二等分のケーキ

戸羽らい

最終話 二等分のケーキ(脚本)

二等分のケーキ

戸羽らい

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二等分のケーキ
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〇フェンスに囲われた屋上
宇津井「・・・」
宇津井「はぁ・・・」
???「ちょっとそこの君〜? 飛び降りでもすんの〜?」
佐山「やめときな〜 死ねなかった時が地獄だから」
宇津井「い、いや、しないし・・・」
佐山「ならいいけど なんか人生に絶望してるようなオーラ出してたからさ」
宇津井「・・・」
佐山「君、もしかして友達いない?」
宇津井「っ・・・」
宇津井「勝手に決めつけんなよ クソDQNが・・・」
佐山「声に出てるけど大丈夫? 私がクソDQNだったら今頃君の胸ぐら掴んでるけど」
宇津井「・・・」
佐山「・・・」
佐山「まぁ君がぼっちなのは 元から知ってたんだけど」
宇津井「なら聞くなよ・・・」
佐山「ねぇ、楽に死ねる方法 教えてあげようか?」
宇津井「は?」
佐山「全てを捨てることだよ 未練があると人は死ねない」
宇津井「はぁ・・・」
佐山「私さっき退学届だしてきたんだ」
佐山「両親には見放されてるし 将来やりたいこともないし」
佐山「中学の友達とは全員縁を切ったし 元からこの学校には友達いないし」
佐山「自分なんかどうでもいいし もう何かにすがる必要もない」
宇津井「・・・」
佐山「生きててもしょうがない そう心から思える時に人は死ねる」
宇津井「お、おう・・・」
佐山「・・・というわけで 今からお手本見せるね」
宇津井「えっ」
宇津井「お、おい!」
宇津井「ちょ、まっ」
宇津井「まっ、待てって! 今飛び降りたらお前・・・」
宇津井「私が突き落としたみたいになるだろ!」
佐山「・・・」
佐山「君、面白いね」
宇津井「はぁ」
佐山「まぁ、元から死ぬ気なんてないんだけど」
佐山「死ねなかった時が地獄って 自分で分かってるのに飛び降りるわけない」
佐山「そもそも今から死ぬのに ご丁寧に退学届を出す意味もない」
宇津井「いやそこは出せよ 学校に迷惑かかるだろ」
佐山「学校で死んでる時点で迷惑かかるでしょ」
宇津井「てか退学は本当なんだな・・・」
佐山「嘘に決まってるじゃん」
宇津井「・・・」
佐山「そう簡単に人は何かを手放せないよ」
佐山「手放すのだとしたらそれは・・・ いつのまにか手放している」
宇津井「そういうもんか」
佐山「宇津井さんだよね? 私、佐山マユ」
佐山「気軽にサヤマユって呼んで」
宇津井「呼ばねーよ・・・」
佐山「じゃあマユでいいよ」
宇津井「いや初対面でいきなり名前で呼ぶわけねーだろ 友達アピールするんじゃないだから」
佐山「宇津井さんは初対面でいきなり名前で呼び合う関係を友達アピールだと思うんだ」
宇津井「そりゃそうだろ」
佐山「・・・」
佐山「なんか気が合いそう」
宇津井「はぁ・・・」
佐山「ねぇ、宇津井さんってさ どうして友達いないの?」
宇津井「知るかよそんなの・・・ 私の性格が悪いとかじゃねーの?」
佐山「そうなんだ 私も性格悪いから一緒だね」
宇津井「・・・」
佐山「・・・」
宇津井「いや急にどうした? なんかいきなり雰囲気変わったけど」
佐山「・・・うん」
宇津井「・・・」
宇津井「私そろそろ帰るけど佐山さんはどうする?」
佐山「私も帰る」
宇津井「・・・」
佐山「・・・」
宇津井「一緒に帰るか?」
佐山「うん」
宇津井「なんだこいつ・・・」

