後輩の古泉くん

Nazuna

後輩の古泉くん(脚本)

後輩の古泉くん

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後輩の古泉くん
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〇田舎の一人部屋
  コンコン
古泉「どうぞ~」
  ガチャ
古泉「やあ、留美子さん!こんにちは~」
留美子「こんにちは。古泉くん」
留美子(へらへらと呑気に笑っているこの男は古泉くん)
留美子(彼は私の大学の後輩だ)
留美子「留美子さん、じゃなくて留美子”先輩”、でしょう?」
古泉「まあまあ、呼び名なんてなんでもいいじゃないですか」
古泉「冷たいお茶でもいかがです?」
留美子「いいわ、お構いなく」
古泉「そうですか」
古泉「じゃあ、僕の分だけ入れますね」
古泉「いや~。やっぱり、暑いときは冷えたお茶に限りますね」
古泉「本当に最近は暑くて仕方なくて。年々暑くなってる気さえします」
留美子「ねえ、古泉くん」
古泉「本当に地球の将来が心配になりますよねえ」
古泉「とか言いつつ冷房はつけてしまうのが人間の性ってやつですね」
留美子「あの、古泉くん」
古泉「それで僕、最近扇風機を買うことを考えはじめまして」
古泉「いろいろネットで調べてたんですけど値段もピンキリで・・・」
留美子「古泉くん!」
留美子「ずいぶんと口数が多いようだけど、なんで私がわざわざここに来たかわかっているわよねえ?」
古泉「はて、僕の部屋に涼みに来たんじゃなかったでしたっけ」
留美子「違う!!」
  ドサッ
留美子「夏の課題、まだ一つも手をつけてないようねえ?」
古泉「なんでしたっけ、それ」
留美子「とぼけない!!夏休みは明日までよ?大丈夫なの?」
留美子「しかも課題やってないのはこれが初めてじゃないわよね」
留美子「地球の将来を心配する前に、あなたの明日を心配した方がいいんじゃない?」
古泉「まあまあ、そんなに怒らないで・・・」
古泉「というかなんで、僕の課題を留美子さんが持ってくるんですか?」
留美子「あのねえ、なんでか知らないけど、あんたが課題をやってないと毎回私のところに教授から連絡が来るのよ」
古泉「それは留美子さんが僕なんかを気にかけてるお人好しだからじゃないですか?」
留美子「うるさい!さっさとやんないと、古泉くん留年しちゃうわよ」
留美子「私もちょっとは手伝うから」
古泉「ほら、やっぱりお人好しじゃないですか」
留美子「うるさいわね・・・」
古泉「でもやっぱり、何かご褒美がないとやる気が出ないですよ」
留美子「あのねえ、ご褒美とか言ってられる量じゃないと私は思うけど」
古泉「まあまあ、何か目標があったほうが気分が上がるじゃないですか」
留美子「まあいいけど・・・」
留美子「ご褒美って何よ」
古泉「もし今日のうちにこの課題を全部終わらせることができたら・・・」
古泉「明日、デートしましょう」

〇渋谷駅前
  ガヤガヤ
古泉「留美子さん!」
留美子「ごめん、待った?」
古泉「いやいや、今来たばっかです」
留美子「そう?それならいいんだけど」
留美子「それにしても、まさか本当にあの量の課題を一日で終わらせるとはね・・・」
古泉「ご褒美があったおかげですね」
留美子「はいはい、そうね」
留美子「で、何すんのよ、デートって」
古泉「そうですねえ。じゃあ、まずはちょっと歩きましょうか」
古泉「あ、そのネックレス、よく似合ってますよ」
留美子「え!?あ、ありがとう・・・」
留美子(き、気付いてもらえると思わなかった・・・)
古泉「さ、行きましょうか」

〇広い改札
留美子「・・・って、ここって駅じゃない」
古泉「あの、留美子さん」
古泉「今日、いつまで時間大丈夫ですか?」
留美子「え?」
留美子「きょ、今日は一日中空けてるけど・・・」
古泉「ああ、よかった」
古泉「じゃあ、これ、どうぞ」
留美子「え!?」
留美子「まさか電車乗るつもり?」
留美子「一体どこまで行く気なのよ・・・」
古泉「大丈夫です、そんなにはかかりませんから」
古泉「電車来ちゃいますよ、行きましょう」

〇海辺
古泉「着きましたね」
留美子「はあ・・・」
留美子「なんで海なのよ」
古泉「綺麗じゃないですか、」
古泉「海」
留美子「まあね・・・」
留美子「それにしても、人がいないわね」
古泉「まあ、夏も終わりですから」
「・・・」
留美子「夏も終わりかあ・・・」
留美子「それにしてもなんで、私をここに連れてきたの?」
古泉「そりゃ、夏ももうすぐ終わりですから」
古泉「留美子さんと、思い出を作りたかったんですよ」
留美子「ふーん・・・」
留美子「ま、悪くないわね」
古泉「でしょ?」

〇田舎の一人部屋
  ガチャ
古泉「あ、こんにちは留美子さん」
留美子「古泉くん?」
古泉「はい、なんでしょう」
留美子「これ、なにかわかる?」
古泉「えーっと、留美子さんの日記ですか?」
留美子「今月の課題!!」
留美子「まさか全く手を付けてないとは・・・」
古泉「また教授からメール来たんですか?」
留美子「誰のせいだと思ってるわけ?」
古泉「あはは。すみません」
留美子「でもあなた、成績は悪いわけじゃないのよね・・・」
留美子「いったいどうしてギリギリまで課題に手を付けないの?」
古泉「だって、」
古泉「留美子さんが来てくれるでしょう?」
留美子「な、なんかその言い方だと、あなたが私に会いたいみたいじゃない・・・」
古泉「会いたいんですよ」
留美子「え?」
古泉「課題手伝ってくれますしね」
留美子「おい!私の揺れ動いた乙女心を返せ!」
古泉「キュンとしちゃったんですか?」
留美子「うるさい!課題やれ!」
  ──完。

コメント

  • どれが本心なのか!
    と言っても、やっぱりお互い会いたいってのがあるからなんでしょうね〜!
    会いたい理由付けって、恋の醍醐味だと思います!

  • したたかな後輩君ですねえ。先輩はとても真面目な優等生タイプで、でも実は古泉くんが知らないうちに恋のモーションかけているのに気がつけない恋に奥手のようですね。

  • 彼の思惑に乗せられた彼女がかわいいです。
    でも、まんざらでもなさそうですね。
    彼女に会う機会を作ろうとしてる時って、たぶんすごくうきうきしてると思うんですよ。
    そんな二人にキュンです!

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