二等分のケーキ

戸羽らい

第5話 宇津井と佐山(脚本)

二等分のケーキ

戸羽らい

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〇テーブル席
  がやがや
宇津井「さすがに混んでるな・・・」
宇津井「ったく、せっかくのクリスマスなんだからもっと洒落た店行けよリア充ども」
宇津井「あっ・・・ そういえば佐山にはクリスマスって言ったけど、クリスマスってイブと当日の二日あるんだった・・・」
宇津井「・・・」
宇津井「いや、クリスマスと言えばクリスマスイブだろ! そこは佐山も分かってくれる!」
宇津井「・・・」
宇津井「まだ4時半か・・・ ちょっと早く来すぎたかな」
  そわそわ
宇津井「・・・」
宇津井「大丈夫かな・・・ あいつ来るかな・・・」
???「もういたんだ」
???「宇津井が時間より早く来るなんて やっぱりまともな子たちといるとまともになるんだね」
佐山「その調子で真人間になりなよ」
佐山「私みたいな社会不適合者とつるんでないでさ」
宇津井「宇津井!来てくれたんだ!」
佐山「だって来ないと殺すって言うし」
佐山「私なんかのために殺しの罪を背負うのはさすがに宇津井が不憫だからさ」
宇津井「「私みたいな〜」とか「私なんか〜」とかそういう卑屈な態度やめてもらっていいですか」
宇津井「そのメンヘラかまってちゃん特有の口調、共感性羞恥で身体がぞわぞわするんですけど」
佐山「・・・ごめん」
宇津井「いや・・・そこは言い返すとこだって」
佐山「そこもごめん・・・ 宇津井の期待に応えられるような反応できなくて」
宇津井「・・・」
宇津井「男となんかあった?」
佐山「別に・・・ 宇津井には関係な・・・」
宇津井「関係なくない!」
宇津井「うちらダチだろ? 全部一人で抱え込まないで話せよ」
宇津井「私の知らないとこで佐山が何してたのか 何を考えていたのか気になるんだよ」
佐山「話すようなことじゃないよ」
佐山「それに・・・聞いても面白くないと思う」
宇津井「いーや、面白いね だって既に面白いし」
宇津井「だってさー こんな誰にも懐かないような佐山が」
宇津井「私の知らないとこで彼氏作って その彼氏とにゃんにゃんしてたってだけでおもろいし」
佐山「・・・」
宇津井「・・・どうでしたかぁ佐山さん 男の味は〜?」
宇津井「普段は飄々としてる佐山さんでも 男の前だととろとろになっちゃうんですかぁ?」
宇津井「あ〜ん♡だめ〜ん♡ マユ、もうどうにかなっちゃう〜♡」
宇津井「しゅきしゅき〜♡ しゅきぴ〜♡ もっと抱いて〜♡」
佐山「別にそこまでの反応しねーわ」
宇津井「そこまで? じゃあどこまでの反応するんですか?」
宇津井「あっ・・・んっ・・・」
宇津井「んんっ・・・ なんとかくん・・・好きっ」
佐山「・・・」
宇津井「え、図星?」
佐山「いや・・・ なんか宇津井の声がそれっぽくて」
宇津井「なっ・・・」
佐山「宇津井って・・・ そんな声出すんだね」
宇津井「セクハラしたと思ったら 私がセクハラされていた・・・だと」

