読切(脚本)
〇おしゃれな食堂
レストランで、某学校の同窓会が行われていた。
橘「いやあ、でもこうしてみんなで集まるのも何年ぶりだろうな」
同級生「わたし、今だから言えるけど──」
同級生「あの頃、橘くんが好きだったんだ・・・」
橘「エェー!?」
橘「どうして当時言ってくれなかったのさ」
同級生「実はわたしも、橘くんのことが──」
橘「マジですか。モテ期の遅延がひどい!!」
同級生「あの・・・実はわたしも・・・」
橘「なんてこと──」
橘「いや待て。いくら何でもこれはおかしい」
橘「俺そんなモテなかったし、今もお金持ちとかじゃないぞ」
橘「ま、そこそこイケメンではあるけども?」
同級生「何なの、みんなして。いい加減にして」
橘「そうだそうだ、ビシッと言ってやって」
同級生「わたしが誰より一番、橘くんを愛してるの」
橘「エェー!?」
同級生「待て!!」
同級生「俺の、俺のほうが橘を・・・」
橘「え、ちょ」
同級生「じゃあ俺も!!」
橘「じゃあ!?」
橘「「じゃあ」ってどういう「じゃあ」!?」
ウェイター「わたしも、いいですか?」
橘「よくないよ。キミとはさっき会ったばっかだろ」
ウェイター「愛は想い過ごした時間の長さなのでしょうか?」
橘「めんどくさいこと言いだした」
同級生「僕の橘から離れろ!!」
橘「お前のじゃないし、お前が離れろ。コワい」
同級生「橘くんはどうなの!?」
橘「どう、って。 みんなちょっと冷静になりましょうか」
同級生「確かに熱くなりすぎたかもしれないね」
同級生「俺のほうこそ。 橘を想うあまり、つい・・・」
同級生「私の方が橘くんへの想いは強いけど・・・」
同級生「は?」
橘「何これ。なんか気持ち悪いな」
橘「ちょっと外の空気吸ってこよう」
同級生「あっ、私も──」
同級生「俺もちょうど、夜風に当たりたいところだったのよ」
橘「ごめん。しばらく1人になりたいから」
同級生「待て!!」
橘「待たないしコワい」
同級生「待って~」
橘「うわなんか全員追いかけてくる」
橘「ちょっと、あっ──HELP!!」
〇おしゃれな食堂
支配人「皆さまのご意志、しかと確認いたしました」
支配人「当レストランの支配人として、これより橘さま争奪戦を執り行います!!」
橘「いや、俺の意志は?」
支配人「ルールは単純明快。館内でバトルを行い、最後まで残った者に橘さまが贈られます」
橘「俺を贈るな。俺は贈られんぞ」
同級生「武器(どうぐ)を使ってもいいのか?」
支配人「手段は問いません」
同級生「ククク、そうこなくちゃ・・・」
橘「この人たちおかしいよ」
支配人「それでは、レディー・・・」
支配人「ファイッ!!」
橘「そのコールなんかムカつくんだけど」
橘「ま、いいか。今のうちに脱出しちゃお」
〇店の入口
橘「まったく、こんな同窓会は初めてだぜ」
店内から激しく争う物音が聞こえる
橘「何だ? ちょっと戻ってみるか・・・」
〇荒廃した教室
店内の壁は焼け、ガラスは割れ、辺りには壊れた家具や瓦礫が散乱していた。
橘「うわ!! 何をしたらこんなことになる!?」
支配人「よいタイミングでした」
支配人「ちょうど激しい戦いに決着がついたところです」
橘「支配人この状況で無傷じゃん」
支配人「見事、「第一回たっちぃ争奪戦」を勝ち抜いたのは──」
橘「大会の名前が変になってる」
支配人「この方です!!」
橘「ウェイターさん!?」
橘「キミ同級生でも何でもないよね!?」
ウェイター「橘さんを好きでよかった・・・」
橘「ほんの数時間だよね!?」
同級生「悔しいが、今回は負けを認めざるを得ないな」
同級生「本当に。私、感動しちゃった」
橘「よく見たらみんなピンピンしてるし。 一体どんな方法で勝負したんだ?」
同級生「そんなの決まってるじゃない」
同級生「橘への想いをぶつけ合ったのさ──!!」
橘「よくわからんけど店内に居なくてよかった」
同級生「ウェイターさんのポエムは、それはもう熱く激しい橘くんへの愛がほとばしってたわ」
同級生「そう。彼のおかげで店内はこの通りさ」
橘「「この通りさ」じゃないよ。どうすんのこれ」
支配人「それでは、これから橘さまの授与を行ってよろしいですか?」
橘「よくないよ。俺もう帰るから」
同級生「え?」
橘「妻が外に迎えに来てるから」
橘「今日は楽しかったよ。それじゃ、みんなお元気でね」
同級生「待て!!」
橘「待たないしコワい」
橘は妻の運転する車に乗って帰っていった
Fin.
きっと私達も橘さんを目の前にすると、支配人の様な冷静な振る舞いなどは出来なくなるのでしょうね…
恐ろしき魔性の男、橘さん…彼の赴く先でまた起こる嵐を見てみたいものです。
あらすじの掴めるような掴めないような、、、一気にタップして最後まで読ませて頂きました。どうせモテるなら後で知るのではなくその時の臨場感を味わいたいですよね。
トンデモ展開のまま突っ走る物語に圧倒されっぱなしでした。
こんなモテ期が訪れるのでしたら同窓会に行ってみたくなりますw(争奪戦は遠慮したいですが)