第九話 原住民VS喧嘩屋(脚本)
〇劇場の座席
リングアナ「それではこれより、一回戦第3試合をはじめます!」
「ウオーーーッッ!!!!」
〇闘技場
華々しく入場してきた両選手が、闘技場の中央で対峙している。
剛田とカチャンだ。
〇劇場の座席
リングアナ「またも予想のつかない異色の対決です!」
リングアナ「剛田選手は、ストリートファイトで200戦無敗」
リングアナ「また自己申告ですが、路上で3人殺したと豪語しています」
「おお~~!!」
リングアナ「一方、カチャン選手はヤハモモ族というアマゾンの──」
〇闘技場
カチャン「フォウフォウーーッッ!!」
奇声を発すると、カチャンは槍を掲げながら片足ケンケンで踊り出す。
リングアナ「われわれが持っている先住民のイメージ通りの光景ですが、おそらくファンサービスの演出でしょう」
リングアナ「いまや現地でも、こういった民族舞踊は観光客むけに行われるだけだそうです」
審判の指示によってカチャンは踊りを中断し、自分のコーナーのほうにむかう。
セコンドの男性に槍をわたすと、また中央にもどってくる。
〇劇場の座席
リングアナ「ご覧のとおり、ルールも常識も当然のようにわきまえています」
〇闘技場
ミスター小林「両者とも、全力で闘うように」
リングアナ「両選手とも体重はライトヘビークラス。体格的には互角です」
試合が始まったことも理解していないのか、カチャンは棒立ちのままだ。
剛田はそこへ、ブンブンと豪快なパンチを打ち込んでいく。
カチャン「ペャルマ!」
カチャンは背中を見せて、あわてて逃げ出す。
リングアナ「ああっと、まるで格闘技の素人のようだ!」
カチャンはあるていど距離をとると立ち止まり、また棒立ちになる。
剛田は拳を構えて、すぐに突っかかっていく。
リングアナ「カチャン選手あやうし! 早くも決着かーっ!」
その瞬間、カチャンは大ジャンプし、剛田の頭上をこえる。
リングアナ「驚異的なバネ! まるで野生の獣のようだーっ!」
背後に回ると、すぐさまチョークスリーパーで絞めあげ──
あっというまに剛田を失神させる。
カン!カン!カン!カン!カーン!!
〇劇場の座席
リングアナ「けっちゃくーっ!!」
リングアナ「カチャン選手の鮮やかな勝利です!」
リングアナ「・・・おや? どうしたんでしょうか?」
リングアナ「カチャン選手、失神している剛田選手に覆いかぶさったまま動こうとしませんが・・・」
〇闘技場
カチャンは審判に注意されても、剛田に覆いかぶさったまま、その場から離れようとしない。
顔をあげると、カチャンはその口に──
リングアナ「こ、これは!? 剛田選手の左耳だーっっ!」
それをカチャンは、うまそうに咀嚼してゴクンと飲みこむ。
〇劇場の座席
木下「ひぃっ!!」
〇闘技場
剛田は目を覚ますも、まだ意識は朦朧としている。
カチャン「クレマャス!」
カチャンは用意していた斧を手にし、剛田の首を切断しようと振りかぶる。
〇劇場の座席
リングアナ「ま、まさかこれは本物の人喰い人種!?」
リングアナ「いえ、この令和の時代にありえません! そのはずです!」
〇闘技場
カチャンは大勢の係員に取り押さえられ、控室へ運ばれていく。
カチャン「リャプレミミャスロルベッチトルモノノノノ!」
〇劇場の座席
リングアナは、係員から届けられたメモに目を落とし、
リングアナ「カチャン選手の言葉を和訳します」
リングアナ「〝争いに敗北した者を勝者が残さず食べるのが、わが部族の掟だ──」
リングアナ「こいつは自分にとって記念すべき100食目の人間だ。絶対に喰らう〟だ、そうです」
リングアナ「ありえません! これは誤訳でしょう!!」
リングアナ「と、とにかく、カチャン選手の勝利です」
リングアナ「つづく一回戦第4試合は、山藤功選手対ウォン・シャオティエン選手の一戦です」
〇黒
つづく
次回予告
第十話 象形拳VS柔道王
乞うご期待!!