サークルクラッシャー(物理)

namayuba

サークルクラッシャー(物理)(脚本)

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サークルクラッシャー(物理)
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〇学校の校舎
  あれは小学校の卒業式の日だっただろうか。
さくら「今日こそあの人に告白するんだ!」
さくら「どこにいるんだろ?」
さくら「いた!」
男の子「好きです! 付き合ってください!」
美少女「えっ?」
さくら「!」
美少女「ごめんなさい。 他に好きな人がいて・・・」
美少女「あのっ」
さくら(こっちに来た?)
美少女「ずっと好きでした。 付き合ってください!」
さくら「えっと」
さくら「私 女なんです。ごめんなさい!」
美少女「えっ?あの・・・」
さくら「さようなら!」
  私は逃げるようにその場を去った。
さくら「好きな男の子に告白する前に失恋しちゃった」
さくら「それに、私って男と勘違いされるくらい女の子っぽくなかったんだ・・・」
さくら「こんなに悲しい思いはもうしたくない」
さくら「もっと強くならなきゃ」
さくら「私 変わりたい!」

〇大学の広場
  そして時は流れ──
  私は大学生になった。
  私は佐野さくら。大学一年生。
  あだ名はサークルクラッシャー。
野球部「ボールが!危ない!!」
さくら「何これ柔らかい。スライムか何か?」
野球部「ボールを握り潰した!?」
  『クラッシャー』は比喩表現ではない。

〇トレーニングルーム
  己の弱さに気付いた私は筋トレにのめりこんだ。
さくら「998、999、1000!」
  その結果腹筋はエイトパック。握力は50を超えた。
  しかし 演劇部に入った日に有り余る力でセットを粉砕してしまった。
  『サークルクラッシャー』はその時についたあだ名だ。

〇大学の広場
さくら「恥ずかしくてあれ以来演劇部行けてないんだよね」
さくら「ん?」
さくら「もうすぐ文化祭か」
みずき「佐野さん?」
さくら「え?」
みずき「俺、演劇部の佐藤みずき。同じ一年生だよ」
みずき「演劇部、人手不足で今度の文化祭に間に合いそうにないんだ」
みずき「よかったら手伝ってくれないかな?」
さくら「でも・・・」
みずき「お願いします!」
さくら「私がいても迷惑じゃないなら・・・」
みずき「ありがとう!」
  こうして私は演劇部の手伝いをすることになった。

〇学校の部室
先輩1「荷物重っ!!」
さくら「持ちますよ」
先輩2「地下倉庫の扉 立て付け悪いなぁ」
さくら「開けますよ」
さくら「開きました」
先輩2「佐野さんって働き者だよね。ほんと助かってるよ」
さくら「本当ですか?」
先輩2「最初は驚いたけど仲良くなれてよかった!」
さくら「えへへ」
みずき「佐野さん 今 手あいてる?」
さくら「どうしたの?」
みずき「練習したいシーンがあるんだけど・・・」
さくら「わかった」

〇体育館の裏
さくら「江戸の町を舞台にしたラブストーリーをやるんだっけ」
みずき「そうそう。俺は町娘と恋する男の役なんだ」
みずき「それで、クライマックスにお姫様抱っこで町娘を助けるシーンがあるんだけど・・・」
みずき「ちょっと試してもいいかな?」
さくら「えっ まあ いいけど」
みずき「ありがとう」
みずき「じゃあ 抱えるね」
みずき「・・・」
みずき「・・・・・・」
みずき「・・・・・・・・・」
みずき「持ち上がらない」
さくら(最近筋トレして増量したせいだ!!)
みずき「ごめん 俺が非力すぎたね」
みずき「昔から男らしさが足りないのが悩みなんだ」
みずき「かっこ悪いよね」
さくら「そんなことないよ!」
みずき「え」
さくら「私ね 演劇部に参加できて毎日が楽しいんだ」
さくら「だから佐藤くんに会えてよかったって本気で思ってるんだよ」
さくら「今だって劇の練習に一生懸命だし」
さくら「佐藤くんは素敵な人だと思うよ」
みずき「ありがと 佐野さん」
みずき「佐野さんは相変わらずかっこいいね」
さくら「そうかな?」
みずき「――うん」
みずき「じゃあ別のシーンの練習しようかな」
  そして文化祭の準備は進み──