〇テーブル席
???「はぁ〜ギリギリ進級できたわ〜」
???「追認試験お疲れ〜」
宇津井「まぁどこかの誰かと違って出席日数足りてたからなんとかなったわ」
佐山「毎日学校通うとか偉いじゃん」
宇津井「普通なんだな〜それが」
宇津井「いやー残念だよ 佐山と一緒に二年生になれなくて」
佐山「単位とは・・・ 気付いたら失っているものである」
宇津井「手放したくないものほど いつのまにか手放してるから怖いよな〜」
宇津井「で、留年すんの? それとも・・・」
佐山「うーん、普通に退学して 通信制にでもシフトしようかな」
宇津井「何が普通なのか分からんけど、そか」
宇津井「・・・はぁ〜」
佐山「何?」
宇津井「もう佐山の制服姿が見れなくなるのかぁ」
宇津井「制服着てる佐山・・・ TDLでJKコスしてるギャルみたいで好きなんだけどなぁ」
佐山「どう言う意味だコラ」
宇津井「顔面大人びてるから なんか本物のJKに見えない」
宇津井「常にコスプレに見える」
佐山「それって髪型とメイクのせいでしょ」
佐山「宇津井も髪染めてちゃんとメイクしたら 多分、私みたいになるよ」
宇津井「おっ、マジ? 佐山みたいになりたい」
佐山「えっこの流れで? 制服似合わなくなるんじゃないの?」
宇津井「制服なんか似合わない方がいいだろ」
佐山「あっ、それは同意」
宇津井「だから佐山の制服姿好きなんだよね〜 似合ってないから似合ってる」
佐山「本当に褒められてたのか・・・」
宇津井「・・・で? 制服は捨てちゃうの?」
佐山「うーん、どうしよっかな 売ろうと思ってるけど」
宇津井「売るって・・・ それやばいんじゃ?」
佐山「私のものなんだから私の勝手でしょ」
宇津井「いや・・・そうだけどさ〜」
宇津井「・・・一応取っといたら?」
佐山「何で?」
宇津井「また着るかもしれないじゃん」
佐山「着ないけど」
宇津井「え〜〜 佐山の制服また見たいよ〜」
佐山「今のうちに見納めといてよ」
宇津井「本当に売るの?」
佐山「売ります」
宇津井「え〜〜〜なんか勿体ない」
佐山「相場どれくらいなんだろ 調べてみよ」
宇津井「・・・」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
宇津井「・・・」
宇津井「うちの制服・・・」
宇津井「佐山・・・ 売るとか言って売ってなかったんだ」
宇津井「・・・」
宇津井「そりゃ簡単に手放せないもんなぁ」
佐山「ちょっと・・・」
宇津井「あっ、佐山制服残してたんだ?」
佐山「・・・」
宇津井「なぁ、せっかくだし着てみね? 丁度私も制服だしお揃いじゃん」
佐山「いや、いいよ」
宇津井「え〜いいじゃん」
佐山「・・・何で着てほしいの?」
宇津井「え〜、そうだな〜」
宇津井「なんかカスヤだけずるいから 私も制服佐山を楽しみたい」
佐山「・・・」
佐山「分かった お風呂沸くまでの間ね」
宇津井「やった〜」
佐山「着替えるから出てって」
宇津井「えっ、生着替え見せてくれないの?」
佐山「見せねーよ」
宇津井「ちぇ〜」
佐山「・・・」

