名探偵GB

武智城太郎

森木街の殺人(前編)(脚本)

名探偵GB

武智城太郎

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〇東京全景
  混迷する現代日本。
  続発する奇怪な事件。

〇渋谷の雑踏
  そこに真実の光を当て、人々を不安から救う者たちがいた。
  それが探偵である。

〇古いアパート

〇古いアパートの部屋
高馬浩司「いよいよ今日が、面接の日だ!!」
高馬浩司「こんなチャンスはめったにない!!」
高馬浩司「鋭敏な頭脳と冷静沈着さで、数々の難事件を解決し──」
高馬浩司「数多いる探偵の中でも、ナンバーワンとの呼び声高い──」
高馬浩司「名探偵GB!!」
高馬浩司「そのGBの助手になれるかもしれないんだ」
高馬浩司「これは、子供の頃から憧れだった名探偵になるための輝かしい第一歩だ」

〇電車の座席
高馬浩司「今から、あのGBと会うのか。ドキドキするな~」
高馬浩司「しかし天才ゆえか、少し偏屈で神経質なところがあるらしく、助手採用の条件は相当に厳しいという」
高馬浩司「これは気合を入れないと」

〇オフィスビル前の道
高馬浩司「このビルか」

〇オフィスの廊下
高馬浩司「『松岡探偵事務所』 ここだな・・・」
???「入りたまえ」
高馬浩司「失礼します」

〇校長室
GB「君が──」
高馬浩司「凶暴なゴリラが少女を!!」
高馬浩司「ぼくが助ける!!」
高馬浩司「う~ん・・・」
高馬浩司「ハッ!!」
高馬浩司「なんて凶暴な野獣なんだ。問答無用で襲いかかってくるとは・・・!!」
GB「きみ、勝手に私にぶつかって勝手に床に倒れて目を回しただけじゃないか」
GB「この女の子は、他のテナントに入ってる人の娘さんだよ。たまに遊びに来るんだ」
兎川リナ「そうだよ。このゴリラさん、こわくないよ」
GB「リナくん、大事な仕事の話があるから、ちょっと外に出て行ってくれたまえ」
兎川リナ「うん、いいよ」
高馬浩司「・・・・・・・・・」
高馬浩司「ゴリラがしゃべったー!!」
GB「やれやれ、そこからか・・・」
GB「きみは助手の面接を受けに来た、斎藤君じゃないのかね」
高馬浩司「え、ええ・・・」
GB「探偵GBが何者かも知らずに志願したのかね?」
GB「特に宣伝はしてないがね、業界では、わりと周知の事実だよ」
GB「私の種族に関しては」
高馬浩司(たしかに、GBの写真はこれまで見たことがなかったけど・・・)
高馬浩司(まさかゴリラ・・・)
高馬浩司「アッハッハ!!」
高馬浩司「なるほど、もう面接は始まってるんですね」
高馬浩司「探偵たるもの、どんな想定外の事件が起きても冷静沈着でなくてはならないという──」
  ゴソゴソ・・・
高馬浩司「どこだ? もう少し上か?」
GB「初対面の人に背中まさぐられてファスナー探されるのは、君で500人目くらいだから私も平然としてるけど──」
GB「普通に考えたら、そうとうに失礼なことしてるからね」
高馬浩司「バカな!? 着ぐるみじゃないだと!?」
高馬浩司「だったらなんなんだ? CG?」
GB「念のために自己紹介しとくと、私がGBこと松岡俊雄だ」
GB「動物園生まれだが、生まれつき、少しばかりIQが優れていたために、今は自由身分のゴリラだ」
GB「国家試験と厳しい審査を受けてね」
GB「ちなみに言葉は、特別な喉の訓練で話せるようになった」
GB「偏見や差別とは常に戦っているよ。ゴリラの地位向上のためにね」
GB「かといって、私は人間かぶれでもない! ゴリラとしての誇りを持っている」
高馬浩司(もしかして、本当にこれがGBなのか?)
高馬浩司(そう考えると、偏屈なのも助手がなかなか決まらないのも納得できるけど・・・)
高馬浩司「いや、でもなあ・・・!!」
GB「そんなに信じがたいかね? ゴリラの探偵が」
GB「たしかに私のように頭脳労働職に就いてるものは少数だが、プロスポーツ選手ならわりと多いんだよ」
GB「ゴリラを始めとする大型霊長類は」
高馬浩司「え? まさか・・・」
GB「カープの四番打者とかライト級世界チャンピオンのボクサーとか」
GB「みんな体毛を剃って人間の振りしてるからわかりづらいけど」
高馬浩司「そうなの!?」
GB「私はゴリラとしてのアイデンティティを大事にしてるから、剃毛なんかしないし服も着ないけどね」
高馬浩司「でもそれだと、人前で滅茶苦茶目立ちませんか?」
GB「それに関しては、きみもたいがいだよ」
GB「まさかクラシック探偵スタイルで出歩く人間が、現代日本にいるとは・・・」
GB「おっと、もうこんな時間か」
GB「わかった。すぐに行くよ」
GB「悪いが、これから事件の捜査に出向かないといけないんでね」
GB「面接の結果は、後日連絡するよ」

