破邪の拳 ~ニート武道家の地下格闘技トーナメント~

武智城太郎

第十話 象形拳VS柔道王(脚本)

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武智城太郎

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〇劇場の座席
リングアナ「これより一回戦第4試合をはじめます!」

〇闘技場
リングアナ「闘技場の中央で相対してるのは、オリンピック最重量級金メダリスト〝柔道王〟こと山藤功選手と──」
リングアナ「中国拳法、象形拳の達人ウォン・シャオティエンです」
リングアナ「両選手の年齢差は40歳、体重差は実に70キロあります!」

〇劇場の座席
観客「ヤバイな。あのお爺ちゃん、投げ殺されるんじゃないか?」
観客「いや、そこは達人だから・・・」
  観客は期待と不安でざわめいている。
青馬文彦「ぎりぎり間に合ったな」
青馬文彦「あれが伝説の武術家、ウォン・シャオティエンか・・・!」

〇闘技場
ミスター小林「両者とも全力で闘うように」
リングアナ「さあ、注目の一戦! 勝つのは中国武術か、それとも日本武道か!」
リングアナ「山藤選手は柔道の定石通り、腕をのばして相手の動きを捕えようとしています」
リングアナ「それをシャオティエン選手は、熟達した摺り足でかわしていきます」
  だがそのうち、疲労の色が見えはじめる。
リングアナ「シャオティエン選手、捕まってはいけません!」
  だがついに、山藤に右腕をつかまれてしまう。
リングアナ「危なーい! 大木をも引き抜くといわれる柔道王の投げが出るぞ!!」
  とたんに達人の身に異変が起こる。
  ブルブルと身体を痙攣させたかと思うと、目の色を不気味に変える。
リングアナ「何事でしょうか!?」
リングアナ「シャオティエン選手が突如発作のようなものに襲われています!」
  山藤も気味悪がって攻撃の手を止めていたが──
リングアナ「ついに出たー! 山藤選手の豪快な一本背負い!!」
  だがシャオティエンは素早い前方宙返りで投げから脱出し、身軽に着地する。
ワン・シャオティエン「キ、キキッキ!」
リングアナ「なんでしょう!? このシャオティエン選手のちょこまかしたユーモラスな仕草は!?」
リングアナ「そう、これはサル! 猿拳です!」
リングアナ「山藤選手、ふたたび達人を捕えようとするが、異常にすばしっこくなっていて追いつけなーい!」

〇劇場の座席
リングアナ「シャオティエン選手の象形拳は、たんに動物の動きを模しているだけではありません!」
リングアナ「実際に身体に霊を憑依させ、動物憑き状態になるのです」
リングアナ「これが究極の達人技と呼ばれているゆえんなのです!」

〇闘技場
ワン・シャオティエン「キキキキキーーッ!」
リングアナ「シャオティエン選手、猿パンチからの猿キックだ!」
  だが一瞬の隙をついて、山藤は猿ティエンを捕え──
  柔道の必殺技、裸絞めを極める。
レングアナ「おおーっと、さすがは柔道王! 寝技も超一流だーっ!」
リングアナ「両腕で首を締めあげ、胴体も両脚でガッチリとホールドしています」
リングアナ「達人、万事休すか! ここから脱出するのはどう考えても不可能です!!」
リングアナ「ああーっと! またしても達人の身に異変が起こったーっ!!」
  いともたやすく山藤の両腕から、スルッと達人の頭部が抜け──
  次いで胴体も、クネクネとくねらせながら両脚のホールドから脱出してしまう。
リングアナ「これはいったいどうしたことか!? シャオティエン選手、まるで蛇のような・・・」
リングアナ「そうです! これはまごうことなき蛇です!」
リングアナ「達人は猿に続いて蛇を憑依させ、蛇拳を繰り出しましたーッ!」
  蛇ティエンは、マットの上でとぐろを巻いたり、のたくったりしている。
リングアナ「さすが達人です! しかし関節などはいったいどうなっているのでしょうか?」
リングアナ「一進一退の攻防! まったく目が離せません」
リングアナ「さて柔道王山藤選手は、次にどんな攻撃を見せるか──」
山藤功「ひぃっ!!」

〇劇場の座席
リングアナ「おっと、どうしたことか!?」
リングアナ「山藤選手、一目散に逃げ出してしまったぞ!?」
リングアナ「今、山藤選手のセコンドが、審判に何か伝えているようです」

〇闘技場
セコンド「・・・・・・・・・」
  カン!カン!カン!カン!カーン!!

〇劇場の座席
リングアナ「試合終了! 山藤選手は棄権の意思を示したとのことです」
リングアナ「棄権の理由がわかりました」
リングアナ「関係者の話によりますと、柔道王は子供のころから蛇が大の苦手なのだそうです」
  観客席からの声は、ブーイングよりも嘲笑のほうが勝っている。
青馬文彦「なんだそりゃ、不甲斐のない」

〇闘技場
  蛇の憑依が抜けて、達人はすっかり人間にもどっている。

〇劇場の座席
リングアナ「シャオティエン選手、これはラッキーな勝利と言っていいかもしれません」
リングアナ「つづく一回戦第4試合は、衣流座選手対X選手の一戦です」
リングアナ「X選手に関しては、いまだ正体は不明のままになっています」

〇黒
  つづく
  次回予告
  
  第十一話 人外VS女王様
  
        乞うご期待!!

次のエピソード:第十一話 人外VS女王様

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