〇テーブル席
  がやがや
宇津井「ははは! だから未成年に手出す大人なんて変態しかいないんだって!」
佐山「文化祭行った時も鼻息荒くして 他の子の脚をガン見してたっけなあ」
佐山「明らか犯罪者の目をしてたし 今すぐこいつ警察に突き出そうかと思ったわ」
宇津井「ひぇ〜ロリコンこえ〜 私も気を付けよ〜」
佐山「本当に気を付けなよ」
佐山「宇津井は私と違って可愛いから 変な男が次々寄ってくるだろうし」
宇津井「こら、また言った」
宇津井「「私と違って」じゃないだろ 佐山だって可愛いのに変に卑屈ぶるな」
佐山「ごめ・・・」
宇津井「謝るのも禁止!」
宇津井「・・・もう そんな変態男に言われたことなんて忘れろよな〜」
佐山「・・・」
宇津井「つまんねー女だぁ? てめーがつまんねー男だろうが!」
宇津井「てめーがつまんねー話ばっかするからこっちは退屈してんだよ」
宇津井「車だかビジネスだか知らねーわ もっと興味が湧くような面白い話しろよタコ」
佐山「・・・」
宇津井「人と話す時は相手の目線を考えろ ビジネス学ぶ前にコミュニケーションから学び直してこい」
宇津井「まぁ自己顕示欲に脳を侵されてメンツを保つことだけが生き甲斐と化した現代社会が生んだモンスターに何言っても無駄だろうがな!」
宇津井「精々そのプライドが傷付かないように頑張って生きろよ〜」
佐山「・・・」
佐山「ありがと・・・ なんか私が言いたいこと代弁してくれてすっきりした」
宇津井「本当は本人の前で言いたかったけどな」
宇津井「カスヤのことだから 今頃JKのケツ追っかけ回してんだろ」
佐山「カスヤって・・・」
宇津井「佐山ももうカスヤのことなんか忘れて次に進もうぜ」
宇津井「大丈夫! 男なんて星の数ほどいるから!」
佐山「うーん、でももう恋愛はいいかな・・・」
佐山「なんか、ずっと自分に嘘をついてるみたいで心地悪かった」
宇津井「んー? 好きじゃないのに付き合ってたってこと?」
佐山「まぁ・・・色々あって・・・」
宇津井「色々ってなんだよ〜? そこが大事だろ〜?」
佐山「・・・」
宇津井「佐山のことだから 断れなくて〜とかなし崩し的に〜とか?」
佐山「まぁそんなところだけど・・・ それ以前に私、パパ活してたんだよね」
佐山「カズヤとはそれで知り合った」
宇津井「うわ・・・」
佐山「さすがの宇津井もこれには引くよね」
宇津井「引く・・・」
宇津井「カスヤがカスすぎて引く・・・」
宇津井「経済的に立場が上なことを利用して相手をコントロールしようと目論むそのやり口は毒親に通ずるものがあるぜ・・・」
佐山「・・・」
宇津井「佐山もどうせ高価なものをプレゼントされて、そこに恩や義理を感じたんだろ」
佐山「・・・うん」
宇津井「あのなー、恋愛だろうが何だろうが 人間関係ってのは対等じゃなきゃいけねーんだ」
宇津井「施すとか従うとかそういう関係の時点でそれはもう恋愛でも友愛でも家族愛でも何でもねぇ」
宇津井「支配と従属なんだよ! 佐山も佐山で犬っころみてぇに易々と尻尾振るなバカ!」
佐山「・・・」
佐山「やっぱり宇津井って面白い」
宇津井「何が?」
佐山「言葉のチョイスとか考え方が」
宇津井「そう?」
佐山「今度は宇津井の話も聞きたいな」
宇津井「そうだった 私も佐山に話したいこといっぱいあるんだよ」
宇津井「半年前くらいかな〜 丁度佐山と会わなくなった頃・・・」
???「お客様・・・ 失礼ですが追加のご注文は・・・」
宇津井「・・・ってさすがに長居しすぎたか」
佐山「私の家来る?」
宇津井「行く行く〜♪」
宇津井「あ、すいません お会計でお願いしまーす」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
???「おじゃましまーす」
宇津井「わぁ〜相変わらず簡素だな〜 お前の部屋」
佐山「うん 要らないものはすぐ売っちゃうからね」
宇津井「ほへ〜」
佐山「どうする? 先にシャワー浴びる?」
宇津井「えっ、何が?」
佐山「部屋着なら2人分あるし 制服のままなのもアレだと思って」
宇津井「えっ、私泊まるの?」
佐山「泊まらないの? それならそれでもいいけど」
宇津井「んーじゃー泊まるかー せっかくだしー」
宇津井「でもどうせならシャワーじゃなくてお風呂に入りたいな〜 厚かましい限りですが〜」
佐山「お風呂のことシャワーって言わない?」
宇津井「えっ、言わない・・・ いや・・・言うのか?」
佐山「お風呂沸かしてくるね」
宇津井「あっそうだ、下着はどうしよう」
佐山「そのままで良いじゃん」
宇津井「えっ・・・それはちょっと抵抗ある」
佐山「あー、じゃあ私の貸す?」
宇津井「・・・」
宇津井「ごめん、自分の着ける」
佐山「なんで謝るの? 別に私と宇津井って体型変わらないと思うけど」
宇津井「いやそういう意味じゃなくて・・・ 変わらないって言っても多少なり変わるし」
宇津井「・・・」
宇津井「やっぱり佐山も佐山で面白いな」
佐山「何が面白いのか分からない」
佐山「あ、ケーキは冷蔵庫の中入れといたから」
宇津井「え? ケーキってわざわざ冷蔵庫入れるもん?」
佐山「入れるでしょ・・・」
宇津井「てかあんなでかいの入った?」
佐山「ギリギリね・・・ どうしてホールケーキなんて買うんだか」
宇津井「クリスマスと言えばホールケーキでしょ!」
佐山「いや、ショートケーキでしょ・・・」
宇津井「ん? じゃあ一緒じゃん」
佐山「いや・・・え?」
宇津井「ホールケーキとショートケーキって呼び方が違うだけで一緒でしょ」
佐山「あぁ・・・ じゃあそういうことでいいや・・・」
佐山「お風呂沸かしてくるね・・・」
宇津井「・・・」
  ごそごそ
宇津井「なんか変なの隠してないかな〜」
宇津井「佐山はああ見えてむっつりだから もしかすると・・・」
  ごそごそ
宇津井「んー、これは?」
宇津井「えっ」

次のエピソード:最終話 二等分のケーキ

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