読切(脚本)
〇草原の一軒家
「大変です、社長!!」
〇公衆トイレ
従業員「実にマズいことに・・・」
社長「どうした? でけー声、出して・・・」
従業員「ギャ——ッ!! 殺人鬼!」
社長「誰が殺人鬼だ!」
社長「勤めてる会社の社長の顔も、知らないのか!」
従業員「そんな姿の社長が、どこにいる! ってか、顔見えねーし!」
従業員「変な格好してないで、元の姿に戻って下さい・・・」
社長「しゃーねーな・・・」
社長「これでいいのか?」
従業員「子供社長かよ!?」
従業員「我が社の社長が子供だったとは・・・」
社長「キュンとしたろ?」
社長「いわゆるギャップ萌えってやつだ」
従業員「ギャップあり過ぎだろ・・・」
社長「(まぁ本当は例のキャラを使うつもりだったが、手違いで公開されてたようで、すでに使えなくなってて・・・)」
従業員「何、ボソボソつぶやいてるんですか?」
社長「なんでもない、なんでもない 気にしないでくれ・・・」
社長「んで、何が大変なんだ?」
従業員「我が社のサービスが炎上しています!」
社長「何!?」
〇公衆トイレ
社長「我が社のサービスってのは、動画をアップすることで自動でゲーム小説に変換されるサービスの事だな!」
従業員「ええそうです!」
従業員「決して、素材を自由に組み合わせることで、誰でも簡単にゲーム小説を公開することができるサービスの事ではありません!」
社長「誤解を防ぐ説明、どうもありがとう!」
〇公衆トイレ
社長「そうか炎上してるのか・・・」
社長「待ってろ、消化器持ってくる!」
従業員「消せるか、そんなんで!! ベタなボケやめろ!」
社長「ただの冗談だろ〜」
社長「それで何が原因で炎上してるんだ?」
従業員「前回、我が社のサービスで募集したコンテストの、予選通過作品に関してですよ」
従業員「やれ「あの作品が選ばれてないのはオカシイ」だとか」
従業員「「前々回までの読者投票の方がよかった」だとか・・・」
従業員「とにかく荒れています!」
社長「そんなん無視したって問題ないだろ・・・」
従業員「ダメです、ハッキング予告までされてます!」
従業員「アノニマスから」
社長「アノニマスだと!?」
社長「国際的ハッカー集団から犯行予告されたか そいつは厄介だな・・・」
社長「どうすれば炎上を抑えられる?」
従業員「そうですね・・・」
従業員「”詫び石”代わりの”詫び無料チケット”を配る、というのはどうでしょう」
社長「ソシャゲの対応を参考にか・・・」
社長「いやダメだ・・・」
社長「それをすると有料会員の増加が見込めなくなる」
社長「何たって金が無いからな、我が社は」
従業員「知ってます・・・」
従業員「だって・・・」
「オフィスが元公衆便所ですからね!」
従業員「なんで便所なんだ・・・」
社長「破格の値段だったんだ わかってくれ・・・」
社長「でも、トイレが近くて便利だろ?」
従業員「目の前になくてもいいんだよ!」
従業員「なんでそんなにカツカツなんですか?」
社長「そりゃユーザーを増やすには、設備投資と開発費に金を回すのが重要だからな」
社長「コンテンツを快適に楽しむためには、サーバーの増設が必要だし」
社長「魅力的な素材を用意することで、クリエイターを引きつける」
社長「良質な作品が生まれればユーザーが増え、我が社もうるおうってわけだ」
従業員「それは分かるが、従業員の扱いは雑でいいのかよ・・・」
社長「・・・」
社長「・・・・・・」
社長「こんなことを話してる場合ではない! 今は炎上対策だ!」
従業員「話をそらしやがった・・・」
従業員「それでは選考方法を、オープンにできる範囲で公開するってのはどうです?」
社長「フム、なるほど・・・」
社長「選考方法に納得すれば炎上は収まるし、今後のコンテスト応募作のクオリティアップも見込める」
社長「しかもだ、チケット配信にすれば有料会員も増やせるぞ!」
従業員「さすが社長! (お金に汚い)」
社長「いや〜、それほどでも」
社長「・・・今、小声でバカにしなかった?」
従業員「さっそく撮影の準備に取りかかりましょう」
〇ハチ公前
社長「オイオイ、人でごった返してるぞ!」
従業員「コロナのまん延防止等重点措置が解除されましたからね」
従業員「この人だかりでは撮影できませんね」
社長「そうだな・・・」
社長「どっかの国の極超音速ミサイルがここに着弾して、人々を蹴散らしてくれないかな・・・」
従業員「サイテーだなお前!! ってか、わたし達も死ぬぞ!」
社長「冗談だって〜」
社長「安心しろ、こいつを使えば解決できる」
従業員「なんですか、それ?」
社長「『タップウォッチ』」
社長「我が社で秘密裏に開発されてるデバイスだ」
社長「こいつを使うと、エフェクトを現実世界に投影することができる!」
従業員「なんか、どっかで見たことあるデバイスと説明の組み合わせなんだが・・・」
社長「実演して見せよう」
