君の待つ場所へ

こよい

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〇病室のベッド
  窓から入り込んできた初夏の風が頬を撫でる。
仲村 千香(ここから見える景色とも、もう少しでお別れか・・・・・・。 何でだろう、嬉しいはずなのに・・・・・・)
西 美帆「千香お姉ちゃーん! 聞いたよ、退院決まったって!」
仲村 千香「美帆ちゃん、こんにちは。 うん、来月退院することになったんだ」
西 美帆「良かったね! 美帆もね、来週退院するんだよ!」
仲村 千香「おめでとう! これで学校のお友達に会えるね」
西 美帆「お姉ちゃんも、高校に行くの楽しみだね♪」
仲村 千香「う・・・・・・うん」
  「こら、美帆! また勝手に病室抜け出してダメだろ」
仲村 千香「誰・・・・・・?」
西 美帆「あ、海斗お兄ちゃん!」
仲村 千香(お兄ちゃん・・・・・・? そういえば、美帆ちゃん、お兄ちゃんがいるって言ってたような・・・・・・)
西 海斗「妹がお邪魔してすみません。 美帆の兄の海斗って言います」
仲村 千香「はじめまして、仲村千香です。 美帆ちゃんにはよく話し相手になってもらってます」
西 海斗「千香・・・・・・? ああ、美帆がよく話してる「千香お姉ちゃん」か!」
西 美帆「そうだよ〜」
西 海斗「美帆から、俺と同い年のお姉ちゃんに優しくしてもらってるって聞いてたんだ」
仲村 千香「同い年ってことは・・・・・・西さんも高校一年生?」
西 海斗「海斗でいいよ。 うん、南浜高校の一年!」
仲村 千香「南浜!?」
西 海斗「南浜が、どうかした?」
仲村 千香「実は・・・・・・私も南浜なの。入学してすぐに入院することになっちゃったんだけど」
西 海斗「マジで?!」
西 美帆「じゃあ、お姉ちゃんはお兄ちゃんと同じ学校に通うんだね! お姉ちゃん、もうすぐ退院できるんだよ!」
西 海斗「そうなんだ。 おめでとう!」
仲村 千香「うん・・・・・・ありがとう」
西 海斗「・・・・・・?」

〇見晴らしのいい公園
  ──美帆ちゃんが退院して3日後。
  私は、病院の中庭を散歩していた。
仲村 千香(私も、もう少しで退院だな・・・・・・)
仲村 千香(学校でちゃんとやっていけるかな・・・・・・)
  考えながら歩いていると──、
  「よっ!」
仲村 千香「か、海斗くん!?」
仲村 千香「どうしたの? 美帆ちゃん、もう退院したのに・・・・・・」
西 海斗「今日は千香ちゃんの見舞い! 看護師さんに中庭を散歩してるんじゃないかって聞いてさ」
仲村 千香「私の・・・」
西 海斗「前に会ったとき、退院決まったのに暗い顔してたから気になってたんだ」
西 海斗「悩み事なら誰かに話した方が気が楽になることもあるだろ? 俺で良ければ、話聞くよ」
  私たちは近くのベンチに並んで座った。
仲村 千香「実は──・・・」
  私は、一人で抱えていた不安な気持ちを話した。
  入学してすぐに入院してしまったから、勉強についていけるか心配なこと。
  何より、友達のいないなかで、これからやっていけるのかということ。
仲村 千香「退院が決まって嬉しいはずなのに、ちゃんと喜べなくて・・・」
西 海斗「いるじゃん」
仲村 千香「え?」
西 海斗「友達ならもういるじゃん! 俺、千香ちゃんの高校の友達1号だろ」
仲村 千香「海斗くん・・・ありがとう」
西 海斗「俺、千香ちゃんが学校に来るの待ってるからさ」
西 海斗「それに・・・」
仲村 千香「それに・・・?」
西 海斗「いや・・・その、千香ちゃんの制服姿見てみたいなぁって・・・」
仲村 千香「ありがとう・・・ じゃあ、退院できたら、一番に海斗くんに見せに行くね」
西 海斗「うん、約束な!」
  私たちは、指切りをした。
  あれだけ不安だったのに、私はいつの間にか学校に行くのがちょっと楽しみになっていた。

〇川沿いの公園
  それから少しして、私は無事に退院の日を迎えた。
西 美帆「お姉ちゃん、退院おめでとう!」
仲村 千香「美帆ちゃん、久しぶり! 元気だった?」
西 美帆「うん! わ〜、制服かわいいねぇ♪」
仲村 千香「ありがとう 退院したら、一番に見せるって約束してたから・・・」
西 美帆「約束? 誰と?」
西 海斗「千香ちゃん、お待たせ・・・・・・」
西 海斗「わっ、制服!」
仲村 千香「うん、月曜日から登校だから・・・今日、帰りに学校に寄るように言われてて」
仲村 千香「着てみたんだけど、変かな・・・?」
西 海斗「すっげー似合ってる!」
西 海斗「行こ!」
  君と過ごす忘れられない学校生活が始まろうとしていた──・・・。

コメント

  • なかなかの出来映えでした

  • 新たな生活が始まるドキドキ感が伝わってくる、爽やかで温かな読了感でした!
    運命的な出会いに海斗の明るさが相まって、千香ちゃんの気持ちが上向きに変わっていく様子がとても可愛らしかったです。
    これから二人はどんな学生生活を送るのだろう、と想像して胸が暖かくなりました😊

  • 憂鬱な思いから、一気に楽しみになるのっていいですね。
    退院したばかりで、初めて学校に通うってやっぱり不安ですよ。
    楽しみになったのは彼の存在ですよね!

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