竹内 蓮「スパルタだなあ。わかった、わかった」
城田 晴香「蓮。「わかった」じゃなくて・・・」
竹内 蓮「・・・かしこまりました。晴香お嬢様」
城田 晴香「そ、そんな・・・不意打ちのお嬢様呼びは・・・」
竹内 蓮「ん、恥ずかしいのか?」
竹内 蓮「へえ・・・」
城田 晴香「ええぇ!?蓮、どうして跪く(ひざまずく)の!?」
竹内 蓮「やるなら、徹底的にやるのがいいんだろ?」
城田 晴香(蓮が私の手を取った・・・)
竹内 蓮「お嬢様の心を満たすのが、私、執事の仕事でございました。未熟者であるがゆえに至らなかった点が多かったですね」
城田 晴香(なんで・・・真剣になったら、普通に丁寧な言葉遣いができるの、蓮・・・!?)
竹内 蓮「私はあなたに従います。なんなりと申し付けください。晴香女王様!」
城田 晴香「・・・え」
竹内 蓮「・・・ん。俺、変なこといったか?」
城田 晴香「いま、女王様っていったよ!?」
竹内 蓮「しまった!だって晴香があれこれ要求するからさー」
城田 晴香「もう、蓮!やり直し!」
竹内 蓮「はいはい、女王様ー」
城田 晴香「ちょっと!」
  この日から、『竹内蓮は城田晴香の下僕』という噂が立ってしまった

〇可愛らしい部屋
  帰宅すると・・・
城田 晴香「当たれ、当たれー!」
晴香のスマホ「『ローズプリンス当選のお知らせ』 城田晴香様。執事喫茶ローズプリンスのお席をご用意いたしました」
城田 晴香「やった!」

〇ジャズバー
  執事喫茶ローズプリンス
城田 晴香「蓮、スマイルを忘れずに!」
竹内 蓮「は、しまった」
城田 晴香「乙女がキュンキュンする、薔薇が咲き乱れるようなスマイルをして!」
竹内 蓮「すまーいる〜!」
  ローズプリンスに行くと、蓮にアイコンタクトを送る日々・・・
  蓮はどんどん変わっていった
城田 晴香「蓮、かっこよくなったね!」
竹内 蓮「ありがとう、晴香!」

〇学園内のベンチ
  昼休み
城田 晴香「蓮。パン食べないの?」
竹内 蓮「ちょっと執事マインドについて考えていたんだ・・・って、おぉ!」
竹内 蓮「晴香の手作りサンドイッチ、うまそう!ほんと料理うまいよな、晴香って」
城田 晴香「じゃあ、食べる?」
竹内 蓮「え、いいのか?」
城田 晴香「うん。執事ごっこにつきあってくれるお礼だよ」
竹内 蓮「『ごっこ』じゃねえよ」
城田 晴香「え」
竹内 蓮「いつもドレスアップして、執事喫茶に来てくださりありがとうございます」
竹内 蓮「私たち執事に会うために着飾っているんですよね。皆、喜んでいますよ」
竹内 蓮「私は、いらぬ感情を抱いてしまいましたが・・・」
城田 晴香「蓮、いらぬ感情って・・・?」
  蓮は私の両手を取った
竹内 蓮「執事として抱いてはいけない心、男としては当たり前の気持ちでございます」
竹内 蓮「・・・いや、この想いは、執事になる前から私のなかでくすぶっていた。輝くお嬢様を見て、いっそう強くなっただけなんです」
城田 晴香「それって、蓮は私のこと・・・?」
竹内 蓮「・・・執事の言葉って、便利だな」
竹内 蓮「こんな俺でも、はっきり言葉にできる・・・ずっといえずにいた想いを伝えられた・・・」
竹内 蓮「晴香、好きだ」
城田 晴香「え、ええぇ・・・」
竹内 蓮「俺はもっと、晴香とふたりきりの時間をつくりたい。みんなに愛想を振りまくのは、もういやだ」
竹内 蓮「晴香お嬢様。執事のわがままを叶えてはくれませんか?」
城田 晴香(また執事口調・・・ズルいよ、蓮)
城田 晴香「はい・・・私も好き・・・私ができることなら・・・」

〇ジャズバー
  執事人気投票の日
城田 晴香(今日は、蓮が執事になる最後の日・・・)
竹内 蓮「この衣装、なんか恥ずかしいな」
城田 晴香「似合ってるよ!」
城田 晴香(ローズプリンスの執事は、最後の仕事では特別な衣装を着る・・・)
城田 晴香「やったね、蓮!人気一位だよ!」
竹内 蓮「晴香のおかげだよ!」
竹内 蓮「私と踊っていただけませんか、晴香お嬢様」
城田 晴香「よろこんで!」
竹内 蓮「晴香お嬢様」
城田 晴香「なあに?」
竹内 蓮「私は執事として勤めたことを悔やんではおりません。このことがきっかけで、お嬢様に近づけたんですから」
城田 晴香「私も!ローズプリンスに来てよかった!・・・あ、そうだ。蓮。明日からお弁当作ってあげる」
竹内 蓮「いいんですか?」
城田 晴香「うん!ローズプリンスの抽選が当たるように、願掛けで、卵焼き抜きのお弁当にしていたの」
城田 晴香「明日からはふたりで食べよう?卵焼きをおなかいっぱい!」
竹内 蓮「晴香、うれしいよ。ありがとう」
城田 晴香「あのね。私の好きな大森執事は、ハッピーエンドだと執事を辞めちゃうの。やっと理由がわかったよ」
城田 晴香「たったひとりの好きな人に向き合うためなんだね」
竹内 蓮「俺たちとおんなじだな!」
  こうして、秘密の執事は、私の特別な人になりました。

コメント

  • とても可愛らしい二人でこちらが微笑ましくなりました。現実とはかけ離れた感じがして、それもまたイメージの世界が膨らみ楽しかったです。

  • とっても可愛い2人ですね!冒頭の喫茶での出会いのリアクションなんか特に。”非日常”空間にいる時にふと”日常”が入り込んだらこうなっちゃいますよねw

  • とっても素敵なキャラクター設定ですね! 女性の観点からして、日本にキャバクラや性産業が多く存在することは日本人女性の価値をどんどん下げていく気がするのですが、こういう喫茶ができると男女共にその空間だけでも高貴な振舞うことができそうで実現したらいいのに!

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