〇オフィスビル前の道
鵜飼刑事「GB、さっそく現場へむかいましょう」
GB「うむ」

〇車内
鵜飼刑事「道が混んでなければ、森木まで一時間ほどで到着します」
鵜飼刑事「まったく奇妙な事件で、警察はお手上げですよ」
高馬浩司「事件の概要を教えてください」
GB「おい、きみ」
鵜飼刑事「どちらですか?」
高馬浩司「GBの助手です。急ぎましょう」
GB「仕方ない。鵜飼くん、行ってくれ」
鵜飼刑事「はい」

〇おしゃれな住宅街

〇中規模マンション
鵜飼刑事「このマンションです」
GB「森木街・・・閑静な住宅街といったところか」

〇マンションの共用廊下
鵜飼刑事「ここが現場の403号室です」
高馬浩司「おお! ドラマでよくあるテープが張ってある」
鵜飼刑事「入りましょう」

〇おしゃれなリビングダイニング
鵜飼刑事「ガイシャは、このマンションで一人暮らしをしている67歳の女性です」
鵜飼刑事「一昨日の朝、近所に住むガイシャの娘が、このリビングで仰向けになって倒れている遺体を発見しました」
GB「遺体の様子は?」
鵜飼刑事「それが、胸をグシャグシャに潰されていたんです」
高馬浩司「グシャグシャ!!」
鵜飼刑事「肋骨が7本も粉砕され、心臓を始めとする内臓も著しく損傷していました」
鵜飼刑事「検死をしたところ、素手で潰されたようなんです」
高馬浩司「素手で肋骨を? では犯人は空手の有段者・・・」
鵜飼刑事「殴ったというよりは、押し潰したようなんです」
GB「むしろ、そのほうが腕力が必要になってくるね」
GB「何か盗まれたものは?」
鵜飼刑事「部屋を荒らされた形跡はありません」
高馬浩司「犯人が物取りでないとすると・・・」
鵜飼刑事「犯行動機は今のところ不明です」
鵜飼刑事「ガイシャについても調べましたが、怨恨や男女間のもつれ、金銭トラブルなどはいっさいありませんでした」
GB「ロビーと共用階段には防犯カメラがあったみたいだが?」

〇高級マンションのエントランス

〇マンションの共用階段

〇おしゃれなリビングダイニング
鵜飼刑事「録画映像を調べましたが、怪しい人物はまったく映っていませんでした」
鵜飼刑事「マンションの構造上、あれらの防犯カメラを避けて、この部屋までやってくるのは絶対不可能です」
GB「ふ~む、他に何か手がかりになりそうなものはあるかね?」
鵜飼刑事「隣りの部屋の住人が、事件があった深夜一時頃に、二種類の声を聞いています」
高馬浩司「それは、すごい手がかりじゃないですか!」
鵜飼刑事「一つは、ガイシャのものと思われる悲鳴」
鵜飼刑事「まるで怪物でも目の当たりにしたような、絹を切り裂くような悲鳴だったそうです」
鵜飼刑事「その後に、大型の野獣のような声が聞こえてきたそうです」
高馬浩司「野獣!!」
高馬浩司「こんな街中のマンションの部屋に?」
鵜飼刑事「もちろん監視カメラには、大型獣の類は何も映っていません」
鵜飼刑事「まったく不可解です。警察もお手上げですよ」
高馬浩司(噂通り、警察は無能だな)
GB「ベランダの窓のカギはどうなってたかね?」
鵜飼刑事「窓は閉まっていましたが、カギは掛かっていませんでした」
GB「ベランダに干してある洗濯物。あれはいつから?」
鵜飼刑事「正確にはわかりませんが、隣人の証言によると、事件が起きる前から干していたと」
GB「ふむ・・・」
GB「私の紫金色の脳細胞が、そろそろ働き出したようだよ」
高馬浩司(もう有名な決め台詞が!!)
GB「まず犯人の侵入経路だが、地上からベランダ側をよじ登ってこの部屋まできたんだよ」

〇中規模マンション

〇おしゃれなリビングダイニング
GB「それなら監視カメラには映らないからね」
高馬浩司「でもこの部屋は四階ですよ」
GB「それも犯人のヒントの一つだよ」
GB「マンションの4階までよじ登ってくる身軽さと、胸を押し潰す怪力。そして野獣のような声──」
GB「犯人はまちがいなく、大型の霊長類だ」
高馬浩司「え!?」
鵜飼刑事「なるほど、さすがはGBの名推理だ!!」
高馬浩司「でも犯人の動機は何ですか?」
GB「おそらく目当ては、アレだろうね」

〇団地のベランダ

〇おしゃれなリビングダイニング
高馬浩司「え!? 下着ドロ!?」
鵜飼刑事「しかし洗濯物に盗まれた形跡は・・・」
GB「おそらく、下着のデザインから想像するより持ち主が高齢であったため、盗むのをやめたんだろう」
鵜飼刑事「なるほど。しかし見つかって騒がれてしまったたために、衝動的に殺したんですね」
高馬浩司「・・・・・・」
高馬浩司「刑事さん、その獣の声は、具体的にはどんな感じだったんですか?」
鵜飼刑事「えーと、たしか〝ウッホ!ウッホ!〟という・・・」
高馬浩司「ウッホ!ウッホ!」
GB「鵜飼君。犯人逮捕まで、あと二日ほど時間をくれたまえ」

〇黒
  つづく
  次回  
  
  森木街の殺人(後編)

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