エピソード1(脚本)
〇占いの館
占い師「だいぶ仕事のことで悩んでおられますね」
占い師「時代の流れについていけてないようです。 昔は良かったのにと思っていませんか?」
占い師「まずは自分に自信を持つことが大事です」
占い師「コミュニケーションを怠ってはいけません。 思い切って輪の中に飛び込んでみてはどうでしょう」
占い師「そうすれば必ず道は開けます」
・・・・・・。
占い師「あの、聞いてらっしゃいますか?」
占い師「えーと、不破(ふわ)さん?」
不破誠「・・・・・・」
占い師「他に占いたいことは?」
不破誠「・・・・・・」
占い師「・・・以上で?」
不破誠「・・・・・・」
占い師「今の会社を辞めるのはまだ早いようです。 幸運をお祈り致します」
不破誠「・・・・・・」
占い師「それでは5千円になります」
不破誠「そんなに?」
占い師「初回5千円、リピーターになりますと3千円です」
不破誠(たまたま見かけて入ってみたが、まさかここまで当てられるとは。5千円は妥当か)
占い師「高いですかね?」
不破誠(俺の弱点であるコミュニケーション力まで見抜いてしまうなんて。さすがだ)
占い師「わかりました。特別に3千円にしましょう」
不破誠(しかし、一つだけ間違えている)
占い師「ま、まだご不満でしょうか?」
不破誠(俺は会社員じゃない)
不破誠(殺し屋だ)
〇組織のアジト
新堂信明「急に呼び出して悪いな」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「少しは対人恐怖症も治ったか?」
新堂信明「女でも作れば簡単だと思うんだがな」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「冗談だよ。まぁ座ってくれ」
灰島竜也「これはこれはレジェンド。お久しぶりです」
不破誠「・・・・・」
新堂信明「お前、今日はターゲットの身辺調査だろ」
灰島竜也「伝説の殺し屋が来るんですからご挨拶をと思って」
不破誠「・・・・・・」
灰島竜也「そうだ、俺の案件レジェンドがやります?」
灰島竜也「政治家の汚職掴んだ記者を消すだけなんで楽勝ですよ」
不破誠「・・・・・・」
灰島竜也「でも無理か」
灰島竜也「身辺調査ですから人と話さなきゃですよね。 すいません気づかなくて」
灰島竜也「殺し屋も昔と違って探偵みたいなこともしなくちゃいけないなんてね」
灰島竜也「腕だけじゃ食えなくて大変だ」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「こいつは昔だってそんな仕事は請けない。 法で裁けないような奴の殺ししかやらんよ」
灰島竜也「いやいや、もう何年やってないんすか? 伝説だけが一人歩きしちゃってますよ」
新堂信明「いいからお前は仕事に戻れ」
灰島竜也「へいへい」
不破誠「足音」
灰島竜也「は?」
不破誠「耳に障る」
新堂信明「あっははは」
灰島竜也「ボスまでなんすか」
新堂信明「靴を変えろってことだ」
新堂信明「殺し屋にとって足音は命取りになる。 良かったな不破に会えて」
灰島竜也「・・・っち」
新堂信明「下っ端の戯言だ。気にするな」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「本音を言うと気にしてほしいんだがな」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「あいつの言った通り、今や殺し屋は腕だけじゃ食えない」
新堂信明「時代の波に乗れなければ振り落とされる」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「もう伝説の名の貯金はなくなったぞ、不破」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「新規案件がある。 ターゲットがいる会社へ潜入調査してほしい」
不破誠「・・・潜入調査」
新堂信明「社員として潜り込み、ターゲットについて洗いざらい調べ、そして消す」
新堂信明「中途で入社できるよう手は打ってある」
不破誠「ノーと言ったら」
新堂信明「この組織を抜けてもらう」
不破誠「引退ですか」
新堂信明「お前が今までやってきたことを全て警察に流す」
不破誠「脅しですか」
新堂信明「忘れたのか。 それが組織を抜ける時のルールだ」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「俺もそんなことはしたくない。お前のためだ」
新堂信明「時代が求める殺し屋になれ、不破」
不破誠「・・・・・・」
新堂信明「この案件の詳細だ。持っていけ」
新堂信明「いい返事を期待してる」
〇ゴリラの飼育エリア
不破誠「俺はどうすればいい」
ゴリラ「・・・・・・」
不破誠「潜入調査ってわかるか?」
ゴリラ「・・・・・・」
不破誠「俺には無理だ。お前もそう思うだろ?」
ゴリラ「・・・・・・」
不破誠「一番人間に近いと思って、いつもお前に話しかけているが、いっこうに人と話すことができない」
ゴリラ「・・・・・・」
不破誠「しばらく刑務所暮らしになりそうだ」
ゴリラ「・・・・・・」
不破誠「またいつか会おう」
ゴリラ「・・・・・・」
不破誠「というか死刑か俺は」
ゴリラ「ウホー!」
不破誠「どうした、ゴリ男」
ゴリラ「ウホー!」
不破誠「ひょっとして俺を励ましてくれてるのか?」
ゴリラ「ウホウホ!」
不破誠「やらないより、やって恥をかけだと?」
ゴリラ「ウホウホ!」
不破誠「俺は時代のせいにしてずっと逃げ回っていたんだな」
ゴリラ「ウホー!」
不破誠「そもそも神に背いた人生。 失うものなど何もない」
ゴリラ「ウホー!」
不破誠「危うく不名誉な伝説として名を残すところだった」
不破誠「感謝するぞ、ゴリ男」
飼育員「よしよしフェニックス」
飼育員「その声はご飯だな」
ゴリラ「ウホー!」
面白いです!!