妖精さん、妖精さん、私を導く光りよ(脚本)
〇説明会場
あやか にはいつも妖精さんが見えていた。
いま
あやかは17歳。
大学受験のため塾の帰り。
〇駅前ロータリー(駅名無し)
帰り道、
あやかは
見えている妖精さんに話しかけた。
「どっちの大学が良いかな。最近成績良いからどっちもいけそう」
〇駅前ロータリー(駅名無し)
妖精さんが あやかに言った。
「そうだねえ。あやかは絵が得意だし
美術にしたら?こっちがいいんじゃない」
〇美術室
あやかは そうだねとうなづいた。
「妖精さんいつもありがとう。そうするね」
あやかは小さい頃から妖精さんが見えた。
中学の美術の選択も、どれがいいか妖精さんに聞いていた。
〇美術室
中学の時も、妖精さんに何でも報告した。
「美術にして良かった!!賞獲ったよ!」
妖精さんが笑った。
〇アパレルショップ
大人になって、服を選ぶときもこっそり相談した。
「赤と緑どっちがいいかな」
妖精さんが、決めてくれた。
〇女の子の部屋(グッズ無し)
妖精さんに決めて貰った緑のスカートを
あやかが鏡で見た。
「よかった」
いつも、迷ったとき妖精さんが決めてくれる、
〇街の宝石店
ある日のこと。
あやかは指輪を見ていた。
「これも、妖精さんにどっちがいいか相談したんだよね」
〇オーディション会場(物無し)
数年が経った。
あやかは就職の面接に来ていた。
緊張する・・・。
と、息をした。
〇オーディション会場(物無し)
「私は留学していました。その時御社の製品に出会い・・・」
あやかは面接で留学のことを話した。
〇説明会場
留学を決めたときのことを思いだした。
あのときも、留学するかどうか
妖精さんに相談したんだったなと。
〇説明会場
留学を決めたとき、向こうで友達できるか妖精さんに不安を話したのだった。
「あやか、迷ってるけど、行きたいんだよね」
〇説明会場
妖精さんが、あやかの首元に来た。
「行きたいけど不安なんだよね」
じゃあ、と妖精さんが笑った。
「行きなよ」
〇オーディション会場(物無し)
その時のことを、あやかは
面接の帰りに思いだした。
「妖精さんのおかげで決められたんだよね」
よかったと呟く。
〇説明会場
面接は
他の会社のものも受けていた。
留学の話しをする度、楽しかったことを思い出す。
(良かったな)
〇アパレルショップ
面接から数日経った。
あやかは息抜きのために洋服屋にいた。
服を見ているとき、電話が鳴った。
「あ、はい・・・」
〇アパレルショップ
え、うそ、と、店の外に出た
あやかが呟いた。
「どうしよう」
笑いながら少し困った表情をした。
「妖精さん」
〇商店街
店を出て帰り道、妖精さんを呼んだ。
「どうしよう、2社から内定貰ったよ」
妖精さんに、真剣な表情で囁く。
〇商店街
妖精さんが言った。
「あやか、今回は決められないよ、
あやかはどうしたい。どっちもいいよね。
調べて決めた方が良いよ」
〇商店街
「でも決められないよ」
あやかが妖精さんの足を掴んだ。
「ごめんね、私もう帰らないといけないの」
妖精さんが言う。
〇商店街
そのとき。小さな雨が降ってきた。
「あやか、どっちか迷ったとき、そろそろ自分で決めないといけないよ」
〇商店街
「いつもそばにいてくれたのに」
あやかが困ったように言った。
「これからも迷うことはたくさんあるよ」
妖精さんが言った。
〇大企業のオフィスビル
少し離れたところに、あやかが電話を貰ったうちの一つの会社が見えた。
「あやか、がんばって!!」
妖精さんが笑った。
〇大企業のオフィスビル
妖精さんが、あやかの背中を押した。
「どっちも良いけど迷うことたくさんあるんだよ、でも考えて決めるのも大事だよ」
〇大企業のオフィスビル
その時、あやかの目の前が光った。
「なに?」
目を開けると、あやかより背の高いひとが立っていた。
〇大企業のオフィスビル
その時、あやかの目の前が光った。
「なに?」
目を開けると、あやかより背の高いひとが立っていた。
〇大企業のオフィスビル
「妖精さんは私だよ。私、あやかのお姉さん」
びっくりして
あやかが目を丸くする。
「あなたが生まれる前に死んじゃったの」
〇大企業のオフィスビル
リサが笑っていた。
リサ「あなが迷ってるときずっと支えたかったの。 どっちか、迷うこときっとこれからもたくさんあるよ」
〇空
リサ「迷うことはね大事なことだよ。 だけど時間がかかってもゆっくりでも 決めることも大事だよ。 どうしたいか考えて」
〇大企業のオフィスビル
あやか「お姉さん!!帰っちゃうの!! 迷わなくなっても・・・会いたいよ!! ・・・分かった・・・私がんばるよ・・・でも会いたいよ」
〇空
リサ「ずっと見てるよ、 あやかがもっと強くなったら。 また会いに来るよ。 出会いは大事だよ。 いつもがんばってるあやか好き」
〇大企業のオフィスビル
雨が止んだ。
あやかが、妖精さんの・・・おねえさんの顔を見た。
あやか「お姉さん!! 私、色々これからも会って話がしたいよ! ・・・ありがとう・・・お姉さん・・・」
〇大企業のオフィスビル
妖精さんは、
あやかの手をぎゅっと握った。
リサ「あやか。私ねリサって言うの。 あやかが、自分で決められるようになったらまた来るよ。 見守ってる」
〇空
あやかが、離れたところに見える会社のビルを見た。
リサが笑った。
リサ「うん、ずっとあやかと一緒に居たの楽しかったよ。 わたし。帰らなくちゃ。 あやかがしっかりしたらまた遊びに来るよ」
〇空
あやか「リサさん!私またリサさんが来られるように、ちゃんと自分で決めるよ! がんばるよ。 だから会おうね」
リサが、空に舞うみたいに上がっていく。
あやかが、悲しそうな表情から
少し明るい表情になった。
〇空
リサが消えていった。
あやかが、空を見上げて小さく頷いた。
あやか「リサさん・・・ありがとう。 大丈夫、リサさんが教えてくれたこと・・・ちゃんと覚えておくよ、 また会いたいな」
〇空
リサ「あやか、またね。 わたしずっと見てるよ。 今度はもっとしっかりした あやかに逢えると思うと楽しみだよ」
とてもハートフルで、心温まる物語ですね。妖精さんの正体についても、あやかを優しく導こうとする思いも、読んでいてじわじわと心に伝わってきます。
妖精さんの彼女への接し方が、優しいだけでなく、共感したり、背中を押してくれたり、まるでお母さんのようだなと感じていましたが、そういうことだったんですね。結果、自ら距離をとろうとするのも可愛い子には旅させろ的な、愛がある厳しさだなと感じました。
現実的に言えば守護霊のような妖精さんですね。本当の意味であやかを守りたいという気持ちの表れが一旦彼女を成長させる機会を与えたという事だと理解しました。リサさんに再会したいという気持ちが、あやかをもって強くしてくれますね。とてもいいお話でした。