キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~

泡沫彷徨

第16話 【バトルロイヤル】(脚本)

キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~

泡沫彷徨

今すぐ読む

キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇VR施設のロビー
  その日は、ついに訪れた。
  バーチャルiTuber限定の
  大型『Vertex』大会、当日。
希美都ココロ「・・・勝つ。絶対に勝つんだ。 勝たなきゃ・・・」
紺野正樹「ココロちゃん・・・緊張してる?」
希美都ココロ「ふぇっ? う、ううん! 大丈夫だよ!」
小鳥遊ことり「強がらなくたって、いい。大きな大会 だし、普段のあたしたちなら考えられない くらい、たくさんの人が見てる」
希美都ココロ「うん・・・」
紺野正樹(・・・ココロちゃん)

〇メイド喫茶
蒔苗「アイリスが再生するということは、 蒔苗とココロという人格が消えて、 アイリスに統合されることに他なりません」

〇黒
紺野正樹(今日という日に向けて、既にココロちゃんのチャンネル登録者数はたくさん増えた)
紺野正樹(もし、この大会で優勝して、さらに急激にココロちゃんの視聴者が増えたら・・・)
紺野正樹(それでもし、ココロちゃんが アイリスちゃんの復活を願ったなら・・・)
紺野正樹(・・・そうすれば、ココロちゃんは もうすぐ、消えてしまうことになる)
紺野正樹(今、ココロちゃんは 何を思っているんだろう?)

〇VR施設のロビー
小鳥遊ことり「間もなく、試合開始だ。 二人とも、準備はいい?」
希美都ココロ「・・・はい」
紺野正樹(準備、か・・・)
紺野正樹(きっと僕は、まだ何の覚悟も、 持ち合わせていないんだ。 でも・・・やるからには、全力だ)
紺野正樹(そして僕自身も、見極めるんだ。 自分の心を。ココロちゃんの、心を)
希美都ココロ「よーし! 気合入ってきた! 二人とも、んっ!」
  ココロが差し出してくる手。そこに、
  正樹とことりも自分の手を重ねる。
紺野正樹(・・・見つけるんだ。僕の、答えを)
希美都ココロ「絶対ーっ、勝つ!」
「おーっ!」

〇基地の広場(瓦礫あり)
MC「ゲーム・・・スタートです!!」
  MCの声が場内に響き渡ると、各プレイヤーは飛行機へと乗り込み、空に上がる。
  そこから20チーム計60人が、
  真下に広がる戦場へと向けて、
  一気に飛び降りていくのだ。
小鳥遊ことり「あの辺りに降りよう! 他のプレイヤーは来てなさそうだし!」
  戦場へと降下した正樹たちは、
  急いで近くにあった建物に入り、
  武器や装備を探した。
  このゲームでは、銃や弾薬、身を守る
  シールド、回復薬といったアイテムは、
  すべて現地調達となっている。
小鳥遊ことり「ラッキー、狙撃銃を発見! そっちは?」
希美都ココロ「シールドがあったー!」
小鳥遊ことり「んじゃ、前に出ることの多い ココロっちが着ちゃって」
希美都ココロ「ありがと!」
  ことりは少し前まで、ココロのことを
  ちゃん付けで呼んでいたが、どうやら
  最近、かなり打ち解けてきたらしい。
紺野正樹「漁ってみたけど、 全然、銃が落ちてない・・・」
小鳥遊ことり「わ、マジ? じゃあ・・・ひとまず 拳銃しかないけど、こっちのぶん分けるよ」
紺野正樹「助かります」
紺野正樹(別の建物を漁るまで、武器は拳銃 のみか・・・しかも弾数まで少ない。 これじゃ、まともにやり合うと厳しいな)
  そう思った矢先に。
小鳥遊ことり「待って。今、足音が・・・」
  直後、銃声と共にシールドを
  削られる感覚があった。
紺野正樹「いたたっ! 撃たれた!」
  慌てて壁に身を隠しながら、
  敵がいた位置をマーキングする。
希美都ココロ「正樹くん、回復持ってる!?」
紺野正樹「うん、大丈夫!」
希美都ココロ「牽制射撃するから、その間に回復して!」
紺野正樹「ありがとう!」
  アイテムを使用し、被弾したダメージと
  シールドの残量をほぼ全回復させる。

〇基地の広場(瓦礫あり)
小鳥遊ことり「・・・さっきの、どう思った?」
紺野正樹「え? どうって?」
小鳥遊ことり「あの敵、こっちの姿を視認する前から 撃ち始めてた」
小鳥遊ことり「そして、初弾から正確に当ててきてる。 考えたくはないけど・・・」
紺野正樹「・・・っ! それって・・・」
希美都ココロ「ど、どういうこと?」
紺野正樹「WH(ウォールハック)・・・ 本来は見えないはずの壁を透過して、 相手の姿を視認してる」
紺野正樹「つまり、チーターかもしれないって ことだよ」
  チーター。
  不正なプログラムを実行することで、
  ゲームにおいて本来は不可能な動きを
  可能にしたりするプレイヤーのことだ。
希美都ココロ「壁越しに、こっちの位置が見えてるって こと? そんなの卑怯だよ!」
小鳥遊ことり「卑怯というか、思いっきり反則だ」
希美都ココロ「こういう大会で、 そんなことしてくる人がいるなんて!」
希美都ココロ「私・・・こんなところで、 負けるわけにはいかないのに・・・!」
小鳥遊ことり「どうする? 運営に報告する?」
紺野正樹「・・・・・・」
  ここでチーターの存在を運営に報告し、
  いったんゲームを仕切り直して
  もらうなりすることもできるが・・・
  その場合、
  試合を突然に中断するのだから、
  当然、見ている側にも説明が必要となる。
  一度不手際があったことが明るみに出ると、大会そのものにケチが付いてしまい、
  荒れてしまって視聴率が
  落ちる可能性がある。
  そもそも、チートを使用していると
  確定したわけではないし、あのチームを
  倒すことができれば、それが一番いい。
紺野正樹「・・・僕に、考えがある」
  二人に、思いついた作戦を伝える。
紺野正樹「きっと上手くいく。僕たちなら、 できるよ。じゃあ・・・行こう!」

〇基地の広場(瓦礫あり)
  正樹たちは、示し合わせた通り、
  一気に建物から飛び出した。
  障害物で敵の射線から逃れつつ進む。
  壁越しにこちらが見えているとは
  言っても、逆に言えば、それだけ。
  壁越しに貫通する弾やAA(オートエイム)
  のような、あからさまなチートは、
  どうやら使っていないらしい。
希美都ココロ「追ってきてるよ!」
紺野正樹「よし、もう少し・・・! あの先にある広場が最適だと思う!」
  真っ先に到達した正樹は、
  物陰から敵の姿を確認する。
  ココロとことりが上手に誘導してくれているおかげで、三人の敵は広がりすぎずに固まって移動してくる。それが大事だった。
紺野正樹(あと少し・・・ ココロちゃんたちが安全圏に入って、 敵チームが固まる瞬間・・・ここだ!)
紺野正樹「ココロちゃん、今!」
希美都ココロ「うん!」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第17話 【こころの叫び】

成分キーワード

ページTOPへ