第4話 決別と約束(脚本)
〇繁華な通り
結局、私は誰の一番にもなれなくて
誰の記憶にも残らない
この世界の脇役なんだ
佐山「・・・」
佐山「もうすぐクリスマスか・・・」
〇けばけばしい部屋
カズヤ「なぁ、もう別れね?」
なんで?
カズヤ「マユってさ もっと頭の良い女だと思ってたわ」
カズヤ「でも蓋を開けてみたら そこらのバカ女と変わらなかったっつーか」
カズヤ「こんなつまんねー女だとは思わなかった」
・・・
カズヤ「いやー、さ 俺もこの子なら本命もアリかなと 思った時期もあったよ?」
カズヤ「でもお前将来性ゼロなんだもん」
カズヤ「俺がビジネス教えてもなあなあで流すし」
カズヤ「難しい話をすると すぐに何も理解できなくなるし」
別に・・・
理解できないわけじゃないけど
興味が湧かないだけ・・・
カズヤ「興味のあるなしで生きてるなら お前は本当にお子様だよな」
カズヤ「まぁパパ活するような女なんて 元からバカなやつしかいねーか」
カズヤ「若いだけの女なら他にいくらでもいる」
○○高の子と連絡取ってるんでしょ
本当にJKが好きだよね
私のことだって着せ替え人形かなんか
だと思ってたんでしょ
カズヤ「うん」
カズヤ「ちょっとおだてたら何でも言うこと聞いてくれるし、最高だった」
カズヤ「それに俺の浮気に気付いても何も言ってこない、その自己肯定感のなさも最高」
・・・
カズヤ「でも結局最後まで 髪だけは黒くしてくれなかったな〜」
カズヤ「俺、黒髪JKの方が好きなんだけどな〜」
カズヤ「そもそもお前JKじゃねーか、はは」
ごめんね、JKじゃなくて
カズヤ「そこで謝るとかいよいよダメだな」
カズヤ「・・・」
カズヤ「ま、これから先長いだろうが 人生頑張れよっ!」
カズヤ「最後に一発ヤらせてくれてサンキューな」
どういたしまして
カズヤ「・・・」
カズヤ「気味悪ぃ女・・・」
〇繁華な通り
佐山「気味悪くてごめんね」
佐山「・・・」
佐山「寒い」
???「え〜、じゃあこの中で独り身なの 私だけってこと〜?」
???「はっはっは〜お先に失礼〜」
???「なんかあれだね〜 ババ抜きに似てるね〜」
姉ヶ崎「先にペア作った人が上がれるとことか」
宇津井「確かに!ババ抜きじゃんこれ!」
佐山「・・・」
宇津井「私も早く上がりてーなー」
山田「ババ抜きにはジョーカーがあってだな」
宇津井「なっ! 貴様私がジョーカーだと申すか?」
姉ヶ崎「大丈夫だよ〜 ジョーカーでもペア作れるよ」
山田「それもうババ抜きじゃないぞ」
佐山「・・・」
姉ヶ崎「じゃあジジ抜き!」
山田「あれ?今の人・・・」
宇津井「ん?」
山田「いや、気のせいかな・・・ 何でもない」
姉ヶ崎「今からジジ抜きしようよ!」
佐山「・・・」
佐山(今の宇津井だよね・・・)
佐山(髪なんか伸ばして・・・ 一瞬誰だか分からなかったよ・・・)
みんな変わっていく
変わらないのは私だけ
私だけを置いて
この世界は真っ直ぐ進んでいく
こんなに暗い世界なのに
それだけはハッキリと分かってしまう
〇繁華な通り
佐山「雪、強くなってきたな」
???「佐山!」
佐山「え」
宇津井「はぁ・・・はぁ・・・ やっぱりそうだ・・・」
宇津井「どうしたんだよ・・・ ラインブロックなんかして・・・」
宇津井「私、何か悪いことしたか・・・?」
佐山「別に・・・」
佐山「私の存在は迷惑だと思って」
宇津井「迷惑・・・? はぁ・・・?」
宇津井「言ってる意味がわかんねーよ!」
佐山「いいよ、気を使わなくて」
佐山「私といてもつまんないでしょ」
佐山「あの子たちと一緒の方が楽しいでしょ」
宇津井「別に、そんな・・・」
佐山「その髪型似合ってるよ」
宇津井「あぁこれか? そういえば前、佐山が・・・」
佐山「みんなとお揃いで良かったね」
佐山「やっぱりそっちの方が 宇津井には似合ってるよ」
宇津井「なんだよ・・・ なんでそうなるんだよ・・・」
宇津井「てか、逆に佐山にとって 私が迷惑なんじゃないのか・・・?」
宇津井「文化祭でチラッと見かけた時も 彼氏と一緒にいたし・・・」
宇津井「私をブロックしたのも 彼氏を優先して・・・」
