桜の下の恋人たち(脚本)
〇桜並木(提灯あり)
桜の下の恋人たち
菜乃花「わあー!きれい!!」
トオル「・・・」
菜乃花「来てよかったね!!」
トオル「・・・早く帰ろうぜ」
菜乃花「いや、来たばっかりだし」
トオル「ふん・・・」
菜乃花「・・・」
菜乃花「あ!屋台出てる!さすが観光地!」
菜乃花「おいしー!熱い!サイコー!」
トオル「・・・」
菜乃花「ずずずず!はふはふ!」
トオル「・・・おい・・・」
トオル「・・・ストーップ!!」
菜乃花「えー!買いたい!チョコバナナ!」
トオル「買いすぎ!食べすぎ!!腹壊すぞ!!」
菜乃花「むうーーー・・・」
菜乃花「・・・ぷっ」
トオル「なんだよ」
菜乃花「やーっといつものトオルだ」
トオル「・・・」
菜乃花「へへ・・・」
菜乃花「トオルが心配して怒ってくれるの、 いつも嬉しかったんだよ」
菜乃花「ほら、うちのパパもママも、 菜乃花のこと溺愛じゃん?」
菜乃花「菜乃花が何やっても怒らないんだよね」
菜乃花「かわいそうな子だからって」
菜乃花「どうせ長く生きられないんだから、 好きにさせてあげよう──って」
菜乃花「あはは」
トオル「・・・」
菜乃花「・・・ね、」
菜乃花「写真撮ろうよ」
トオル「嫌だ」
菜乃花「あ、あの人に撮ってもらお! すみませーん・・・」
トオル「嫌だって言ってるだろ!!」
菜乃花「イヤ!撮る!」
菜乃花「来年は撮れないもん!!」
トオル「はあ!?」
トオル「撮れないわけねーだろ!!」
トオル「なんだよ、こんな・・・桜が見たいなんて 急に言い出しやがって」
トオル「思い出づくりかよ!!」
菜乃花「・・・っ」
菜乃花「そうだよ!思い出づくりだよ!」
菜乃花「大好きなトオルとのお花見デートだよ! 最初で最後の!!」
菜乃花「楽しい思い出にさせてよ!!」
トオル「ふざけんな、思い出になんてしねえぞ!」
菜乃花「うるさーい!」
菜乃花「いい!もう、菜乃花が自分で自分を撮るから!」
菜乃花「にこっ! 『パシャ!』」
トオル「よく今の会話の直後で笑えんな」
菜乃花「得意だもーん、笑うの」
菜乃花「お、めっちゃ映えるの撮れた~やば~」
トオル「はあ・・・」
トオル「・・・」
菜乃花「・・・ね、やっぱり一緒に撮ろうよ」
菜乃花「それか・・・」
菜乃花「写るのが嫌なら、トオルが菜乃花を撮って」
トオル「──わかったよ」
トオル「撮ってやる」
菜乃花「ほんとに!?」
菜乃花「やったー!」
トオル「・・・じゃあ撮るぞ」
菜乃花「はいは~い!」
トオル「・・・」
菜乃花「・・・トオル?」
菜乃花「ちょっとー、こっちを撮ってよ」
菜乃花「ねー、菜乃花はこっちだよ?」
菜乃花「おーい!」
菜乃花「トオ── ・・・・・・」
菜乃花「・・・」
通行人「ね、今の人みた?」
通行人「見た見た」
通行人「めっちゃ泣きながら桜撮ってたなwww」
菜乃花「・・・」
トオル「・・・ホラ、撮ってやったぞ」
トオル「桜」
菜乃花「・・・」
菜乃花「ってちがーう!! 菜乃花を撮ってって言ったのにー!!」
菜乃花「もー! トオルの馬鹿!とんちんかん!」
トオル「・・・はは」
トオル「ほんとにな」
菜乃花「・・・ほんとにバカ」
菜乃花「死んでも許さないんだから」
トオル「そこまで言うことねーだろ!」
トオル「・・・ふう」
トオル「・・・帰るか」
菜乃花「うん」
トオル「また・・・来ような」
短編でも、ふたりの関係が想像できて、素敵な読後感がありました!
どんな写真が撮れたのか気になります…!
とっても切なくなるお話でした…。
本人は受け入れても、周りは受け入れられないことってありますよね…。
明るく振る舞うからこそ、辛い時もあります。
2人で幸せになってほしいなぁ。
彼女自身、自分の限られた生を精一杯受け入れて、笑って楽しい想い出を残そうとしているのは、たぶん彼女のためだけでなく、彼のためでもあるんじゃないかなと考えたら余計切なくなりました。桜の儚さと命の儚さってどちらも美しく似てますね。