〇体育館の舞台袖
  文化祭当日を迎えた。
先輩1「今日は楽しもう!」
「はい!」
さくら「衣装似合ってるね」
みずき「ありがとう。それにしても緊張するなあ」
さくら「私は裏方だけど一緒にがんばろ」
みずき「うん」

〇体育館の舞台

〇体育館の舞台袖
さくら(順調に進んでるね)
先輩2「この小道具 地下倉庫に戻してくれない?」
さくら「はい!」

〇備品倉庫
さくら「よし 戻ろう」
さくら「あれ?開かない」
さくら「そういえば立て付け悪いんだっけ」
さくら「おりゃ!」
さくら「ドアノブ折れた・・・」
さくら「蹴破って大きい音立てたら劇の邪魔になるだろうし」
さくら「・・・」
さくら「まあ裏方一人いなくても変わらないよね」
さくら「・・・」
さくら「一緒に練習したラストシーンは見たかったな」
さくら「はぁ なんでこんな悲しくなってるんだろ」
さくら「悲しい思いしたくなくて強くなったはずなのに」
(どのくらい経ったのかな)
(劇は終盤かな)
「佐野さん いる?」
さくら「誰!?」
「待ってて!! この扉開けるにはコツがあって・・・」
みずき「よかった 無事?」
さくら「・・・」
さくら「出番じゃないの? 私の事なんていいのに」
みずき「いいわけないじゃん!」
みずき「君の姿が見えないから気になって・・・」
みずき「・・・お節介だったかな」
さくら「・・・」
さくら「ありがとう 本当はすごくほっとした」
みずき「そっか」

〇体育館の舞台
町娘「助けてー!」
町娘(なんで出てこないのよ!?)
町娘「・・・た、助けてー!」

〇備品倉庫
みずき「でも、早く舞台に戻らないとまずいかも」
さくら「そういえば 天井の扉って舞台上に繋がってるんだよね?」
みずき「うん。でも開くのかな?」
さくら「きっと大丈夫!派手に飛び出して! 行くよ!」
みずき「え、ちょっと待」
さくら「サークルクラッシャーパーンチ!!」

〇体育館の舞台
みずき「・・・」
みずき「助けにきたよ お嬢さん!」
「演出すげー!」

〇体育館の舞台袖
さくら「やりすぎた」
さくら「パンチの余波で舞台ごと粉砕しちゃうなんて・・・」
みずき「でも盛り上がってたよ?」
さくら「格好つかないな」
みずき「大丈夫!佐野さんは昔からずっとかっこいいよ」
さくら「え?」
みずき「だから告白したんだよね」
さくら「え?どういうこと?」
みずき「覚えてない?」
みずき「小学校の卒業式の日に告白したこと」

〇学校の校舎

〇体育館の舞台袖
さくら「まさか」
さくら「あの時の美少女!?」
みずき「美少女って・・・」
みずき「確かによく女の子と間違えられてたけど」
さくら「じゃあ 私のこと男と勘違いした訳じゃなかったの!?」
みずき「当たり前でしょ」
さくら(急に恥ずかしくなってきたんだけど!?)
みずき「・・・」
みずき「じゃあ あの告白はなかったことにして」
さくら「え」
みずき「そのかわり」
みずき「また告白し直したら、今度はちゃんと返事してくれる?」
さくら「ええっ!?」
先輩2「もうすぐカーテンコールだよ!」
「はい!」
みずき「話の続きはまた後で。行こっか」
さくら「うん」
  頬の火照りがおさまらぬまま、
  手を引かれてスポットライトの中に飛び出す。
  拍手と歓声の中、胸の鼓動はいつまでも鳴り響いていた。

コメント

  • 強くなれる理由を知ってしまった彼女。そんな物理的強さを持つ彼女と、一途な彼のかわいい恋のお話だと思いました!素敵な物語ありがとうございます!

  • エンディング、そう来たかーと完全に予想外でした。面白かったです。

  • 発想がすごいです!ギャグみたいな設定なのに、ハートフルで可愛い恋のお話。両方が物語の中でうまく混ざりあっていて、大変楽しく拝読させていただきました。
    どんなに強くなっても心は乙女なさくらと、一途に思い続けたみずき。結局恋に男らしさとか女らしさとか関係ないですよね。二人なら幸せなカップルになれそうですね😊

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