佐山「別れたよ」
宇津井「じゃ、じゃあ!」
佐山「だから彼氏がどうとかは関係ない」
佐山「私が宇津井にとって 価値のない存在だから切っただけ」
宇津井「いやだから何でだよ・・・ 普通逆だろ・・・」
宇津井「切られるなら分かるけど なんでお前が切るんだよ・・・」
宇津井「どうして勝手に 自分が無価値だって決めつけるんだよ」
宇津井「そもそも価値ってなんだよ」
佐山「・・・」
宇津井「なぁ・・・」
佐山「こんな高校中退の底辺女と絡んでても 宇津井の人生のためにならない」
佐山「私のことは忘れて」
佐山「宇津井は宇津井の・・・ 在るべき姿で生きてほしい」
宇津井「だから!」
宇津井「・・・」
宇津井「もういいよ・・・」
佐山「・・・」
宇津井「ここで話してても埒が明かない」
宇津井「・・・」
宇津井「雪、本格的に降り出してきたな〜 どっかお店の中に入って話そうぜ」
宇津井「きっと佐山も寒さでどうかしてるんだよ 一旦、落ち着いて・・・」
佐山「・・・」
佐山「帰るね、さよ・・・」
〇繁華な通り
佐山「な・・・ら・・・」
宇津井「チッ・・・雪が・・・」
宇津井「佐山、待って・・・ まだ私の言いたいこと言えてない・・・」
ヒュゥゥゥゥゥ
宇津井「お前ばっかお気持ち表明しやがって」
宇津井「待てよ・・・佐山・・・」
宇津井「・・・」
宇津井「クリスマス!」
宇津井「私、クリスマス空いてるから! いつもの場所に五時集合な!」
宇津井「ぜってー来いよ! 来なかったら殺す!」
宇津井「・・・」
ヒュゥゥゥゥゥ
宇津井「ちゃんと聞こえたかな?」
姉ヶ崎「コラ!」
姉ヶ崎「こんなとこで何してるの? 風邪ひくよ!」
宇津井「ご・・・ごめん」
姉ヶ崎「山田ちゃんが席取ってくれてるから 早く戻るよ〜」
宇津井「うん・・・」
宇津井(佐山・・・)
〇ファミリーレストランの店内
山田「もう、心配したんだぞお前ら」
宇津井「ごめん」
姉ヶ崎「早く頼もうよ〜 私ピザにしようかな〜」
山田「で、あの子佐山さんだった?」
宇津井「うん、佐山だった」
宇津井「今度のクリスマス会う約束したけど あいつちゃんと来るかな・・・」
姉ヶ崎「え?あの子彼氏いるんじゃないの?」
宇津井「別れたって」
姉ヶ崎「へーそうなんだー」
姉ヶ崎「私はデート〜うふふ〜」
山田「佐山って学校にいた時も 何考えてるか分からなかったけど」
山田「多分、分かろうとしなかったんだろうな 私たちが・・・」
山田「でもリサなら・・・ リサだけがあの子のことを知ってる」
宇津井「・・・」
宇津井「そうだな 佐山のことなら私が一番知ってる」
宇津井「あいつなんだかんだ寂しがり屋だから クリぼっちに耐えきれなくて 私のとこに泣きついてくるだろ」
山田「ははっ・・・でも想像付かないな あのクールな佐山が」
宇津井「え〜意外とあいつお喋りだよ〜」
宇津井「普段はあまり喋らないのに 私といると急に早口オタクになるから」
山田「早口オタクな佐山さん見てみたいな」
宇津井「あ〜、あいつも学校やめてなければな 今だってここにいたかもしれ・・・」
姉ヶ崎「もう!早く頼も! 私お腹ぺこぺこだよ!」
山田「そうだな じゃあ私は・・・」
姉ヶ崎「ねぇ、リサちゃん!」
宇津井「何?」
姉ヶ崎「私、リサちゃんを佐山さんに取られるの嫌だから!」
宇津井「取られるってそんな・・・」
姉ヶ崎「佐山さんと絡むのはいいけど 私たちのことも忘れないでね!」
宇津井「忘れるわけねーだろ こんな声のでかい女」
姉ヶ崎「なら良かった!」
山田「本当に声大きい・・・」
???「お客様どうかなさいましたか?」
姉ヶ崎「丁度良かった! 注文なんですけど〜」
〇繁華な通り
佐山・・・
私はお前のことを人より知ってるつもりだけど、私の知らないお前がいることだって知ってる
私の知らない人と付き合って
私の知らない場所へ行って
私の知らない日々を過ごしてきたことを知ってる
だから・・・全部話そうよ
お互いの知らない私たちについてさ
私、佐山に話したいこといっぱいあるんだ
クリスマスの放課後
いつものあのお店で・・・
待ってるから・・・
絶対来いよ・・・