破邪の拳 ~ニート武道家の地下格闘技トーナメント~

武智城太郎

第八話 破邪神拳VS伊賀忍者(脚本)

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〇競技場の通用口
  玄武の入場口前──
  文彦が控えている。
  特にすることもないので、パズルゲームをして時間をつぶしている。
リングアナ「これより一回戦第2試合をはじめます!」
係員「もうすぐ出番ですよ!」
青馬文彦「わかってる」
リングアナ「玄武から、破邪神拳、青馬文彦選手の入場です!」
青馬文彦「やってやるか」

〇闘技場
青馬文彦「悪くない雰囲気だな」
リングアナ「朱雀から、伊賀流忍術、半蔵選手の入場です!」
青馬文彦「この世界、〝自称〟忍者は多いからな。こいつも胡散臭いもんだ」
ミスター小林「両者、中央へ!」
リングアナ「両選手の体格はほぼ互角」
リングアナ「ただし、ともに特殊な流派のため展開はまるで予想できません!」
青馬文彦(見てろ、破邪神拳の神技で皆の度肝を抜いてやる!)
半蔵「予告しよう」
青馬文彦「ん?」
半蔵「拙者は分身の術を使う」
青馬文彦「はあ!?」
ミスター小林「両者とも全力で闘うように」
  まずは、お互い打撃で牽制しあう。
  半蔵の立ち技のベースは一般的な空手のようだ。
リングアナ「静かな立ち上がり。両選手とも慎重に様子見でしょうか」
  不意に半蔵は、衿元から装束の中に右手を突っ込み、すぐにまた出す。
  その右手の指先が、文彦の鼻の下をかすめる。
青馬文彦「ぐっ!」
青馬文彦「なんだ、この異常な刺激臭は!?」
  あまりの臭さに、クラクラとめまいがするほど。
青馬文彦「手になにか塗ってあるな! 反則だぞ!」
半蔵「こいつは拙者のワキガの臭いだ!」
半蔵「反則じゃない。本来の自分の体臭だからな」
半蔵「事前に運営側にも確認してある!」
青馬文彦「なにいぃ!!」
  半蔵は、また右手を装束の中に突っ込んですぐに出す。
  そして動きが鈍っている文彦に、こんどは右の手のひら全体を掌底打ちのようにして、顔面に押しつけてくる。
青馬文彦「うぐっ!」
青馬文彦「臭さが目に染みて、涙が止まらない!!」
  そのせいで、半蔵の姿がボヤけて二重に見えてしまう。
「どうだ。拙者が二人に見えるだろう」
青馬文彦「くっ、これが分身の術か・・・!!」
  文彦は必死で打撃を繰り出すも、空振りするだけ。
  逆に、半蔵の突きや蹴りを一方的に食らってしまう。
  おまけに頭はグラグラしてきて気持ちが悪くなり、
青馬文彦「オゲーーッ!」
  とうとう嘔吐して、口のまわりをゲロだらけにしてしまう。
「きたね!」
  顔面攻撃したくないので、半蔵はボディを集中的に狙ってくる。
青馬文彦「おぐっ!」
  腹に拳を叩きこまれ、文彦はまた吐きそうになる。
  だが、そこをグッと我慢する。
  そしてタイミングを見計らい、
青馬文彦「ブベッ!」
  両方の半蔵の顔にゲロを吐きかける。
「ぐわっ、汚な臭い!」
青馬文彦「お返しだ!」

〇劇場の座席
リングアナ「最低の闘いになってきました」

〇闘技場
青馬文彦「術が解けて・・・」
青馬文彦「吐いてスッキリして涙が引いたせいか」
半蔵「ならば」
  半蔵は、サッと手裏剣を放つ動作を見せる。
  とっさに文彦は頭を下げる。
  だが半蔵はフリだけで、何も放ってはいない。
青馬文彦「エア手裏剣のフェイントか!」
青馬文彦「・・・ん!?」
  顔を上げると、半蔵の姿が忽然と消えている。
青馬文彦「バカな!?」
青馬文彦(だが、たしかに闘技場のどこにも姿がない・・・!)
青馬文彦「まさか〈土遁の術〉か!?」
青馬文彦(いや、潜れるような軟らかい地面じゃない)
青馬文彦「いったいどこに隠れた!?」

〇劇場の座席
  闘技場と観客席とのあいだには、高さ1・5メートル程のフェンスがある。
  観客らしき男性が、音もなくフェンスの上に立ったかと思うと大ジャンプし、

〇闘技場
  背をむけている文彦めがけて、ヒザ蹴りを落とそうとする。
青馬文彦「この気配は!?」
  文彦は自分もジャンプすると──
  空中で男性を抱きかかえて落下し──
  後頭部を地面に叩きつける。
  観客に見えた男性の正体は、忍者装束を脱いだ半蔵だったのだ。
リングアナ「観客にまぎれ込む半蔵選手の〈客遁の術〉!!」
リングアナ「それを青馬選手は、忍者のお株を奪う必殺の〈飯綱落とし〉で返したーっ!」
  半蔵はダメージが大きく、立ち上がることができない。
  カン!カン!カン!カン!カーン!!
青馬文彦「勝った・・・!!」
青馬文彦「われながら見事な勝利だ。 だがこいつは本物の忍者だった・・・」
青馬文彦「やはりこの大会は最高峰のレベルだな」

〇劇場の座席
リングアナ「青馬選手のダイナミックなKO勝ちです!」
リングアナ「これは驚きました!!」
リングアナ「青馬選手は専門家さえ耳にしたことがない無名選手ですが、一躍本大会の注目株に躍り出ました!!」
木下「フンッ、不甲斐ない」
木下「破邪神拳の後継者ともあろう男が、こんな程度の相手に手こずるとは」
リングアナ「さて続く第三試合は、カチャン選手対剛田選手の一戦です」

〇黒
  つづく
  次回予告
  
  第九話 原住民VS喧嘩屋
  
        乞うご期待!!

次のエピソード:第九話 原住民VS喧嘩屋

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