『好き』の定義

砂糖のカタマリ

『好き』の定義(脚本)

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『好き』の定義
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〇黒背景
君「ねぇ、『好き』ってなんだろうね?」
俺「・・・わかんないよ、そんなの」
君「やっぱり君もわかんないかー」
俺「急にどうした?」
君「いや?ふと気になっただけ!」
俺「ふーん、変なことを考えるんだな」
君「ちょっとー?失礼じゃないかなー!?」
君「・・・・・・」
君「そうだ!」
君「一緒に見つけてみない?」
俺「何を?」
君「『好き』って何なのか」
君「『好き』の定義を」

〇渋谷のスクランブル交差点
君「お待たせ!だいぶ待ったかな?」
俺「まあまあ待った」
君「・・・君ね、そういうときは──」
君「『大丈夫、俺も今来たところだよ(キリッ)』」
君「こうやって答えるんだよ!」
俺「それは、例え相手が2時間遅刻してきたとしても言うのか?」
君「言う!」
俺「そういうものなのか?」
君「そういうものなの!」
俺「そうか・・・」
君「ほら、今日は映画を見に行くんでしょ?」
君「早く行こ!時間がないんだから!」
俺「あぁ、そうだな」

〇渋谷のスクランブル交差点
君「いやー映画面白かったねー!」
俺「そうだな」
君「ラブロマンスって結構いいものだね!」
俺「そうだな」
君「特にあのラストで主人公がヒロインに告白したシーン!」
君「もう最高だったよ!」
俺「そうだな」
君「むー・・・・・・」
俺「どうした?」
君「なんか反応薄くない?」
俺「恋愛映画は普段見ないから、新鮮だったよ」
君「まぁ、私も久しぶりに観たけどさ」
俺「周りがカップルばかりだったのには驚いたな」
君「嫌だった?」
俺「楽しかったよ。けど・・・」
君「けど?」
俺「ここにいる人たちは、皆知ってるのかなって」
君「・・・何を?」
俺「『好き』の定義」
俺「君はわかった?」
君「・・・・・・」
君「全っ然わかんない!」
俺「そうか・・・」
君「大丈夫大丈夫!」
君「そんなに心配そうな顔しなくても、すぐにわかるよ!」
俺「・・・そうだな」
君「じゃあまた明日!」
俺「あぁ、また明日」

〇渋谷駅前
君「やあやあお待たせー!」
俺「大丈夫、俺も今来たところだ」
君「お!今日はちゃんとできてるじゃん!」
俺「教えてもらったからな」
君「感心感心!」
君「・・・それじゃあ」
君「今日の私の服、どう?」
俺「・・・・・・?」
俺「・・・裏表は逆になってないぞ?」
君「そんなことは当たり前だよ!」
君「いい?こういうときは──」
君「『今日の服、似合ってるよ(キリッ)』」
君「こうやって返すのが常識なの!」
俺「それは・・・相手が来ている服がとてもダサかったとしてもか?」
君「そんなこと、ぜっっったいに言わないで」
俺「そういうものなのか?」
君「そういうものなの!」
俺「そうか・・・」
君「ほら!今日はカラオケに行くんでしょ!」
俺「あぁ、早く行こう」
君「・・・・・・ねぇ」
俺「どうした?」
君「今日の私、変じゃないよね?」
俺「・・・・・・別に」
君「別にって何!?」
俺「いつもと何も変わんないよ」
君「・・・・・・そっか」
君「それじゃあ行こっか!時間もないし!」
俺「あぁ、そうだな」

〇渋谷駅前
君「いやー歌った歌った!」
俺「そうだな」
君「流行りのラブソングもちゃんと歌ったし、もう喉ガラガラだよ〜」
俺「そうだな」
君「それにしても驚いたよ!」
君「君ってあんなに歌上手かったんだね!」
俺「ありがとう?」
君「なんで疑問形なの」
俺「・・・とにかく、君が楽しんでくれたなら良かった」
君「もしかして君・・・今日のために練習してきた?」
俺「・・・・・・悪いか?」
君「・・・・・・・・・・・・」
君「嬉しい」
俺「・・・じゃあ、また明日な」
君「うん!また明日!」
俺「・・・結局、今日もわかんなかったな」
俺「『好き』の定義」

〇遊園地
君「お待たせ!」
俺「大丈夫、俺も今来たところだ」
君「今日の私、どう?」
男「その服似合ってるよ」
君「・・・・・・・・・・・・」
君「よし!合格!」
俺「本当にこれでいいのか?」
君「私が嬉しいからいいの!」
俺「そうか、なら良かった」
君「でもそうだな・・・あと一つ言うことがあるとすれば・・・・・・」
君「『今の君は世界一綺麗だよ(キリッ)』」
君「ここまで言えたら完璧かな!」
男「・・・なんか変なことを教えてないだろうな?」
君「花束とか持ってたら最高。これマジだから」
俺「目が怖いぞ」
君「そうやって言われたら女の子は喜ぶの!」
俺「そういうものなのか?」
君「そういうものなの!」
俺「そうか・・・」
君「ほら!今日は待ちに待った遊園地だよ!!」
君「早く行こうよ!早く〜!」
俺「・・・あぁ、行こう」

〇遊園地
君「もうおしまいかー・・・」
俺「楽しかったな」
君「うん、楽しかった」
君「メリーゴーランドも、ジェットコースターも、観覧車も・・・」
君「今まで生きてきた中で、一番楽しかった」
俺「それは・・・少し大げさじゃないか?」
君「うぅん、大げさなんかじゃない」
君「君がいるから、ずっと楽しかった」
君「君がいたから、ずっと寂しくなかった」
君「ありがとね。全部全部、君のおかげだよ」
俺「・・・俺も」
俺「俺も、君のおかげで楽しめたよ」
俺「また来よう。今度も一緒に」
君「・・・・・・!」
俺「・・・じゃあ、また明日」
君「・・・うん、また明日」
君「・・・・・・」
君「本当は言いたくないよ・・・」
君「『また明日』なんて・・・」

〇シックな玄関
  いつものように彼女から教えてもらったことを思い出しながら
  今度は俺が彼女に"会いに行く"

〇病室
俺「・・・お待たせ」
君「・・・・・・」
君「遅いよ」
俺「そこは『今来たところ』じゃないのか?」
君「そういうのは男の子が言うものなの」
俺「そういうものなのか?」
君「うん」
俺「そうか・・・」
君「君ってやっぱりちょっと天然だよね」
君「それとも・・・気を使ってくれてるのかな?」
俺「・・・・・・えっと、今日の服は──」
君「ただの部屋着だよ」
君「もう、好きな服も着られなくなっちゃった」
俺「それでも、君は綺麗だ」
君「やめてよ。変なお世辞を使うなんて君らしくない」
俺「お世辞じゃない。本心だ」
君「やめて。お願い」
俺「やめない。どんなになっても君は綺麗だ」
君「やめてって言ってるでしょ!!!!!」
君「肌もボロボロだし!顔色だって病人そのもの!」
君「こんな私のどこが綺麗なのよ!?」

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コメント

  • 今更ながら「好き」の定義が考えさせられました。普段何気なく景色、音楽、映画、食べ物などの好き嫌いを感じる自分がいます。「好き」ってなんでしょう?

  • とっても天真爛漫な女の子なのかと思いきや、病を抱えていたなんて、とても切なくなりました。
    もう一度2人が再会できてよかったです。

  • まさかのストーリー展開に驚きました。そして、切なさが一気にこみ上げてきました。読後感も良い、とっても温かく優しい物語ですね。

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