先輩の秘密(脚本)
〇学校の体育館
城田 蓮「マネージャー!テーピング頼む」
私「は、はい!」
城田 蓮「隣失礼するね」
高2の城田先輩は私の幼馴染。
私はこの春、先輩と同じ高校に入学し、同じバレーボール部を選んだ。
城田 蓮「入部してから2ヶ月経ったけど、もう部活は慣れた?」
私「はい! 先輩と一緒に部活できて嬉しいです!」
城田 蓮「俺も!おかげで部活が楽しくてしかたないよ」
城田 蓮「でも凄い偶然だよな。 小、中、高と同じで、おまけに部活まで一緒なんて」
先輩は偶然だって言うけど本当は違う。
賢い先輩の近くにいられるように、必死に勉強して、やっとの思いで同じ高校に入れた。
そんなこと恥ずかしくて言えないけど。
城田 蓮「へーえ。凄いな。テーピング巻くのめっちゃ上手になってる」
私「・・・うまく巻けるようにこっそり練習したんです」
城田 蓮「そっか。本当に頑張り屋さんなんだな」
城田 蓮「お前のそういうとこ・・・好き」
城田 蓮「あーでも、無理だけはすんなよ!」
城田 蓮「何かあったら俺にすぐ相談すること。 分かった?」
私「は、はい!」
城田 蓮「大変よく出来ました」
城田 蓮「可愛い後輩のことは誰よりも大事に想ってるからな」
先輩は私の頭を撫で、練習に戻った。
先輩は大人で、優しくて、カッコいい
だけど、気まぐれな猫みたいな先輩に、私はいつも振り回されてる
〇学校脇の道
今日は部活がないから、大好きな曲を聴きながらゆっくり帰ろう。
???「お嬢さん。今お帰りですか?」
私「え!?」
城田 蓮「あはは。驚きすぎ。一緒に帰ろ」
部活が休みの日に先輩と会えるなんて運が良すぎる。
私「先輩、今日は眼鏡なんですね」
城田 蓮「ああ。部活ない日は基本こっち」
眼鏡をつけた先輩はいつもより大人っぽい。
城田 蓮「あれ?お前、何か音楽聴いてたの?」
私「はい!!この人の曲凄く良いんです!」
私は大好きな”sora”の曲を流した。
彼は動画配信アプリで歌を投稿している。
城田 蓮「・・・sora・・・ねえ お前、前も聴いてたよな」
私「はい!顔は見せてないんですけど、soraさんの歌声は綺麗でカッコよくて大好きなんです!」
城田 蓮「・・・大好きか」
城田 蓮「それで、俺とsoraどっちが好きなの?」
私「えっ!?」
突然の質問にたじろぎ言葉が出ない。
城田 蓮「・・・だめ、時間切れ」
先輩の顔が触れそうなくらい近づき、綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。
城田 蓮「俺の隣にいるんだから、もっと俺だけを見ろ」
城田 蓮「ほら、顔もっと近づけて」
城田 蓮「どうだ?これで頭の中、俺だけになっただろ」
私「せ、先輩・・・まって・・・」
私は胸が苦しくて思わず先輩から遠ざかってしまった。
城田 蓮「・・・悪い」
先輩は顔を手で覆い、気持ちを落ち着かせるように息を吐いた。
城田 蓮「・・・あー、俺、なに焦ってんだろ」
城田 蓮「・・・本当にごめんな。怖がらせちゃって」
私「いや、そうじゃなくて・・・」
城田 蓮「・・・じゃあ、また部活で」
先輩は一人で歩いて行ってしまった。
私はいつもこうだ。
想いを伝えることから逃げてばかり・・・
でも・・・
ぶつかる勇気のない人が誰かに好きになってもらえるわけない。
私「先輩!」
私「さっきのは嫌だったからじゃなくて驚いちゃっただけです!!」
私「私はどんな先輩も好きです!だから、もっと色んな先輩を見せてください!」
2人の間にしばらく沈黙が流れる。
城田 蓮「・・・じゃあもう我慢しない」
城田 蓮「俺もお前に伝えたいことがあるんだ」
先輩はそう言って私の手を強く引き、どこかに走って行った。
〇住宅街の公園
気がついたら昔2人でよく遊んだ公園に着いていた。
2人でベンチに腰掛ける。
城田 蓮「打ち明けるの怖いけど」
城田 蓮「俺にまっすぐ想いを伝えてくれたお前に、 もう隠し事はしたくない」
城田 蓮「俺の秘密聞いてほしい」
私「・・・はい」
城田 蓮「じゃあ、目閉じて」
先輩の気配を近くに感じ、左耳に先輩の吐息がかかる。
???「”君のことを思うだけで胸が苦しくて、夜も眠れない”」
???「”俺をこんな風にさせた責任とって?”」
私は思わず目を見開いた。
このフレーズ、カッコいい声。まさか・・・
私「・・・sora?」
城田 蓮「せーかい。・・・ったく、気がつくのおせーんだよ・・・バカ」
私「本当に!? に、似てるとは思ってましたけど・・・」
私「で、でも!!どうして早く言ってくれなかったんですか!?」
城田 蓮「・・・言えるわけねーだろ」
城田 蓮「一緒にいる時間が長すぎて、今更好きって伝えるタイミングが分かんなくて」
城田 蓮「行き場のないお前への気持ちを歌ってたなんて」
私「え!?」
城田 蓮「ずっとお前のことが好きだ」
城田 蓮「お前の前では大人なフリしてたけど」
城田 蓮「本当は凄く子供でカッコ悪い」
城田 蓮「拗らせすぎて、自分自身のはずのsoraにまで嫉妬してさ」
城田 蓮「・・・俺のこと嫌いになったろ」
私「そんなわけない!私、先輩の秘密知れて嬉しいです!」
私「・・・先輩のこと益々好きになっちゃいました」
城田 蓮「・・・まいったな」
城田 蓮「なんでそんなに可愛いの?」
城田 蓮「お前には敵わないよ」
城田 蓮「・・・だけど、これで決意できた」
城田 蓮「今度は俺の番だ」
城田 蓮「直球でいかせてもらう」
先輩が私の手を優しく握る。
城田 蓮「今のお前はsoraの方が好きなのかもしれないけど?」
城田 蓮「城田蓮のことも大好きにさせるんで、覚悟しといて下さいね」
私「・・・先輩」
私「実は私も先輩に隠し事しているんです」
私がsoraを好きになったきっかけは、大好きな先輩の声に凄く似ていたから。
そんな少し恥ずかしい秘密を先輩に打ち明けるまで、あと3秒。
先輩との恋がめちゃくちゃ好きなので、こちらの作品を読ませて頂きました。
甘いキュン台詞の連続……ニヤニヤが止まりませんでした😆
乙女ゲーム風の画面も感情移入しやすくて良かったです。
2人が結ばれた後どうなるのか、続きが気になりました✨
先輩が主人公ちゃんの事がどれだけ好きか、という事が伝わる物語でした。実は……な展開が好きなので、先輩が思いを込めた歌を歌っていたという隠し事が可愛いと思いました。
素敵な物語ありがとうございます!
声を大事にして作るという意識がなかったことに気付かされました。広末涼子的大団円に感謝。