〇アパートのダイニング
宇津井「えーと、冷蔵庫は・・・」
???「えっちょっと、何してんの・・・?」
宇津井「何ってケーキ食べようと思って」
佐山「人の家の冷蔵庫勝手に開けるな」
宇津井「うわ〜 お前相変わらず制服似合わねぇ〜」
佐山「脱ごうかな・・・」
宇津井「懐かしいなぁ 佐山にもこんな時代があったのか・・・」
宇津井「プッ・・・ コスプレお姉さんにしか見えない・・・」
佐山「脱いでくるね」
宇津井「いやいや冗談! すごく似合ってます!」
宇津井「似合ってないけど そこが似合ってます!」
佐山「・・・」
佐山「ケーキ食べようか」
宇津井「うん」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
「これ全部食べるの無理だろうな〜」
「余ったら持って帰りなよ」
宇津井「そういえばケーキの切れない非行少年がどうみたいな話したっけなぁ」
佐山「あぁ・・・ でもこれ実際に三等分するの難しくない?」
宇津井「えっ?」
佐山「バランス感覚が試されるというか」
宇津井「あ〜、その辺は大体で良いんだよ」
宇津井「びっくりした 佐山って本当に認知がバグってるのかと思った」
佐山「バグってるよ」
佐山「宇津井だってバグってるでしょ」
宇津井「・・・まぁ、そうかもな」
宇津井「でもそんなうちらでも 二等分くらいならできるでしょ」
宇津井「ケーキ入刀〜」
佐山「・・・ん?」
佐山「二等分って半分ずつ・・・? つまり二人で全部食べるってこと?」
宇津井「・・・あ」
宇津井「やっぱり私認知バグってるのかもしれないな・・・」
宇津井「・・・まぁいいか うちらで半分食おうぜ」
佐山「あ・・・そうだね」
宇津井「もう半分は明日食べよう! クリスマスは2日あるんだからさ!」
佐山「・・・」
佐山「私にはその発想できなかったかも」
宇津井「な〜んか、佐山ってちょっと 頭固いとこあるよな〜」
宇津井「もうちょっと柔軟に生きようぜ」
佐山「そうだね」
宇津井「安心しろ 私がそのコリコリに凝り固まった脳みそを解きほぐしてやらぁ」
佐山「本当は・・・」
宇津井「ん?」
佐山「本当は・・・ 宇津井と会うのはもうこれっきりにして、また一から人間関係をリセットするつもりだった」
宇津井「お、おう」
佐山「でも・・・無理だね」
佐山「私、宇津井のことは切れない」
宇津井「・・・」
宇津井「そっか、それは嬉しいな」
宇津井「・・・」
佐山「・・・何?」
宇津井「佐山ぁ♡」
佐山「ちょ、ちょっと!」
宇津井「よいではないか〜 よいではないか〜」
佐山「・・・ぶつよ?」
宇津井「カスヤとはどんな感じだったん〜?」
宇津井「こんな感じ〜?」
佐山「そこ、そんな気になる?」
宇津井「気になる〜 佐山のことは全部気になる〜」
佐山「・・・」
佐山「まったく、もう・・・」
宇津井「佐山さぁ」
佐山「ん?」
宇津井「もう私の前から勝手にいなくなるなよ」
佐山「・・・うん」
佐山「宇津井もさ・・・ どこか、遠くに行かないでほしい」
宇津井「ごめん 行くかもしれねーわ」
佐山「え・・・」
宇津井「勿論、その時はお前も連れてくけどな」
宇津井「そういうもんだろ ダチってさ」
佐山「・・・」
佐山「うん・・・」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
  宇津井理沙
  あなたは私や他の皆と違って
  嘘を吐くのが苦手で
  自分を取り繕うことなんかしなくて
  ただひたすら
  自分に正直に生きている
宇津井「・・・すぅ・・・」
宇津井「・・・」
佐山「・・・」
佐山「宇津井の寝顔ってこんな感じなんだ」
  誰の前でも仮面を被らない
  そんなあなたの素顔は
  どの角度から見ても美しくて
  それはどうしようもなく真実で
  こんな暗闇の中でも
  分かってしまうほどに
  あなたという存在は──
佐山「綺麗・・・」

コメント

  • 色んな意味でドキドキできた物語でした。二人とも大好き!素敵なラストでよかったです。

  • うーん、ダウナー系女子友情物語…😊

    宇津井ちゃんのキャラが味わい深くてよかったです!そして友達ができて楽しそうにしている彼女を佐竹が見つめる描写は胸に来るものがありました。

    クリスマス、佐竹が来るのかハラハラ…そして女子2人お家デートという展開に勝手にドキドキしてしまいました

  • 長編お疲れ様でした。読む方は一気に読みます。ドミノ倒しみたいです。親友はだんだんとどんどんできなくなります。思春期のように結局素直になれないからでしょうか。だからキラキラしているのかなぁ。キャラ作りも勉強になります。合掌。

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