キミトココロの物語~バーチャルiTuberの日常~

泡沫彷徨

第13話 【ココロの誕生日】(脚本)

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〇遊園地の広場
  正樹の目の前で、蒔苗は不機嫌そうに
  腕を組み、溜息をついた。
蒔苗「どうして、あなたがここに・・・。 話があるからって、 ことりに呼ばれてきたんだけど?」
紺野正樹「ごめん。僕があの人に頼んだんだ。 なんとか、君と話がしたくて」
紺野正樹「僕から連絡したんじゃ、 相手にしてもらえないと思って」
蒔苗「当たり前です。 蒔苗は話したくないですし、 話すこともありませんから」
  そう言って、彼女はログアウトするための
  ウィンドウを呼び出す。
紺野正樹「ま、待って! ちょっとでいいんだ。 話をさせてほしい」
蒔苗「・・・・・・」
  手を止めて、蒔苗が正樹を見る。
紺野正樹「ココロの誕生日をサプライズで 祝いたいんだ。協力してくれないかな」
蒔苗「・・・ふぅん」
  蒔苗が意外そうに正樹を見る。
  以前の値踏みする視線と似ているが、
  少し違う・・・
  何かを期待しているような、
  そんな目だった。
蒔苗「誕生日って、どっちですか?」
紺野正樹「え?」
蒔苗「日付です。一般公開されているほうですか」
紺野正樹「ああ、うん。そうだよ。初配信の日」
蒔苗「そうですか。 じゃあ、生まれた日は知らないんですね」
  暗に、あなたは何も知らない、
  と言われている気がしてしまう。
蒔苗「これは知っていますか? ココロ先輩と 蒔苗、バーチャル世界に生まれたのは、 同じ日なんですよ」
紺野正樹「え!? そうなの?」
蒔苗「はい。でもまあ、公表する誕生日には それぞれの配信開始日を選ぶことに したので、別日にズレてしまいましたけど」
  どこか懐かしむような表情で彼女は語る。
  そして、諦めたようにもう一度、
  溜息をついた
蒔苗「とにかく、話は分かりました。 詳細を聞きましょう」
紺野正樹「・・・・・・」
蒔苗「どうしたんですか?」
紺野正樹「いや、お願いしておいてなんだけど、 あっさり検討してくれるんだなって・・・」
蒔苗「・・・まぁ仕掛け人って、 配信的に、おいしい役回りですからね」
蒔苗「蒔苗にとってもプラスになる企画なら、 話くらい聞きますよ」
  蒔苗は両手を腰に当て、そっぽを向いた。
蒔苗「それで? 何を手伝えばいいんです?」

〇可愛い部屋
希美都ココロ「わー、すごいいっぱい、 みんなお祝いコメントありがとー!」
  ココロの誕生日当日。
  彼女のチャンネルで、
  お誕生日配信が始まっていた。
希美都ココロ「よーし、 じゃあ今日は土の中を掘り進めて、 たくさんゴールドを掘り当てるぞ!」
希美都ココロ「誕生日だからね! 金銀財宝に囲まれたい!」
  本日の配信では、『マイ・クラフト』
  というゲームを実況プレイしている。
  ブロックを配置することで建築を楽しんだり、道具をクラフトしてサバイバル生活を送ったりするようなゲームだ。
  これまでココロもたびたび配信で遊んで
  きており、今日もこれをプレイしつつ、
  まったり誕生日を過ごす予定だった。
  そんな彼女の配信の様子を見守りながら、
  正樹は密かにことりと連絡を取る。
紺野正樹「もしもし、聞こえますか?」
小鳥遊ことり「こちら、ことり隊員。 馬車馬のように働いてるなう、オーバー」
紺野正樹「・・・すみません、 ありがとうございます。 この埋め合わせは必ず」
小鳥遊ことり「おい冗談だって。お祝いしたい気持ちは、 あたしにだってあるし。好きでやってる。 マッキーナはどうか知らないけど」
紺野正樹「どうでしょう、間に合いそうですか?」
小鳥遊ことり「ヤバめ」
  蒔苗に声をかけたタイミングがかなり直近
  だったため、サプライズの仕掛けが間に
  合うかどうか、ギリギリのところだった。
  さっきまでは正樹も手伝っていて、
  今はことりが手伝ってくれている。
紺野正樹「今日の配信は、 普段より長めの3時間予定・・・」
紺野正樹「それでも厳しそうでしたら、 何かしら理由をつけて引き延ばしてみます」
小鳥遊ことり「理由って?」
紺野正樹「幸い、多くの人が見てくれてるので、 せっかくだからもう少し配信したら どうかとか・・・」
小鳥遊ことり「いやぁ、それはどうかな・・・ 企画の追加もなしに時間だけ 引き延ばすのは厳しいだろ」
紺野正樹「・・・ですよね」
小鳥遊ことり「とにかく急いでみる」
紺野正樹「よろしくお願いします」
  通話を切り、配信の様子を見る。
紺野正樹「・・・え!?」
紺野正樹(どれだけツイてないんだ!?)
  ココロは地面の中を掘り進めて探索して
  いるが、彼女のいる座標の真上は、
  今まさに蒔苗やことりがいる地点だ。
紺野正樹(もし今、彼女が真上に掘り進んで地上に 出たら、思いっきり鉢合わせだ・・・!)
紺野正樹(二人が準備中のところにココロちゃんが 鉢合わせなんてしちゃったら、せっかくの サプライズが台無しになる・・・!)

