油断は禁物マン

sfie

アイドル編(脚本)

油断は禁物マン

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〇コンサート会場
「Be careful! Be careful!」
タク「恋のアラートにWatch out!!」
油断は禁物マン「YO! YO!」
「キャー!! カッコイイー!!」
  人気アイドルグループ「YUDANSHI」のライブは詰めかけたファンの多くを虜にしていた。
古参ファン(今日のYUDANSHIからは物凄い気魄を感じる。何かあったのかしら?)

〇ライブハウスの控室
  およそ1年前──
油断は禁物マン「今日はみんなに大事な話がある」
タク「どうしたんだ、改まって?」
油断は禁物マン「俺は、YUDANSHIを卒業しようと思う」
  油断は禁物マンの決意表明の後の数秒間、室内は水を打ったような沈黙に包まれた。
  メンバーの誰もが驚きのあまり言葉を発せられずにいたのだ。
ロン「・・・おい、嘘だろ?」
ヤス「やっと俺達の名前が売れてきて、「さあこれから」ってときに──!!」
タク「俺も油断は禁物マンは辞めないと思っていた・・・」
油断は禁物マン「だからこそだ。お前達も油断していたはず。だからこそ、今なんだ」
油断は禁物マン「この国民的人気アイドルグループの一員として常に自覚を持ち、スキャンダラスな方面への警戒を怠らずやってきた」
油断は禁物マン「しかしどうだ。俺に関していえば、まったくそんな心配はなかった」
油断は禁物マン「全然モテないからだ」
油断は禁物マン「そして思った。このまま俺はアイドル路線でやっていてよいのか、と」
油断は禁物マン「ずっと違和感があった。俺だけなぜやたら呼称が長いのか」
油断は禁物マン「タク、ヤス、ロン。お前達と同じように俺にも「キンマン」という公式ニックネームがある」
油断は禁物マン「でも誰もその名前で呼んでくれないんだ・・・・・・」
タク「キンマン・・・」
油断は禁物マン「よしてくれ!!」
油断は禁物マン「お飾りの同情ではなく、本当のYUDANSHIのソウル──それをあと1年の活動期間でぶつけ合おうじゃないか!!」
ヤス「キンマン──」
油断は禁物マン「よしてくれ!!」
油断は禁物マン「やめろ!!」
ロン「まだ俺は何も言ってないけど・・・」

〇コンサート会場
タク(一年前のあの件で油断は禁物マンの卒業が決まってから、俺達はいっそう強くなった)
ロン(ファンには今日のラストライブまで卒業の件は伏せておきたい──彼の想いを胸に秘め、俺達はこのステージにたどり着いた)
ヤス(油断は禁物マンはYUDANSHIの立ち上げから一緒に歩いてきた初期メンバー。最高の形で花道を飾ってやりたい)
  会場にメロディアスなイントロが流れ始めた
ファン「何この曲?」
ファン「知らな~い」
古参ファン(こ、この曲は──!! 新参のミーハーが知らないのも無理ないわ)
古参ファン(これは人気動画サイトで総再生数28回を叩き出した初期の隠れた名曲「ミスカルキュレーション」・・・)
古参ファン(かつてキンマンで売り出した彼のねっとりヌッチャリとしたソロパートが特徴のバラード・・・)
古参ファン(なぜこのタイミングで──やはり何か匂うわ・・・・・・)
油断は禁物マン「ぬえぇ、きみぃのぅその間のぬけぃたキャオーを~♪」
油断は禁物マン「ぼくわぁっハーン・・・」
油断は禁物マン「ぬぅ、ぬぅぐぅいちゃぃーい!! そのヌァミダもぉ♪」
油断は禁物マン「Yeah...」
  ・・・・・・
  会場はそれまでのボルテージが嘘に思えるほど、異様な静寂に包まれた。
  そしてライブはいつの間にか、極めてシームレスに終了した。

〇ライブハウスの控室
タク「あ、あのー。油断は禁物マン・・・」
タク「グループ卒業の件は?」
油断は禁物マン「アッ、忘れてた」

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