社長「「画面効果エフェクト」から「爆発」をオン!」
〇荒廃したハチ公前
社長「どうだ、すごいだろ!」
社長「ムッ、威力が強すぎたか?」
従業員「街がボコボコじゃねーか!!」
従業員「どうすんですか、こんなんじゃ撮影できませんよ・・・」
社長「心配するな、右上を見ろ」
従業員「右上?」
社長「横に三本線のアイコンがあるだろ」
従業員「あぁ・・・ありますね」
社長「そっからな「前のシーンへ」をタップするとだ・・・」
〇ハチ公前
社長「時間を巻き戻せる」
従業員「この世界の物理法則どうなってんだよ!?」
社長「戻ったところで改めて、「自然現象エフェクト」から「ブラックホール」を・・・」
従業員「同じ過ち!!」
従業員「もっと穏やかな対処法はないんですか・・・」
社長「そんじゃ「文字エフェクト」からこいつを・・・」
社長「よし、人が消え失せた 撮影開始だ!」
従業員「最初からそれ使えよ・・・」
〇空
そして撮影は順調に進み——
〇ハチ公前
社長「疲れたな、いったん休憩にしよう」
社長「コンビニでコーヒー買ってきてくれ ホットでな」
従業員「わかりました」
〇ハチ公前
従業員「お待たせしました・・・」
従業員「オッとつまずいた!」
バシャッ
社長「アッツ!!」
社長「気をつけろよ、腕にかかったぞ!」
従業員「失礼しました 買い直してきます」
社長「そうしてくれ」
社長「いや待て・・・」
〇ハチ公前
社長「日が落ちてきたな・・・」
社長「コーヒーはあきらめて撮影を再開しよう」
従業員「分かりました」
〇ハチ公前
社長「なんだよ、雨が降ってきたぞ」
従業員「小雨程度なんで、このまま続けましょう」
〇ハチ公前
社長「オイオイ、激しくなってきたぞ!」
従業員「おかしいですね・・・」
従業員「そもそもこの時間帯、雨予報でしたっけ?」
社長「タップウォッチで調べてみるか」
社長「こいつは、ちょっとした調べ物もできるんだ」
社長「おかしい、反応しない・・・」
社長「ってか、「背景エフェクト」の「雨」が勝手に選択されているぞ!?」
〇ハチ公前
従業員「お待たせしました・・・」
従業員「オッとつまずいた!」
バシャッ
社長「アッツ!!」
社長「気をつけろよ、腕にかかったぞ!」
〇ハチ公前
社長「もしや、あの時コーヒーがかかって壊れたんじゃ・・・」
社長「しゃーねー、引き上げるか」
従業員「何言ってんですか!」
従業員「あと少しで撮り終わるんで、ガマンして下さい!」
社長「えぇ・・・」
〇ハチ公前
社長「今度は・・・「雪」が・・・選択されたぞ・・・」
社長「なんだか・・・眠く・・・なってきた・・・」
従業員「わたしだって寒いんです! 文句ばっか垂れずに、撮影しますよ!」
社長「オレを・・・殺す気か・・・」
〇ハチ公前
社長「ハッ!」
社長「突然、天気が回復したぞ しかも明るく・・・」
従業員「どうやら、タップウォッチの電池が切れたみたいですね」
従業員「夜になってたのもエフェクトの効果で、実際はまだ日中だったようです」
社長「そうか、とにかく助かった」
社長「撮影を続行だ!」
〇草原の一軒家
〇公衆トイレ
社長「そんじゃ急いでオレのアカウントから動画をアップして、ゲーム小説に変換しといてくれ」
従業員「分かりました」
社長「・・・そういえばタップウォッチ、電池切れてたな」
社長「充電しとこう」
従業員「・・・エッ!?」
従業員「故障したまま充電したら、また変なエフェクトが発動するのでは・・・」
〇公衆トイレ
社長「ウワアアアッ!!」
社長「「背景エフェクト」の「炎」が選択されたーッ!」
社長「ヒエエエッ!!」
社長「「アイテム」から「爆弾」がーッ!」
〇黒
「ギャ———ッ!!」
〇荒地
ピロン♪
社長「フフフ、見ろ」
社長「オレの投稿が総合1位になったぞ」
従業員「会社がぶっ飛んだってのに、喜んでる場合か!!」
〇大きな木のある校舎
〇教室の教壇
モモ「ってストーリーを考えたんだけど、どうかな?」
カッキー「ダメに決まってんだろ!! いい加減にしろ!」
子供社長可愛いかったです❤️
あと、サウンド入れてけろ❤️
ずーっと気にはなっていたんですけどね。読んだら負けかな(誰に?)と敬遠してましたが、やっぱり読んじゃいました(笑)
ちゃんと元ネタ・・・元ネタって言っちゃまずいかな、例の1位をなぞりつつオリジナルのお話に仕立てるシナリオ技術が良いですね。画面は崩壊したりしてますけど、シナリオの流れは崩壊させずに最後まで作られてて、なんだか感心してしまいました。
タップノベルが盛り上がってくれるといいなー。
例のギアが出てきて吹きました 笑
伊達に例の作品ぽいタイトルだったわけじゃなかったんですね~
社屋が公衆便所とか悲惨すぎる…
廃墟になったハチ公像周辺の背景なんてあったんだ…
等々、いろいろたまげました 笑
地味に気になってた雨雪も回収されてスッキリです! 笑