〇坑道
  慌てて正樹は、
  自分もゲーム世界にログインした。
希美都ココロ「あれー? コロリンだ」
  少し動揺した様子でココロが言った。実は「ベストパートナー決定戦」以降、二人は未だにろくな会話をしていなかったのだ。
紺野正樹「私はコロリンではない・・・」
希美都ココロ「ん? え?」
紺野正樹「私はダイヤの神・・・」
希美都ココロ「・・・何か始まったねぇ」
  数多くの視聴者の前で茶番を
  演じていると思うと恥ずかしくなるが、
  そうも言っていられない。
紺野正樹(ココロちゃんの動線を誘導しつつ、 時間を稼ぐためだ・・・!)
紺野正樹「ダイヤを見つけるまで終われない耐久配信の開催を、今ここに宣言します・・・」
  ダイヤとは、土の中からごくまれに
  出現する超レアなアイテムだ。
希美都ココロ「どーして誕生日にそんな苦行を 強いられるんだいコロリン!?」
紺野正樹「今からスタートです・・・」
希美都ココロ「鬼だぁー!! うおおぉ!」
  文句を言いながらも、ノリ良くつるはし
  片手に乱舞して突き進んでいくココロ。
  急ごしらえにしてはコメント欄も
  盛り上がり、少しは時間が稼げそうだ
  やがて・・・
小鳥遊ことり「準備OK!」
  そんな連絡が、正樹のもとに届いた。
  それを聞くやいなや、
  正樹は猛然と地上への道を掘り始める。
希美都ココロ「おや? さっきまでついてくるだけだった ダイヤの神様が、何か始めたぞ?」
紺野正樹「僕はコロリンだ!」
希美都ココロ「あれぇ!?」
紺野正樹「ダイヤの匂いがする! フォローミー!」
希美都ココロ「何で英語・・・まぁいいや」
  急いで掘り進め、つるはしが土を砕いた
  先に、空が見えた。地上だ。
希美都ココロ「コロリン、いったい・・・」
  後から地上に出てきたココロが、
  息を呑んだ。
  高く高く天へと真っ直ぐそびえ立つ、
  巨大な柱が目の前にある。
希美都ココロ「・・・何、これ?」
紺野正樹「やや、そこにスイッチがあるね」
希美都ココロ「ホントだ。・・・押すよ?」
  柱に近づいて、
  ココロがスイッチに触れる。
  すると、真下から巨大な水流が吹き上げ、
  二人の身体を空へと運び始めた。

〇雲の上
希美都ココロ「え、え、え、うわわわわ!?」
希美都ココロ「空が近づいてくる! 地上が遠いよ!? あわわわー!」
  悲鳴を上げながら、
  どこか楽しそうなココロを連れて、
  水流はぐんぐんと昇っていく。

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