冷凍庫から始まるカンケイ(脚本)
〇黒
フンフフーン~♪
ゴソゴソ
ガチャッ
〇女の子の一人部屋
私「ただいま~」
私「って、誰もいないか(笑)」
季節は夏
7月になったばかりだと言うのに、真夏かと思うほどに暑い
セミもうるさい
私「ひぃいあっつい!クーラー!クーラー!」
靴を脱ぎ捨て、スーパーで買って来た袋を玄関に置き、エアコンをつける
袋の中で何かがゴトンと倒れた気がしたが、きっと大丈夫
今はそれより暑い!!
──ピピッ
私「あああ~~生き返るぅぅ」
エアコンから出てくる冷風を浴び、脱力する
私「ふぅ、、、」
私「しかし夏になったからって本気出しすぎだよね!?もっとこう、段階的にさぁ!」
誰に届くわけでもない文句をブツブツと言い、玄関に向かう
アイス、はやく冷蔵庫にしまわないと
シンクの上に買ったものを取り出しながら、アイスを探す
あった!
よし
ファミリー用の箱アイスを掴み、
そのまま冷凍庫へ!
、、、入れたかった
私「はぁ?また?」
冷凍庫には既にビッシリとアイスが詰められており、新しくアイスを入れるスペースなんてなかった
私「もう!」
私「好きに使っていいって言ったけど、これはないでしょ!?アイス屋でも開くつもりかっつーの!」
またまた1人で文句を言いながら、アイスの箱をまとめて、潰して、なんとかスペースを作っていく。
その時だった
ピンポーン
──チャイムの音
、、、間違いない、あいつだ!
サイトウくん「お邪魔しま~す!」
鍵を空けると、アホ面の男が入ってきた
サイトウくん「うひぃ~あっつい!」
彼の名前はサイトウ
同じ大学、同じ学部の同級生だ
サイトウくん「ねぇねぇ、アイスある??あるよね?」
私「あるよ、、、沢山!」
サイトウくん「うっひょー!!そうこなくっちゃ!」
靴を脱ぎ捨て、キッチンへ向かう
サイトウくん「どれにしようかな~♪今日の気分は~♪」
サイトウくん「んーーー♪」
サイトウくん「あれ?」
私「どうしたの?」
サイトウくん「なんかアイス減ってない?」
私「減ってない!」
私「あんたが適当に箱のまま入れるからスペースなくなってたんでしょ!?」
私「そ、れ、を、誰が片付けたと思ってるの!!」
ワナワナワナ、、、
サイトウくん「そ、そっか。それは悪い事をした、、」
サイトウくん「おわびに、好きなのいっこ食べていいから」
私「そうさせて頂きます!」
私は一番高いアイスを選び、勢い良くドアを閉めた
「あっ、それ俺が食べたかったやつ、、、」とか聞こえてきたけど、無視してテーブルに着く
サイトウくん「んじゃあ、俺はこれにしようかな?」
サイトウ君もテーブルに座る
そのアイスはさっき私が買ったやつだ
まあいいけど
サイトウくん「モグモグモグ!」
私「モグモグ」
サイトウくん「モグモグモグ!」
私「モグモグ」
アイスを食べる沈黙が続く
私「で、いつまで?」
サイトウくん「モグモ、、、いつまでって?」
私「冷凍庫。ずっと使われてても迷惑なんだけど」
サイトウくん「あぁ~」
先々週の事だ
男子寮の冷凍庫が壊れたらしい
「これから暑くなるのにお気の毒」なんて思ったけど、
思っただけにすれば良かった
でも、
〇黒背景
サイトウくん「俺のアイスがぁ、、、 夏の楽しみがぁ、、」
〇女の子の一人部屋
教室で本気泣きしてるサイトウ君があまりにも可哀想で、可笑しくて
つい
「良かったら、ウチの使う?」
──それからと言うもの「冷凍庫を貸し借りする」という奇妙な関係になってしまった
いや、この占領っぷりは「冷凍庫ドロボウ」と言っても過言ではない
私「これから夏季休暇に入るし、色々と予定もあるでしょ?」
私「そんなにしょっちゅう来れないと思うんだ」
サイトウくん「あぁ、、、そっか」
サイトウくん「予定ってさ、沢山入ってるの?」
私「なっ、、、そりゃあ華の女子大生だもん!色々と忙しいわよ!」
ウソだ。ほんとは忙しくなんかない
私「友達とショッピングでしょ、友達と映画に行くでしょ、友達と、、、色々よ!」
サイトウくん「ほんとだ、忙しそう」
サイトウくん「俺は何も予定ないからなぁ」
私「、、、へぇ意外」
私「サイトウ君、彼女とかいないの?」
サイトウくん「いない、かな」
私「気になってる人は?」
サイトウくん「うーん。いるけど、どうなんだろね?」
私「どうって?」
サイトウくん「向こうがどう思ってるか分からないんだ」
サイトウくん「悪くは思われてないんだろうけど、じゃなきゃ」
私「じゃなきゃ?」
サイトウくん「いや、なんでもない」
私「もう、気になるじゃん!」
サイトウくん「へへっ、内緒」
私「そっか、、、」
私「内緒か~」
サイトウくん「、、、」
サイトウくん「、、」
サイトウくん「、」
サイトウくん「あのさ!」
私「は、はい!」
サイトウくん「今度、俺とアイスデートに行かない?」
私「えっ!?あっ、、」
私「アイスデート!?」
サイトウくん「そう!」
私「ど、どういう事???」
サイトウくん「だから、アイスを食べるデート!」
私「は、はい」
サイトウくん「原宿でもシモキタでもどこでもいい!アイスを食べて2人でデートしたい!」
サイトウくん「サーティワンをはしごしたりとか!」
サイトウくん「2人で、、、どっか行きたい」
私「そっか、、、」
私「、、、」
フフッ
私「ありがとう」
私「でも、サーティワンのはしごは嫌だなぁ(笑)」
サイトウくん「!」
サイトウくん「それって!」
私「行こう、アイスデート!」
サイトウくん「よっしゃあぁ~~~」
サイトウくん「行きたい所、いっぱいあるんだ! 原宿とか池袋とか!それに新宿が以外と穴場でさぁ~!」
私「ちょっと! そんなに食べたらお腹壊しちゃうでしょ(笑)」
サイトウくん「それもそっか」
サイトウくん「じゃあ、たまには映画とか遊園地とか、アイス意外のデートもして、、、」
私「サイトウ君! 私そんなにアイス好きじゃないから!(笑)」
サイトウくん「えー!好きなんだと思ってた!」
サイトウくん「アイス好きの同志だから、冷凍庫貸してくれてたんだと思ってた」
私「そ、それは、」
サイトウくん「あれ?でもそれじゃあどうして貸してくれたんだろ?」
私「わーーーーーバカ!考えなくていい!」
私「サイトウ君はアイスの事だけ考えて!」
サイトウくん「お、おう!」
サイトウくん「、、、フフッ」
私「、、、フフッ」
2人「ハハハハハハハッ」
なんだか、楽しい夏になりそうです
完
ふふ、読んでいてニマニマが止まらなかったです~
サイトウくんを「アホ面」と一蹴りしたヒロイン、心の内は……と後から想像して、読み進めれば進めるほど二人の本心にキュンキュンしました!
アイスデートなんて行ったら、冷凍庫減らないですね……(笑)
たくさんのキュンをありがとうございました!
ゔっ……眩しい………
微笑ましくてニコニコしながら読みました♡(o^^o)
2人のこれからの夏の過ごし方が楽しみになりますねー!!!!!
素敵なお話でした♡